おだやかな冬晴れの日には、鳥たちに会いに出かけてみませんか？　今回ご紹介するのは、横浜市と藤沢市にまたがる神奈川県の都市公園。ビオトープが整備され、生きものでにぎわう水辺の風景に、心がほっこり温まること間違いナシです。

豊かな水辺の風景が広がる「境川遊水地」へ

冬の水辺は、野鳥と出会うチャンスがいっぱい。青々と茂っていた草木の勢いが衰え、視界の開けた水面には、カモの仲間など大きくて見つけやすい渡り鳥もやってくる。

今回筆者が出向いたのは、「神奈川県立境川（さかいがわ）遊水地公園」とその外周。横浜市と藤沢市の境に位置する……という情報から想像するよりきっと、ずっと自然豊かなエリアだ。境川沿いに３つの遊水地（川から水があふれたときに一時的にためる池）が並ぶ、広大な水辺の散策が楽しめる。

境川を挟んで藤沢市側の「今田遊水地」エリア。動植物の保全をおこなうビオトープを中心に、遊歩道や芝生広場などが整備され、気軽に自然に親しめる

小田急、相鉄、横浜市営地下鉄の３路線が乗り入れる湘南台駅から、バスや徒歩でアクセスできるほか、駐車場も無料で利用できる。この季節にどんな鳥に会えるのか、前編、後編に分けて紹介しよう。

優美な佇まいで年中存在感を放つ“シラサギ”

手前が大きな「ダイサギ」、奥が小さな「コサギ」。写真ではわかりにくいが、コサギは足の指だけが黄色く、水から出るとソックスをはいているかのようで、見分けやすい

園内のどの水辺でもよく見られる鳥がシラサギ。冬に限らず、年中存在感を放っている不動のレギュラーで、境川遊水地公式キャラクターのモデルにもなっているほどだ。

スラッとした真っ白な姿はとても目立ち、動かずにジッとしていることも多いため、肉眼でも観察しやすい。その優美な佇まいに、ランニングや犬の散歩をする人たちが、足を止めて見入っていたりもする。

実は、シラサギというのは白いサギ類の総称だ。冬に園内にいるシラサギは、まずダイサギかコサギという種類だろう。名前のとおり、ダイサギは大きくて、コサギは小さい。夏から秋にかけては、ダイサギより小さくてコサギより大きい「チュウサギ」も出現し、ややこしくなる。写真のように並んでいることも少なくないので、比べてみるとおもしろい。

ナポレオンハットをかぶった冬の使者!?　“カモ類”

頭の色と形が特徴的な「ヨシガモ」のオス。ちなみにメスは、褐色系の地味な姿で、ほかの種類のカモのメスとも似ており、見分けるのが難しい

冬季、園内の３つの池は、たくさんのカモたちでにぎわう。よく見ると、色や大きさの違った、いろいろな種類のカモたちが集まっている。カモ類もまた、大型でゆっくり動き、肉眼でも観察しやすい鳥だ。それぞれの種類で、見た目の違いを楽しんでみよう。

黄色いくちばしにメタリックグリーンの頭が鮮やかな「マガモ」、シャベルのような形のくちばしを持つ「ハシビロガモ」、おでこの黄色い「ヒドリガモ」、小さな「コガモ」などなど……。ここで子育てもし、年間を通して見られる「カルガモ」を除いては、北方から越冬のためにやってきた渡り鳥たちだ。

そんなカモたちのなかに、写真のヨシガモが混ざっていないか探してみてほしい。頭の形がナポレオンハットにたとえられる、キレイな色のカモだ。ほかのカモたちと比べると、首都圏の水辺では見かける機会が少ないので、見つけられたらラッキー！　今田遊水地エリアにいることが多いので、園内に掲示されているマップでご確認を。

冬晴れの澄んだ青空を飛ぶ“猛禽類”

園内でタカなどの猛禽（もうきん）類が出現すると、たいていカラスが騒ぎ出し、勇敢にも（!?）ちょっかいをかけたりする。写真は「トビ」（左）と「ハシボソガラス」（右）

鳥を見つけようとすると、どうしても視線を水面や地上に向けがちになる。ふと、顔をあげると、大きな鳥が横切ったりして、「決定的な場面を見逃した！」と悔しい思いをすることも……。もし、カラスが大勢で騒ぎ出したり、落ち着いていたカモたちがソワソワし出したら、空を見上げてみよう。

冬晴れの澄んだ青空をバックに、鳥のシルエットが認められるかもしれない。するどいツメとくちばしを持ち、獲物をハントする、猛禽類の可能性もある。園内では、1年を通して見られる種もいるが、秋から冬にかけて種類や出現率が増加する印象だ。池に飛来するカモたちや、水際のヨシ原に集まる小鳥たちが、猛禽類を引きつけるのかもしれない。

筆者が園内で出会ったことがあるのは、写真のトビをはじめ、かつて将軍の鷹狩りにもつかわれていた「オオタカ」、魚が好物の「ミサゴ」、青空に翼の下面の白さが映える「ノスリ」、ハヤブサの仲間の「チョウゲンボウ」といった面々。ちなみに、トビは狩りをあまりせず、死骸などを糧とする“お掃除屋さん”だが、それでも立派な猛禽類だ。

双眼鏡も借りられる！　休憩スペースでホッとひと息

休憩スペースのある「今田管理センター」。園内の生きものについてのちょっとした展示もある

園内には、屋内で休憩できる施設も複数あり、冬の寒さに凍えた体にうれしい。写真は今田遊水地エリアにある今田管理センターだ。双眼鏡の貸し出しや、野鳥の本の販売もおこなわれているので、最初に立ち寄るのもいい。

なお、公園周辺にはコンビニや飲食店がないので、昼食やおやつは持参すると便利（ドリンク類の自販機はあり、お弁当の配達サービスも利用できる）。車なら５分圏内に、利用しやすい店が多数ある。

筆者のオススメは、横浜市営地下鉄・下飯田駅からほど近い「小麦畑の石窯ベーカリー＆食堂　ファールニエンテ」。障がいのある人たちが活躍するステキな空間には、見るからにおいしそうなパンが並ぶベーカリーと、本格的なピザや生パスタが味わえるレストラン、そして食材や直売用となる野菜を育てる畑がある。開店前から列ができるほどの人気店だ。

休憩を挟んで元気をチャージしたら、鳥見さんぽを再開しよう！

――後編でも引き続き境川遊水地を鳥見さんぽします――

Text：櫛田理子　Photo：吉村冬彦