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首都圏“鳥見”さんぽ─小鳥が飛び交う初夏の小江戸・川越へ【後編】
首都圏“鳥見”さんぽ─小鳥が飛び交う初夏の小江戸・川越へ【後編】
NATURE

首都圏“鳥見”さんぽ─小鳥が飛び交う初夏の小江戸・川越へ【後編】

初夏の陽気に誘われたら、身近な自然を感じにお出かけしませんか? 今回ご紹介するのは、都心からアクセスもよい“小江戸”埼玉県川越市。人気観光エリアの近くに、鳥たちでにぎわうのどかな風景が広がります。

──前編はこちら──

水辺に公園や田畑が広がる「伊佐沼」をのんびりと

沼の西岸越しに、緑豊かな伊佐沼公園を望む

1時間もあれば一周できる沼の周囲には、木々生い茂る「伊佐沼公園」や田畑など、多様な自然環境が広がっている。前編で紹介した水辺の鳥はもちろん、周辺の緑地の鳥にも会えるのが、この公園のうれしいところ。後編では、散歩中に緑地で出会った鳥にも触れてみよう。

「仰々しい」だって!? お立ち台で声を張り上げる「オオヨシキリ

葦原(よしはら)に潜(ひそ)む鳥はふつう見つけにくいが、葦の上のほうで声を張り上げるオオヨシキリは例外だ

沼から「ギョギョシ、ギョギョシ」と尻上がりに連呼する、やかましい声が聞こえてきた。初夏の風物詩、“仰々子(ぎょうぎょうし)”ことオオヨシキリのさえずりだ。毎年ゴールデンウィークあたりから、なわばりの主張や求愛などのために、見晴らしのいいところで歌い続ける。

スズメよりは大きいが、ハトよりずっと小さなサイズ。でも、目立つところで大声を出すので発見しやすい。トップの写真は、伊佐沼公園の桜のてっぺんでさえずるオオヨシキリだ。名前から連想できるように葦原を好む鳥だが、水辺近くの樹木も“お立ち台”にする。

しばらく観察していると、顔の向きをいろいろな方向に変え大口を開けて鳴くようすや、口の中の赤色を見られるはずだ。飛んでいってしまっても、お気に入りのお立ち台に戻ってくることが多いので、ガッカリせずに再度観察できるチャンスを待とう。

水面スレスレを高速でヒュンヒュン飛び交う「ツバメ

電線の見返りツバメ。この小さなからだで海を渡って帰ってきたのかと思うと、愛しさがこみ上げてくる

沼を眺めていると、小さな鳥が高速でヒュンヒュン飛び交っているのに気づく。東南アジアなどで越冬し、春になるとふるさと日本へ戻ってくる、おなじみの渡り鳥・ツバメだ。水面近くを飛びながら虫を捕まえたり、水を飲んだり、水浴びをしたりするといわれているが、速すぎて確認できない。

周辺では、上空を飛翔するツバメのほか、電線に止まって鳴いている場面も見られた。複雑なさえずりは、ツバメの生態を織り込んで「土食って虫食って渋~い」と聞きなし(※)される。土は、実際には巣の材料として集めているのだが。

※鳴き声を覚えやすいように、それに似た言葉に置き換えること

きっと、沼の近くに巣をかけているペアが複数いるはずだ。筆者はこの日、周遊コースから少しはずれた商業施設の軒先でツバメの巣を見つけた。フンがお客さんにかからないように、お店が販売スペースのレイアウトを工夫していて、ツバメを見守る優しさと、人への配慮とに心がホッコリした。

垂直に舞い上がりながら歌い続ける「ヒバリ

沼の東岸を散歩していると、隣接する田畑の上空にグングン舞い上がり、覚えにくい節回しでピーチクパーチク、長~い時間さえずっている小鳥を見つけた。ヒバリだ。名前は知っているけれど、見たことがないという方も多い鳥ではないだろうか。

トサカのような「冠羽(かんう、かんむりばね)」を立て、目が飛び出るんじゃないかというほど見開き、マンガのキャラのような、おもしろい顔をすることがある

地上に降りてしまうと、保護色と、丈の低い草にも隠れてしまうサイズとで、双眼鏡でも見つけづらい。でも、上空で鳴いているようすなら、声を頼りに探し出せる。地上から垂直に飛び立ち、ときにはホバリングしてくれるので、目で追いやすい。ただ、高いところではばたくようすは、それこそ豆粒ほどの大きさにしか見えない。

ヒバリは草原や畑など、広く開けた草地がないと暮らしていけない。開発や農業の衰退などで、そうした環境が失われた都市部では姿を消し、東京都から絶滅危惧種に指定されてしまった。当たり前のように広がる伊佐沼の風景は、実はとても貴重な自然なのだと、ヒバリが教えてくれる。

帰りは直売所に寄って川越の名産品をゲット

伊佐沼の北岸にある「伊佐沼農産物直売所」

今回の散歩はこれにて終了。一周1時間ほどのコースとは書いたものの、鳥を探したり、観察するためににちょくちょく立ち止まり、2時間半ほどのんびり楽しんだ。今回紹介した鳥のほかにも、魚を補食する猛禽(もうきん)類「ミサゴ」が出現したり、周辺から「キジ」の声が聞こえてきたりもした。

帰りがてら、沼の北岸にある「伊佐沼農産物直売所」に立ち寄った。川越産の新鮮な野菜を中心に、花や果物も並んでいる。お茶やお菓子など日持ちするものもあって、お土産には好適だ。地元の人気店のパンや、手づくりのいなり寿司などもあるので、沼周辺のベンチでいただくのもいい。

地域の味や特産品といった楽しみも採り入れた、レジャー感覚の“鳥見さんぽ”。ぜひ、自然に親しむ休日を満喫してみてほしい。

text:櫛田理子 photo:吉村冬彦

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