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「白神山地」ブナ原生林の魅力を伝えたい!若き自然アドバイザーは、なぜこの地に移り住んだのか
「白神山地」ブナ原生林の魅力を伝えたい!若き自然アドバイザーは、なぜこの地に移り住んだのか
NATURE

「白神山地」ブナ原生林の魅力を伝えたい!若き自然アドバイザーは、なぜこの地に移り住んだのか

秋田県と青森県にまたがる広大な山岳地帯に位置する白神山地。手つかずのブナ原生林が広がることで知られ、1993年に屋久島と同時に、日本初のユネスコの世界自然遺産に登録されました。白神山地の豊かな自然を守り、訪れる人々にその素晴らしさを伝えている自然アドバイザーの白鳥万里さん(26歳)に、ブナの原生林から何を学ぶべきかを語ってもらいました。(上写真は、秋田県藤里町の横倉棚田)

“ただの森”が世界自然遺産に登録された

北秋田市にある大館能代空港から車で約30分、白神山地世界遺産センター藤里館(以下、藤里館)に到着。ちょうど田植えの最盛期で、道中は青々とした苗が輝く水田が続き、カエルの合唱がにぎやかに響いていた。白神山地の山々を源流とする清らかな藤琴川に緑深い山々。マイナスイオンをたっぷり含む風が吹き渡って、とても気持ちがいい。

自然アドバイザーの白鳥万里さん

藤里館のエントランスでは、日本カモシカの親子の剥製が出迎えてくれた。白神山地の自然や四季の移り変わりが模型やパネルで解説され、周辺地域まで含めたフィールド情報などもある。散策前に、ぜひ訪れたい施設だ。

小岳登山道ブナの森

2022年2月、静岡からこの地に移住し、藤里館の自然アドバイザーに着任した白鳥さん。日々、白神山地の森を歩いて情報を収集しつつ、学習活動や藤里館の展示物管理、自然保護の普及啓発などをおこなっている。

「私は静岡県の小山町という富士山麓で生まれ、実家の近くにはブナの巨木があって、幼いときから親しんできました。父が富士山の自然体験ガイドをしているため、小さいころから自然が身近だったのです。やがて大学に進学し、コロナ禍で大学が毎日リモート授業になったため、休学して父の仕事を手伝うようになりました。そこで、自然の魅力を伝える喜びを知ったのです。結局、大学は退学してガイドの仕事を続けるうち、ほかの地域の自然にも興味をもつようになり、白神山地が自然アドバイザーを募集していると知ったので、迷わず応募しました。幼少期から身近に感じてきたブナの森が広がる白神山地は、いつか行きたいあこがれの地でした」(白鳥さん、以下同)

白神山地世界遺産センター藤里館

白鳥さんは自然アドバイザーとして、地域の歴史や鉱山、林業といった産業の変遷、マタギの存在など、森に関わる文化を伝えることも大切だと考えている。そんな彼女オススメの散策スポットは、岳岱(だけだい)自然観察教育林。白神山地らしいブナ原生林を楽しめるエリアだ(今年と来年は、秋季のみアクセス可能)。

「林の中には湧水があり、それが川となって滝となり、やがて里の田んぼに注いでいく。ブナの森は人にとって大切な資源だということが理解できると思います」

藤里館から教育林への道中には、林業が盛んだったころに植えられた秋田杉の群生があり、近年は自然に戻りつつある「二次林」となっている。

「そんなところからも、人と森の関係性を感じてもらいたいです」

藤里館の白神山地に生息する植物に触って楽しめる展示コーナー。白鳥さんが考案した

「訪れる人のなかには、『ただの森じゃないか』とおっしゃる方もいます。そんな“ただの森”が、世界自然遺産に登録されているのがすごいんです。世界遺産地域の山頂から森を見渡すと、道路やガードレール、送電線などの人工物がいっさい見えません。森にはクマタカ、クマゲラといった絶滅危惧種から、クマやスズメバチのような危険な生き物など幅広い種が生息しています。私たちは、あくまで森にお邪魔する立場。それを理解し、服装や持ち物の準備を万全にすることが大切です」

白神山地は国立公園区域ではないため、登山道やトイレの整備は地域内の各自治体が個別におこなっており、一体的な整備がしにくいのだという。大雨などで災害が起きると、2~3年も通行止めになる道があるとか。また、白神山地世界遺産核心地域は入林許可申請が必要で、観光客が気軽に入れないようになっている。森を散策する前には、十分な情報収集が必要だ。藤里館で事前学習し、白神山地を熟知する認定ガイドと歩けば、ブナの森をより深く知り、楽しめるだろう。

「ブナの森にいると、自然の循環を肌で感じられます。落ち葉が土に戻り、新たな生命を育むサイクルは、私たち人間に多くのことを教えてくれます」

白鳥さんは、「ブナの森は、生きる教科書」だと語る。そんな地で、自然との共生を考えたいものだ。

text:鈴木博美

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