フードロスを出さない暮らしのヒント。問題は野菜だ!
フードロスを減らしたいけれど、家庭ではどんなことができるでしょうか? 食材の選び方や保存法、調理のアイデアなど、楽しく、かしこく、おいしい食卓をつくるヒントを、料理家の山戸ユカさんの暮らしから学びます。
だれが、どんなふうに育てた食材か?
毎日食べるものを知ることが第一歩
「フードロスを減らそう!」と思うと、「食べ残しをしないようにしよう」「食材はムダなくつかおう」と考えるかもしれません。どちらも大切なことですが、私はまず食材について思いをめぐらせます。私が日々つかうのは地元の農家や養鶏家、養殖業の方々が丹精込めて育てたもの。有機農法や鶏の平飼いなど、手間を惜しまず、健やかでおいしい食材をつくる人々の思いに触れるたび「余すことなく食べたい」という気持ちが強くなります。食材を育ててもらったことへの感謝の気持ちが芽生えるのです。生産者について知ることは生産方法を知ることでもあります。
スーパーで売られている野菜は、消費者には生産方法が見えにくく、農薬などのことが気になって皮ごと食べるのは少し不安という人もいるでしょう。地元の直売所や生産者からのお取り寄せなど、生産方法が明示されている野菜なら安心して皮ごと食べられ、その分廃棄量は減らせます。
これは私の印象ですが、有機栽培された野菜はその“持ち”が格段に違います。化学肥料に頼らず、植物そのものの生命力を伸ばす方法で育てられているせいかとてもたくましい。長く新鮮さをキープできる健やかな食材を選ぶことも、フードロスを減らすひとつの方法です。
「そのうち食べる」は御法度
食べるタイミングに合わせた保存方法を
ついたくさん買ってしまった食材。肉や魚は冷凍保存すれば日持ちしますが、問題は野菜類です。忘れがちですが野菜はすべて植物。ほとんどは収穫後も生きています。
茎のある葉物野菜は生花と同じ感覚で、茎を少し切り、新鮮な水に挿して「水揚げ」すると元気を取り戻します。パクチーなどのハーブ類はそのままにして、毎日水換え。ほうれん草や春菊などの葉物は水揚げしたあと新聞紙でくるみ、ビニール袋に入れて冷蔵庫に入れると新鮮さをキープできます。
炒め物や煮込みなど加熱して使う野菜やキノコ類は冷凍保存。「そのうちつかうから」と冷蔵庫に入れたものの、気づけばシナシナに……という悲劇も防げます。ポイントは水気をしっかり取ってから冷凍すること。もやしやキノコはほぐし、葉物類は食べやすい大きさにカットしておくと凍ったまま調理できて便利です。
自分の記憶を信じることなかれ。
冷蔵庫を“見える化”する工夫
料理をした後に出てしまう半端野菜はみんな一緒に保存しておく半端モノ袋の中へ。私はそれを冷蔵庫の一番目立つ場所に置いて、「この半端モノたちが輝ける場所はないか?」と常に考えます。お味噌汁の具や浅漬け、肉や魚と一緒にソテーしてつけ合わせにしたり、「ちょっとだけ野菜がほしい」というときに意外と活躍するんです。
週末などにまとめ買いをする人は、買い物に出かける前に冷蔵庫の整理をかねて在庫食材のリストアップをしましょう。ムダな買い物を防げますし、買ってきた食材をリストに足せば、冷蔵庫の中を見える化できて一石三鳥です。冷蔵庫の在庫を管理でき、賞味期限が迫ると知らせてくれるアプリもあるので、ぜひつかってみて。
生ごみが生まれ変わる
コンポストという楽しい体験
食材をムダなくつかえるようになれば、毎日のフードロスは格段に減ります。それでもまだ「何かできることはないかな?」と思ったら、コンポストを始めてみるといいでしょう。コンポストは野菜くずなどの有機物を微生物の力で発酵、分解させ堆肥にする仕組みのこと。どうしても捨てざるを得ない野菜の皮や根、卵の殻やコーヒーのかすなど、ほとんどの生ごみを処理できます。
最近はコンパクトで臭いや害虫の発生を防ぐ工夫が施された家庭用のものもあるのでベランダでも挑戦できます。できた堆肥で花やハーブを育てるのも楽しい体験。私はすっかりハマって、庭に大きなコンポストを自作。いまは生ごみを捨てることがありません。
PROFILE
山戸ユカ やまと・ゆか
料理家。山梨県北杜市で季節の野菜やローカル食材をつかったレストラン「DILL eat, life.」を夫と営む。添加物を使わない手作りのアウトドア用トレイルフード「The Small Twist trailfoods」の製造、販売もおこなう。
●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Photo:Tetsuya Ito Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子