フィンランド人のハッピーなルーティン! ヘルシンキ市民に混じって、サウナで森とバルト海の恵みを体感
国連の「世界幸福度報告書」では8年連続で世界1位を獲得している、“世界一幸せな国”フィンランド。充実した社会保障や質の高い医療、教育制度などが整っていることに加え、自然と共生するサステナブル先進国でもあります。洗練された北欧デザインや美しいオーロラ、サンタクロース村にサウナなどなど、旅行先としても大人気。そんなフィンランドで暮らす人々の暮らしに触れ、幸せのヒントを探しにいきました。第5回は、首都ヘルシンキのサウナ事情をお届けします(写真:サウナヒーラーのアンナさん)。
バルト海を望みながら、スピリチュアルなサウナ体験
1万年以上前にフィンランドで誕生した伝統文化、サウナ。2020年にはユネスコ無形文化遺産に登録され、単なる入浴習慣を超えた、心身を浄化して社会的な交流を促す重要な場所と認められた。いまや世界中に愛好家がおり、日本でも多くの「サウナー」が日々心身の“ととのい”を楽しんでいる。
フィンランドには人口約570万人に対して330万個と、全国民が一斉に入れる数のサウナがある。首都・ヘルシンキ市内には約60軒の公衆サウナがあり、約6割のフィンランド人が週に1回以上サウナを利用しているそうだ。
ヘルシンキ南東部に位置するラーヤサロ島にある「フルヴィック・ランタサウナ」は、19世紀末のヴィラが建ち並ぶかわいらしいサウナ施設。サウナヒーラーのアンナ・フェルテンさんが出迎えてくれ、水着に着替える小さなコテージに案内してくれた。

サウナハットをかぶり、サウナセッションの準備を整えるアンナさん。軽やかに動き回る姿は、まるでサウナの妖精「サウナ・トントゥ」のよう

敷地内には5つのサウナがあり、曜日によって男女兼用と女性専用が入れ替わる
「今日は、トラディショナルなフィンランドサウナを体験していただきます。3つのラウンドを通じて、魂のレベルまでサウナのヒーリング効果を実感していきましょう。第1ラウンドで身体を目覚めさせ、第2ラウンドではマインド、そして最後にソウルにフォーカスしますよ」(アンナさん、以下同)
サウナは古から、過去といまをつないで先祖とつながる神聖な場所だとアンナさん。教会のように自分の心と身体の声を聞き、向き合う場でもあるという。
「20世紀まで、フィンランドではサウナとネイチャーが病気を癒す薬でした。自分たちのルーツを感じながら、心身ともに自分を守る場所だったんですね。自然現象と同じように、サウナでは同じセッションは二度とありません。一緒に入る人や自身のコンディション、温度や湿度などによって、毎回違った体験ができるんですよ」
サウナセッションとは、まさに一期一会の体験なのだ。

セッションの合間に、青く澄んだバルト海にダイブ! 自然とつながる、格別の体験だ(ただし、夏でも凍えそうなほど冷たい)
およそ10分、じんわり身体をあたためたら、白樺の枝の束「ヴィヒタ」をつかった第2ラウンドに突入。葉や枝で身体を軽く叩くほか、顔に当ててさわやかな香りを吸い込む。
「森に包まれている感覚を、五感で味わってください。ヴィヒタには血行を促進するだけでなく、白樺の葉や枝によるアロマテラピー効果や浄化作用もあるんですよ」

キャンピングカーと思いきや、移動式のサウナだった。サウナフェスティバルの際には、敷地内にテントサウナなども登場するそうだ
サウナストーンに水をかけて、湿度と温度を上げる「ロウリュ」。日本のサウナーたちの大好物になっているロウリュだが、フィランドでは“サウナの魂”と呼ばれるとても大事な行為だ。
「ロウリュの蒸気は生命の息吹や霊的な力が宿る、自然のエネルギーそのもの。これから200年以上前から伝わる、ロウリュの物語を歌います」
白樺の枝を参加者一人ひとりに掲げ、全身を叩いてマッサージしながら、力強い声で詠唱するアンナさん。その姿はまるで、シャーマンや巫女のような神聖さをまとう。
「フィンランドでは、すべてのものに精霊が宿ると考えられています。歌うことでサウナの精霊が活性化され、私たちの災いを払い、火傷など悪いことを避ける祈りを捧げているのです」
遠い北欧の国で、八百万の神をあがめてきた日本とのシンパシーを感じるとは! サウナヒーラーによるセッションは、魂までゆさぶられる強烈な体験だった。
ヘルシンキのアーバンスパ施設で地元民気分
ヘルシンキの中心部、カタヤノッカのマーケット広場の横にある「アッラス・プール」は、サウナとプールが融合したアーバンスパ施設。バルト海に浮かぶような絶景のロケーションでプールやサウナで楽しめる、市民にも観光客にも人気のスポットだ。

埠頭にある観覧車「SkyWheel」。ゴンドラのひとつが木製のサウナになっており、上空40mの港の絶景を見ながらととのい体験が可能

3つの屋外プールとパノラマサウナ、男女別サウナなどを完備
ヘルシンキの美しいまちとバルト海の間にあり、ゴンドラサウナを完備した観覧車と隣接。受付を済ませて水着に着替えて中に入ると、小さな子どもを連れた家族連れから手をつなぎっぱなしのカップル、ひとりで黙々と温水プールで泳ぎ続けるおばさま、海と同じ水温(つまりかなりの冷水)の海水プールではしゃぐ若者グループまで、さまざまなひとが思い思いに楽しんでいた。

30人収容できるパノラマサウナ。陽光を受けて輝くバルト海を見ながら、オシャレな本格サウナで汗だくに
今回施設を訪れたのは、夏の終わり。ウッドデッキには日差しが降り注ぎ、ヘルシンキ市民がここぞとばかりに甲羅干しをしていた。冬になるとあたり一面が雪景色になり、海水プールは凍る寸前の水温になるとか。それでもサウナで温まった人々が、喜々として飛び込むそうだ。
フィンランドのハッピーな暮らしに、なくてはならないサウナ。日本では1964年の東京オリンピックで、フィンランド選手団が選手村にサウナを設置したことから第一次サウナブームがおこったという。いまでは、全国各地の温泉施設やスーパー銭湯などでも楽しめるようになった。利用する際には、ぜひフィンランドの伝統にのっとって、自分の身体と心の声を聞いてみよう。
――フィンランドのサステナブルグルメに続きます――
photo&text:萩原はるな




