新潟で“農家になった”ローラ、無農薬コシヒカリを収穫し「日々、自然に生かされていると実感してるよ!」
2025年3月、自身のインスタグラムで「1年かけて農業を学び、米や野菜を育てる」と宣言し、世間を驚かせたローラさん。そんな彼女が「より農業を広めたい」と、千葉県木更津市で開催された畑のフェスイベント「EARTH BEAT FES 2025」に登場、“農”の魅力について語りました。私たちの目に触れないほんの少しの間に、彼女は“農業従事者”として人間的にも大きく成長していたようです。
「土に触れると落ち着いて、前向きな気分になれるの」
日本で『ViVi』などのモデルやテレビタレントとして活躍、大人気だったローラさんが、アメリカのロサンゼルスに拠点を移したのが2015年。
あれから10年。突如、インスタグラムで「私の佐藤家の祖先が眠る新潟で、雑穀やお米、野菜さん達を畑で耕す事を決めました」「これから毎月新潟に訪れて約1年間かけて農業を学んでいくよ」「自分でイチから土に種を蒔(ま)いて頂くという経験をして感謝と愛を深く学んでいきたい」とのメッセージを写真つきで発信、本名が「佐藤えり」であることも明かしたときには、ファンは大いに驚き、心ない人たちからは「そんなキレイな服装で農業なんて信じられない」などとSNSで揶揄(やゆ)されたりもした。

クルックフィールズで収穫時につかわれるカゴをイスにした“農家スタイル”でのトークセッション
だが、彼女は本気だった。宣言どおりに母の故郷である新潟で、高齢のため田んぼの世話ができなくなった農家から田んぼを借り、月に一度、数日間は現地に滞在して稲の苗を植えたり、畑で雑穀を育ててきた。その間、インスタグラムでも、山菜採りをする動画をアップしたかと思えば、こんなメッセージも投稿している。
「4月は土について学び、5月はついに種蒔きを始めたよ。そして今回、雑穀さんたちを育てる畑も決めてきたよ」
「今回、植えたのはコシヒカリ。(中略)よう〜しっ! 今日も田んぼに足を運んでくるよ」
「6月に土に植えた苗たちのまわりに雑草さんたちも一緒にぐんぐん生えてきたよ。(中略)数日間かけて、雑草さんたちを取る作業をしたよ」
「これから、もちきびたちを干して、乾燥させて、脱穀という流れが始まるよ! 食べられるようになるまでは、まだまだ先があるなあ」
「初めてのお米の収穫。今回は昔の日本の姿みたいに無農薬でぜんぶ手で収穫することにチャレンジをしました。(中略)そして今回は2人で1年分くらい食べられる分の無農薬のコシヒカリの収穫ができたよ」
ローラさんはこの日、つくる人、届ける人、食べる人みんなで食の未来を考え、つながりを全身で体感する畑のフェスイベント「EARTH BEAT FES 2025」に登場した。各地から集まった農家とともに、「農とライフスタイル~生き方を耕す~」と題したトークセッションに参加。作り手のひとりとして、農のある生活を送るうちに変わってきた心境について語った。
「畑に行くだけですごくワクワクするし、土に触れると心が落ち着いて、前向きな気分になれるの。まだまだ経験は浅いけれど、土に手を入れて作業をしていると、『私たちは、農のおかげで生きてこられたんだ』と強く感じます。食べ物やご先祖さまたちのおかげで、私の命がいま、ここにある。そう実感することで、いろいろなことに感謝する機会が増えたかな」

会場のクルックフィールズには、農家などさまざまな生産者が出店。ローラさんは新生姜をたくさん買って「ガリにします!」
農業に携(たずさ)わることで、価値観も変わったそうだ。
「なんだか、新しい生き方が見えてきたような気がするんです。『足るを知る』という感覚が生まれて、『私は足りているんだ』『これはいらなかった』と、家の断捨離が進みました」
「いまはタレント活動よりも農業!」
幼いころは父の故郷であるバングラデシュで過ごし、裸足で土の上を走り回っていたというローラさん。
「そのころはつねに自然とコネクトしていたけれど、大きくなるにつれ距離ができていって……。それに、自分がイチから土に手を入れて、植物を育てることは(今回の農業が)初めての経験。日々、食べものはこういうふうに成長していくんだと、たくさんの学びがあります。しっかり畑仕事をして帰ると、『今日は、すっごく仕事をした!』と、充実感で満たされるの」
この秋には、自ら植え、育ててきた米を初めて収穫。
「自分で育てたお米を食べたときは、『こんなに甘いお米は初めてかも!』と驚きました」

「EARTH BEAT FES」でおこなわれたチャレンジ「おにぎりで1000人とつながろう」にも参加。木更津産の新米でつくられたおにぎりを堪能した
ライフスタイルや価値観が変化し、同じような考え方の人々が周囲に集まってきたとローラさん。自然に人間関係も変わったという。ローラさんの友人たちにもプラスの変化があったようだ。
「『私も農業を体験したい』『なにか手伝えることはある?』と連絡をくれる友だちが増えたんです。そんなときは、『おいで! おいで!』と誘って、(新潟の)家や近くの古民家に一緒にお泊まり。田植えや収穫も、友だちと一緒にやったの。みんな、『またやりたい』『今度はもっと仲間を連れてくる!』なんて言ってます。私の行動がきっかけで、農を楽しいと感じる人が増えるなんて、すごくうれしい!」
友人たちと、収穫した米などをつかって『なにかできそう!』と話しているとローラ。センベイづくりのイベントなど、いろいろなアイデアが湧いてくるという。

「(フェスの)会場内を歩いているだけでも癒やされる! 野菜はもちろんハーブティーに日本酒、パン屋さんも気になります。ぜんぶのお店を回りたい!」
田んぼや畑にいると、自分も自然の一部だと実感できるそうだ。
「これまでのお仕事と違って、農業ではスケジュールをはっきり決めることが難しい。田植えや収穫などの繁忙期にはスケジュールを大きく空けておく必要があるから、農業以外の仕事が入れにくいんです。いまの私の選択は、タレント活動よりも農業。自然と、新潟にいる時間が多くなっているの。気づいたら、農に合わせて生きている自分がいる。自然のリズムに、私が生かされているんだなあって感じます」
Photo:横江淳、Text:市村幸妙




