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東京から茨城県の古民家に移住したYouTuber「どんぐりさん」夫妻の“のんびり忙しい”生活【前編】
東京から茨城県の古民家に移住したYouTuber「どんぐりさん」夫妻の“のんびり忙しい”生活【前編】
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東京から茨城県の古民家に移住したYouTuber「どんぐりさん」夫妻の“のんびり忙しい”生活【前編】

人生も後半にさしかかってくると、第2の人生を模索し、移住を考える人も多くなっているようです。そこで、茨城県での移住ライフを紹介するYouTube『どんぐりさんのsurprise gardening』が人気となっている、どんぐりさん夫妻のご自宅を訪問。移住生活のよいところ、大変なところなど、詳しく教えていただきました!

移住の決め手は耕作放棄地同然だった「畑」

東京に住んでいた“どんぐりさん”こと横田晶子さんが2019年、自身のYouTubeチャンネルをスタートさせたのは、親が遺(のこ)した実家の古民家を管理しはじめたことがきっかけだった。

「茨城に住んでいた父が亡くなって、家だけ遺されたんです。私が生まれ育ったこの日本家屋は、祖父の代に建てられ、築90年と古いですがすごく素敵で。取り壊してしまうのはあまりに惜しく、私が管理しはじめたんです」

祖父の代から続く築90年の古民家。庭は花や木が生い茂り、秘密の花園のよう

当時は東京都内に住んでいたどんぐりさん。はじめは一人で週末だけ通い、家や庭を手入れをするという二拠点生活を送っていた。

「風情ある家のようすや、きれいになった庭のことなど、東京に戻るたび夫に話していたのですが、言葉だけではどうしても伝わらない。そこで動画を撮って見せていたところ、息子が『せっかくだからYouTubeをやってみたら?』と提案してくれたのです。それではじめてみたところ、思った以上に多くの人に見ていただけて、びっくりというか不思議な気持ちです」

移住した実家の縁側で、いまの生活について楽しそうに話す、どんぐりさん

東京と茨城の二拠点生活を3年ほど続けていたどんぐりさんは、約1年前、ついに完全移住を決める。何が決断の決め手となったのか?

「ズバリ、畑です。父は生前、近くの土地で畑をやっていたんですが、これが草ぼうぼうの、いわゆる耕作放棄地なってしまっていて。ある日、茨城の農業委員会から『何とかするように』という手紙が来たんです。あまりに放置していると自治体に勝手に草を刈られて、高額な草刈り代を請求されることもあるそうで。それは困る!と思い、とりあえず自分で畑をはじめ、そのようすも動画にアップしたんです。すると、それを見たフォロワーさんたちが全国津々浦々から手伝いに来てくれて。どんどん畑の規模が大きくなっていって、もう週末だけの通いではムリとなった。夫に相談したところ、彼はリモートワークが可能な仕事をしていたこともあって、『いいよ』と賛同してくれたのです。2023年の冬に、完全に移住しました」

移住の決め手となった畑

庭に石窯をつくって採れたて野菜のピザを

ということで現在、移住生活をはじめてちょうど1年がたった。すっかり新しい生活にもなじみ、あらためてそのよさを実感する日々だという。

「やっぱり、人が親切ですよね。小学生もニコニコ挨拶をしてくれる。みんな地元の人で、知らない人はいないですから(笑)。スーパーとかガソリンスタンドに行っても、店員さんがフレンドリー。東京では事務的に買い物をして帰るという感じでしたけど、そういうせわしなさから解放されました」

ご近所づきあいも、東京にいたころより格段に増えたという。

「3年前に一人でこちらに通っていたときに、庭に小さなかまどをつくったんです。自分で育てた野菜をつかって、ピザをつくりたいと思って。それでお隣さんを招待して石窯ピザパーティーを開いたら、『これはいい』と思ってくれたんでしょうね。その後、お隣さんはウチより立派なかまどをつくっていました(笑)」

収穫した野菜でピザをつくりたいと、DIYで庭に設置したかまど

夫である“松ぼっくりおじさん”こと建文さんも、「田舎暮らしは味わいがある」と満喫しているよう。

「こっちに来てから、とにかくよく散歩をするようになりましたね。一応、スポーツセンターの会員にもなっているんだけど、やっぱり有酸素運動には歩くのが一番いい。都心だと歩くといえば駅の構内とか階段の上り下りばかりだけど、いまは広い空を見ながら歩いている。人が少ないから、よそ見していても大丈夫ですしね(笑)。

平均して毎日2時間ぐらいは歩いている、と建文さん。

「だからでしょうか、妻からも顔色がよくなったと言われます。ジムで運動するほうがカッコいいかもしれませんけど、どこか『行かなきゃ』というノルマ感がある。その点、散歩は自由気まま。途中で知り合いによく会うので、そのまま話し込んで気づけば何時間も経っていた、なんてこともしょっちゅうです」

「田舎暮らしは味わい深い」と語るどんぐりさん夫妻

デメリットはあまりない。家が寒いことぐらい(笑)

こう聞くといいことづくめのように感じるが、そうはいってもガラリと環境が変わる田舎での移住生活。大変なこと、不便なことはないのだろうか?

「強いて言えば、家が寒いことですね(笑)。やはり古民家ですから。だからふだんは、機密性のいいダイニングキッチンにこもっています。でも、天気のいい日に縁側や庭でお昼を食べたりする時間の贅沢さは、都会では味わえなかったもの。インターネットがあってリモートワークが可能だから、こういう暮らしができるようになったんだなあとしみじみ感じますね」

床の間もある立派な古民家。冬は寒いのが玉にキズだが、夏は涼しく過ごしやすいという

ほかには、最寄りのスーパーでも車で10分ぐらいかかるため、日常生活には車が欠かせず、ガソリン代が少しかかること。田舎は自動車が意外に多く、飛ばしている人も多いため、それがちょっと危ないこと。夜は灯りが少なく真っ暗になるため、引っ越してきた当初は日が暮れると道がわからなくなり何度か迷ったこと。畑作業で日焼けするので日焼け止めが欠かせないこと……。デメリットは、その程度だという。

「茨城は東京から通勤圏内。東京にいたころの友人にも会おうと思えば会えるので、これまでの人間関係が途絶えて寂しいということもありません。むしろこちらに来てから新しいつながりが増えたので、かえって人間関係が豊かになった。夫も以前は仕事のつき合いしかなかったですけど、いまはプライベートな交友関係が広がったと言っています。隣家との境界にある竹垣も、『つくらなきゃ』と言っていたら友人がつくってくれたんです。まさに垣根越しのおつき合い。69歳を過ぎて、まさかこんなにたくさん新しい友達ができるとは思いませんでした」

都会にいたときは、必要なものは買ってくる、そして飽きたら捨てる。そんな生活をしていたという。

「つくった人の汗も思いも伝わってきませんでした。こちらでは、すべてが落ち着いていますね。皆、生活に集中しているという印象。不便なことももちろんありますけど、都会にいたころより、はるかに贅沢な暮らしをしているなと思います」

庭で育てているハーブ。食べるもの一つひとつに汗と愛情がこもっている

text:山本奈緒子、photo&edit:萩原はるな

<後編では、どんぐりさん夫妻の「意外と大変じゃない!畑ライフ」についてお届けします>

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