編集・ライターが選ぶ「多様な働き方、生き方があると気づかせてくれる本」
常識にとらわれない自由な働き方を知り、仕事の裏側に隠れた問題と向き合う。働くこと、仕事のことを考えられる本を、編集者でライターの野村美丘さんに薦めていただきました。
固まった世の中を揺さぶる仕事
木ノ戸さんは、自ら立ち上げた福祉施設スウィングの個性的な面々との日々を通じて、まとも/否まとも、常識/非常識、普通/特殊、障害あり/なしといった「境」に揺さぶりをかけまくる。それらはふだんは「そういうことになっている」とフタをしておくことで世の中が滞りなく進行する(と思われている)微妙な問題だけに、モヤモヤ、ムズムズ、ハラハラをおおいにはらむ。不完全で、弱くて、憎たらしくて、不恰好。でも、それこそが健全な真実なのではないか。
原点に立ち返って考える
一応、子どもの疑問や悩みに五味さんが本音で答えるという体裁になっているのだが、どっこい社会人こそが手に取るべき内容。「何をしたいのか自分でわからない」「働かないで暮らしたい」「お金が欲しい」など仕事と直結している項目以外でも、違和感を流さず、建て前を剥がし、偽善を暴露し、ごまかしを指摘されるので、なんとなく周囲に順応して、なんとなく日々生きているとガツンとやられる。同じく五味さんの『大人問題』(講談社)とセットでどうぞ。
正解は自分のなかにある
意識しているにしろ無意識にしろ、「こうあるべき」とされていること、そしてそれにがんじがらめになっていることは意外に多い。でもそれって実は、自分とは関係のない誰かにとっての尺度にすぎなかったり、反対に自分のなかだけでの思い込みにすぎなかったりすることも、また多いのだ。その虚構の常識から解放されて、正解は自分のなかにあると気づくだけで、仕事の可能性は無限に広がる。都築さんの言葉から、仕事から、それを知れる。
働く人の数だけ、食事がある
おべんとうには、「食べる」、そして「働く」という、人の営みの根源が凝縮されている。この世界では、実にさまざまな場所で、いろいろな仕事をしている人が、多種多様に生きている。その誰もが、語るに値するストーリーをもっている。そうした圧倒的な事実を前に、私はもっと自由になれる。妻はインタビュアー、夫はフォトグラファーとして、夫婦で全国をまわり、取材という名のライフワークを続ける著者の仕事の仕方にも、とてもシンパシーを抱いている。
PROFILE
野村美丘 のむら・みっく
編集業・ライター。写真家の夫とフォトスタジオ「photopicnic」を運営。著書に『わたしをひらくしごと』、編集した本に『暮らしのなかのSDGs』(ともにアノニマスタジオ)など。
●情報は、FRaU SDGsMOOK WORK発売時点のものです(2021年4月)。
Illustration:Naomi Nose Text:Tokyofumi Makino , Mick Nomura , Satetsu Takeda , Iku Okada Edit:Asuka Ochi
Composition:林愛子
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