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小さいからこそ豊かになれる!「タイニーハウス」のススメ
小さいからこそ豊かになれる!「タイニーハウス」のススメ
LIFE STYLE

小さいからこそ豊かになれる!「タイニーハウス」のススメ

エネルギーも資源も、ぐるぐると巡ることで、新しい輝きが生まれる。それは家の中もきっと同じ。循環がある住まいには新鮮な空気が流れています。消費だけではない生活のヒントを、「YADOKARI」プロデューサー・相馬由季さんの暮らしから学びました。アメリカ生まれの狭小住宅・タイニーハウスに引っ越した相馬さん。エネルギーも、暮らしも循環しやすい12.4㎡のワンルームです。

何が大切か知るために、
生活をダウンサイジング

天井高2.5mのワンルーム。玄関上には収納として小さなロフトが

赤い屋根と板張りの壁。背後には林が広がり、まるで絵本の風景のよう。この愛らしい家が、相馬由季さんが暮らす「もぐら号」。2年かけてコツコツ手づくりしたタイニーハウスだ。

テーブルは跳ね上げ式。畳めばソファ前に広々としたスペースができる

「およそ7畳のワンルームです。木材店の一角をお借りして、海外の設計図を頼りに建てました。シャワールームの取りつけなどはプロに手伝ってもらいましたが、ほぼセルフビルド。わが子のように可愛いです」とニッコリ。

屋根の下や壁の中には、しっかり断熱材

相馬さんが勤めるのは、狭小住宅や多拠点生活を提案するYADOKARIという会社。そこでタイニーハウスを活用した施設や街づくりの企画を担当している。20代前半で知ったタイニーハウスに魅了され、興味のおもむくままに発祥地のアメリカを視察。そんなことを繰り返すうち、この仕事にたどり着いた。

相馬さんがつかった工具。住みながらセルフメンテナンスできるのもタイニーハウスの魅力

「自分もいつかはタイニーハウスに住みたいと夢見ていました。日本にはこうした家をつくってくれる工務店が少ないので、不器用なのに自作することに(笑)。でも愛着も湧くし、挑戦してよかったです」

モノはお気に入りを厳選して置く。マグカップは、この2つだけ

タイニーハウスはリーマンショック後のアメリカで生まれた文化。大きな家が豊かさの象徴だった国で、経済が揺るぎ、これまでの価値観に疑問を抱く人々が現れた。人生に必要なものを見つめ直した彼らが、モノや土地に縛られない小さな暮らしを始めたのだ。

ソファは広げればベッドになるほか、座面下が収納にもなる

「タイニーハウスの概念は日本ではまだ固まっていないのですが、私は、広さ10~20㎡前後、1000万円以下の家と考えています」と相馬さん。

「もぐら号のように牽引できる、不動産ならぬ動産も多いですね」

もぐら号の建設費は400万円。ローンを組まなくていい、もしくは組んでも数年で返済できる家は、それだけで人生を軽やかにしてくれる。車輪つきなら、拠点を変えたくなったら家ごと引っ越しできる。資源もムダにならないし、光熱費も抑えられる。

小さくても室温が最適なら暮らしやすい家になる。窓の断熱は重要なので、最新のペアガラスを採用

「小さい家は熱効率がいいんです。窓は最新のペアガラスなので、エアコン1台で十分。照明は3ヵ所で、かなり省エネです」

相馬さんが大切にしているアメリカのタイニーハウス本

好きなもの、必要なものだけが置かれた相馬さんの新居には、すがすがしい空気が巡っている。断捨離は、家をつくる2年間で少しずつ進めたそう。見えてきたのは自分の価値観。アメリカでタイニーハウス巡りをしていたときに買ったポストカードや現地の本は取っておくことに。タイニーハウス暮らしというと、仙人のような質素な小屋暮らしをイメージされることも多いそうだが、「小さいからこそ豊かになれる」と相馬さんは話す。

パートナーの哲平さんはネパールやチベットなどの秘境に旅行者を案内するツアーコンダクター。料理好きなので、キッチンは十分な広さをとった。奥はトイレとシャワー。その上には3畳ほどの広めのロフトも

「生活をダウンサイジングして、モノを手放したり、ローンや土地に縛られないようになると、私の場合は心に余裕が生まれて、何が大切かわかるようになりました。タイニーハウスにはたくさんの利点があるけれど、単に小さいからいいのではないと思うんです。本当に必要なものを見つめ直すこと。そのためのきっかけをくれるのだと思います」

相馬さんがセルフビルドで建てたタイニーハウス。神奈川の郊外に緑豊かな土地を購入し、そこに、この家を移動させてきた

PROFILE

相馬由季 そうまゆき
1989年生まれ。ミニマルライフや多拠点生活などを通して自由な生き方を提案するソーシャルデザインカンパニーYADOKARI所属。個人ブログ「tinyhousetravelers.」でタイニーハウス暮らしのノウハウを発信。

●情報は、FRaU2021年1月号発売時点のものです。
Photo:Kiyoko Eto Text & Edit:Yuka Uchida
Composition:林愛子

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