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「ミニマム・ライフコスト」を知ることから! 元ミリオンヒット・プロデューサー四角大輔が教える「幸せをつかむ方法」
「ミニマム・ライフコスト」を知ることから! 元ミリオンヒット・プロデューサー四角大輔が教える「幸せをつかむ方法」
LIFE STYLE

「ミニマム・ライフコスト」を知ることから! 元ミリオンヒット・プロデューサー四角大輔が教える「幸せをつかむ方法」

ロングセラー『超ミニマル主義』の続編、『超ミニマル・ライフ』が発売と同時に大きな話題となり、そのライフスタイルやサステナブルな生き方が注目を集めている四角大輔さん。現在、ニュージーランドの湖畔で作家活動をおこないながら、人生戦略として自給自足ライフを送っています。かつて四角さんは、東京で名プロデューサーとして多くのヒット作を連発。そのすべてを手放して、自らが求める幸福を手に入れたといいます。その方法論、いまの私たちに伝えたいことを伺いました。【後編】

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身の丈を知り、自分の「好き」に一点集中する

CHEMISTRYや絢香、Superflyなどのアーティストを世に送り出してきた四角さん。現在はニュージーランドの湖畔に暮らし、プロデューサー時代から思い描いてきた幸せを体現している。自分が真に求めるものを知るために必要なのは、いらないモノ、必要ないモノをそぎ落としていくことだという。

「『満ち足りた幸せな人生』を手にしたいなら、モノやコストを増やすのではなくミニマルにするんです。なにがなんでもすべてを減らせ、と言っているわけではなく、あなたにとって大事なモノやコトを最大化するために、ほかの余計な物事を手放す。我が家の家具はミニマルですが、人生をかけたフライフィッシングの道具はたくさんあります」(四角さん、以下同)

「これは譲れない!」というものは、減らす必要はない。それどころか、そこにフォーカスすることこそが大切なのだ。

「ある人がデータの断捨離にチャレンジして、『写真は消せるけど、音楽は消せない』と悩んでたけれど、それでOK。その人には写真データはノイズだけれど、音楽データは大切なのです。『スナック通いが大好きなんです』という人に、『ならばスナックに全精力を注ぎ、バーや居酒屋には行かないでください(笑)』と伝えたこともあります。どうでもいいことに時間やお金をつかうのをやめて、本当に大事なことに一点集中する。僕自身、心が動かされることだけにフォーカスして生きてきた。すると、自然とよけいなものに時間とお金をつかわなくなり、空間と時間、そして心に余裕が生まれていきます」

四角さんの「大事なこと」はフライフィッシングだが、音楽やスナックだけでなく、映画、食べ歩き、車などなど、譲れないものは人それぞれだろう。つまり、幸せのカタチは人によって違うのだ。

「僕がスナックの魅力を理解できないように、その人には僕のフライフィッシングに対する情熱も理解できないでしょう。それでよくて、みんな違うから世界はおもしろいんです」

そこが理解できれば、ステキなSNSの投稿などを見て、うらやましがったり、劣等感にさいなまれたりすることもなくなるはずだ。

『超ミニマル・ライフ』(ダイヤモンド社)でも紹介された、大自然のなかに佇むタイニーハウス。電気やガス、水道など公共インフラに頼らずに生活できる、完全オフグリット仕様になっている

「それまでの収入や地位をすべて手放したことで、『本当に後悔はしていない?』とよく聞かれますが、一瞬たりとも後悔したことはありません。僕にとっては、そんな感触のないバーチャルな物事より、ずっしり手応えがあって美しいニジマスのほうがはるかに『幸せ』。毎朝、自宅前の湖で大きなニジマスをフライフィッシングで釣って、食べるたび、震えるほどの幸せを感じます」

プロデューサー時代から、時間を捻出してはニジマスを求めて釣りに出かけていたと四角さん。「当時は年間に3匹釣れれば多いほうだったんですが、いまは家の前の湖で、毎朝少なくとも1〜2匹は釣れます」

四角さんにおける「美しいニジマス」が、誰にでも絶対にあるという。よけいなものに阻まれて、見えなくなっているだけなのだ。

「『ムリして働いてなるべく多く稼ぎ、好きなようにお金をつかうこと』が幸せだと信じている人がほとんどでしょう。お金持ちや高い地位にあこがれるという、資本主義的な価値観に自分を失っているんです。世捨て人のように『モノもお金もいらないよ』という境地ではなく、資本主義と世捨て人の間くらいがいいんじゃないかと(笑)。余計なものを手放してノイズをなくせば、本当に必要なものが見えてきます。もし減らしすぎて苦痛を感じるなら、少し戻すことで『心地いい状態=自分の身の丈』を見つけだせるんです」

日本人の2つの感性が社会課題を解決する 

四角さんが一番伝えたいことは、「Live Small, Dream Big──贅沢やムダを省いて超効率化して得る、時間、エネルギー、資金を人生の夢に投資する」ということ。とはいえ実践するためには、自分の「贅沢」と「ムダ」に気づく必要がある。

「まずは、自身が1ヵ月暮らすために最低いくら必要なのか、ミニマム・ライフコストを把握する必要があります。ある地方在住の20代のミニマリストは『月6〜8万円で余裕です!』と言っていました。たとえば、月に10万円あれば健康的に暮らせる人は、日給1万円のバイトを10日間だけやればいい。すると理論上、あとの20日間は何をしてもいいことになる。僕が拙著『超ミニマル・ライフ』で推奨するのは、あまった時間を『お金になるかわからないが、心からやりたいライフワーク』につかう生き方です。実際に僕は、自給自足でライフコストを最小化しながらこの方法を実践することで、フライフィッシングが生活の軸となり、夢だった作家になれました」

「人生の終わりに、こんなはずじゃなかったと思うのは絶対にイヤ」と四角さん。「長寿者へのある調査では、『こんな長生きするなら、最初からそのつもりで人生を過ごせばよかった』と多くの方が口にされているそうです。ただ長生きするのではなく、一生幸せに生きるためには心身の健康が最重要です。だから健康を最大化すべく、不健康要素を最小化して生きるべきなんです」

ミニマム・ライフコストを把握できれば、「とりあえずお金」「ないよりあったほうがいい」などという邪念がなくなる。世間や他者の基準ではなく、自分の基準ができるからだ。

「ほぼ全員が、『驚くほど少ない金額で大丈夫でした』と報告してくれます。自分のミニマム・ライフコストを知るだけで、判断基準や行動が変わります。やりたくない仕事で、健康を害してまで働きすぎることもなくなるでしょう」

仕事に追われていると、好きなことを後回しにしがち。すると自分の「好き」を忘れてしまい、幸せを手にできないまま日々を過ごしてしまうという。

「その結果、満たされない心を埋めようと、不要な物ごとを求めて過重労働し続け、大量生産&大量消費に加担していく。すると、健康と地球が破壊されて、結局は幸せを手にできない。自分の身の丈、つまり最低限必要な生活コストを把握できてはじめて、それがムダなことだと気づけます。長い人類史の99.9%の期間、人間は物質的にギリギリの状態で、太陽のリズムで自由に生きていた。ちゃんと夜寝て朝起きて、ちゃんと食べて運動し、最小限のモノだけ手にしながら、好きなことを軸にして生きることで人は幸せになれるんです」

大量生産&大量消費が進んだことで、みんなが身の丈を超えた生活を求め、環境も破壊してしまった。いきすぎた資本主義から抜け出す方法は、じつは日本の「禅」にあると四角さん。

「欧米の辞書によっては、ミニマリズムの項目に『禅』と記載されてます。禅のルーツはインドですが、中国で発展し、日本でその美意識は完成し世界に広まります。さらに、開国直後の江戸の人口密度は当時世界一でしたが、排泄物やゴミにあえぐ欧米の大都市とは対照的に、禅の美意識のもと清潔に保たれ、排泄物さえ循環させるサステナブルタウンになっていて世界は驚いた。私たちは、そのミニマリズムとサステナビリティ両方のDNAを受け継いでいるんです。無数にある社会課題の解決のカギを握るのは、この日本人の2つの感性だということを知っておいてほしいです」

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ーー中編はこちらーー

四角大輔■1970年大阪府生まれ、作家。環境保護アンバサダー。大学卒業後にソニーミュージックに入社、10回のミリオンヒットを記録する名プロデューサーとして活躍する。2010年、すべてをリセットしてニュージーランドに移住、ポスト資本主義ともいえる自給自足ライフをスタートさせる。公式サイト(daisukeyosumi.com)

photo:横江淳(人物写真)、text:萩原はるな

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