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あのJR東海「そうだ 京都、行こう」CM制作スタッフが厳選!初夏の京都ベストスポット
あのJR東海「そうだ 京都、行こう」CM制作スタッフが厳選!初夏の京都ベストスポット
FEATURE

あのJR東海「そうだ 京都、行こう」CM制作スタッフが厳選!初夏の京都ベストスポット

「そうだ 京都、行こう。」は、今年で33年目になるJR東海の京都観光キャンペーンのキャッチフレーズ。あのテーマ音楽に、俳優・長塚京三さん、柄本佑さんらのナレーションが乗った美しい映像のテレビCMを、皆さん一度は目にしたことがあるでしょう。2025年夏、このCMは「初夏のしつらえ」をテーマに、京都ならではのみずみずしい緑と美しい空間を紹介しています。雨にしっとり濡れる青紅葉や苔などには、いましか出合えないと耳にして、制作スタッフさんオススメの初夏の京を訪ねました。

華やかな襖絵、苔のふかふか絨毯や「血天井」に驚嘆!

季節の移ろいに応じて住空間や装飾を整える「しつらえ」文化が根づく京都は、ちょうどいま、夏支度を終えたところ。そんな地で今回CMの撮影場所のひとつに選ばれたのが、右京区花園にある、こだわりの詰まった茶室や襖絵(ふすまえ)で有名な「妙心寺天球院」。通常は非公開だが、今回JR東海キャンペーンに合わせて特別観覧プランを用意している。

しっとり雨に濡れた天球院への参道。初夏はアジサイが咲き、クチナシの甘い香りが漂う

妙心寺は全国にある臨済宗の禅寺の大本山。約10万坪の広い境内には46の塔頭(たっちゅう)寺院が建ち並んでいる。つまり、妙心寺という巨大なお寺の敷地内外に、さらに個別の寺が46軒もあるのだ。そのひとつ「天球院」は境内の北端付近、北総門から入ると右手にある。岡山藩主だった池田光政兄弟が大伯母の天久院のため、1631年(寛永8年)〜1635年にかけて建てた寺だ。方丈(ほうじょう=禅寺の建物のひとつ)内には、絵師・狩野山楽とその婿養子で後継者の山雪による「竹に虎図」「梅・柳に遊禽図」などの金碧画や「山水人物図」などの水墨画がいまも残されている。

父トラにじゃれつく子トラがかわいい「竹に虎図」。天球院には狩野山楽、山雪による素晴らしい障壁画が152面残っており、いずれも国の重要文化財に指定されている(一部を除き高精細複製品 )

さらに、美しい庭園と「血天井」も見どころだ。天球院の住職が案内し、解説してくれる。

「『関ヶ原の戦い』の前哨戦とされる『伏見城の戦い』では、戦闘むなしく城が落ち、徳川方の武士が大勢自害しました。武士たちの無念の死を弔うために、その血で染まった床板を京都市内の寺院などの天井板に使用したのが血天井です。方丈の奥にある書院はこれまで一般にはご案内してこなかったのですが、せっかくキャンペーンのポスターにつかっていただいたので、一日200名限定でご覧いただくことにしました」

方丈の自由拝観、住職の案内つき「方丈・書院の拝観」は、JR東海の「EX旅パック」「EX旅先予約」から申し込める

いまJR東海では、とくに苔庭が美しい6つの寺(常寂光寺、三千院、勝林院、圓光寺、祇王寺、東福寺)でつかえるパスポートを発行している。いずれも緑の絨毯(じゅうたん)を敷き詰めたような、見事な苔が広がる庭を持つ、苔ファンならずとも必見の寺だ。「京都にはお寺が多すぎて、どこから見ればいいのかわからない」という人にはとくにオススメだ。

筆者はCMスタッフも推す上記6つの寺のうち、苔庭はもちろん、秋の紅葉でも有名な、右京区嵯峨小倉山にある常寂光寺を訪れた。

境内には、藤原定家の小倉山荘跡と伝えられる場所がある。仁王門は「大本山 本圀寺(ほんこくじ)客殿」の南門を移築したそうで、勇壮な仁王像は、あの運慶の作といわれる

常寂光寺は、百人一首に詠(よ)まれた小倉山の中腹にある日蓮宗の寺。16世紀末に日禛 (にっしん)が俗世間から逃れ棲んだと伝わる。同寺の住職、長尾憲佑さんが言う。

「小倉山には細い枝が重なり合って多彩な姿を見せるイロハモミジ、枝が力強く伸びる男性的なオオモミジが繁っています。同じ緑のモミジでも、単調ではない美が感じられるのが特徴。赤く紅葉するイロハモミジと黄色に色づくオオモミジのほか、それらが交配したオレンジ色に発色する中間種もあり、秋の紅葉時には錦絵のような美しいグラデーションが広がります」

たしかに、ふと見上げれば日差しにきらめく青紅葉が、下を見ると苔の絨毯が広がる。この美しい苔庭を保つためには、日々どれほどの手入れが必要なのだろう。雑草が生えれば抜き、苔が落ち葉に覆われたらすぐに掃き掃除をする。これを怠ると光合成ができなくなり、苔は1年足らずで枯れてしまうのだという。

「草引きは毎日欠かせません。約2万坪の境内は回遊式庭園で、ほとんどが苔庭。360度どこから見ても美しいよう、手入れをしています。池のまわりや竹林の下、岩場、山の斜面など、環境が違えば生える苔の種類も異なります。ヒノキゴケ、スギゴケ、チョウチンゴケ、ツヤゴケ、ハイゴケ、スナゴケと、約30種類の苔が自分たちの好む環境で育っています。石と石の間に苔を生やした『苔目地』は、硬い石畳のイメージをやわらかくする演出なんですよ」(長尾さん)

日々の手入れが、緑の癒やし空間をつくりだす

「日本庭園の主役は石と苔。木は若葉や花、紅葉と季節ごとに目を楽しませてくれますが、数百年経つと枯れて景観が変わるでしょう。日本庭園の根幹をなしているのは、ずっとその場にあり続ける石畳や灯籠、石碑などの石です。そこに苔が加わると日本庭園になる。苔は空気のような存在で、目立たない脇役ですが、絶対にないと困る重要な役割を果たしているんです」(長尾さん)

綾小路通の京町家で「夏のしつらえ」に触れる

中京区・四条通のすぐ南側を並行して東西に走る綾小路通(あやのこうじどおり)は、周辺に古い木造住宅や町家(まちや)が残る風情ある小道。この界隈を象徴する「杉本家住宅」は、江戸以来の「大店(おおだな)」の構えと、道路に面したところに店舗棟があり、その奥に中庭を隔てて居住棟がある「表屋づくり」の町家構成をいまに伝えている。建物は国の重要文化財、庭は「京町家の庭」として国の名勝指定を受けており、今回のCMにも登場している。

京大工のワザを駆使して建てられた杉本家住宅は、技術性、意匠性ともに高い評価を受けている

杉本家住宅は明治の初めに建てられ、現在築155年ほど。維持継承、管理をしているのは、杉本家10代目当主の杉本節子さんだ。気温の上昇に合わせて障子を外して絹の布すだれをかけ、風通しのよい「夏のしつらえ」に変える。盆地ならではのやさしい風に揺らぐすだれは目に涼しく、庭のつややかな緑を彩る。

「夏はヨシや細く割った竹などを麻縄で編んだ建具で涼やかに、冬にはぬくもりが感じられる杉戸や障子に切り替えます。布すだれは6代目が着ていた着物をアップサイクルしたもの。季節ごとに建具を変えることは、先祖に思いをはせる京都の年中行事です。電気が通っていなかった当時のおもむきを感じられるよう、灯りは極力つかっておりません。町家に残る本来の陰影は、電気を消して初めてわかる。夏ならではの町家の涼やかさ、明るさを体感してください」(杉本さん、以下同)

1990年に建物を保存する財団を立ち上げたという杉本さん。「それまでは私ら家族がこの町家に住んでいて、布団や勉強机なんかの生活道具がありました」

「電気のない暮らし」は、いまの私たちには想像すらできない生活だ。

「昔の人は火を起こして薪(まき)で煮炊きをして、洗濯物も洗濯板で手洗いしていました。いまは炊飯も洗濯も指一本でできますが、その分、自分の時間が十分にもてているかというとそうでもない。昔のほうが、時間がゆったりとしていた気がするんです。暮らしの道具一つひとつにも心がこもってて、とっても豊か。電気が通って便利になったけど、ひとつの物ごとに一生懸命あたるという思いを、置き去りにしてきたんやないでしょうか」

町家を訪れることで、私たちが忘れてしまったもの、ことに思いを馳せてほしい、と杉本さん。

「町家を見学することで、日本人が育んできた暮らしを再発見してほしい。そしたら、こうして受け継がれてきたものが、重要文化財として未来に残る意味が深くなると思います」

鴨川べりの荘厳な五層楼閣で、夏の風物詩を体感

夏の京都といえば、鴨川べりに広がる川床(かわゆか)。京都人は単に「ゆか」と呼んで、同じく夏の風物詩である左京区・貴船(きふね)の川床(かわどこ)と区別するらしい。川辺に広がる高床式の座敷は、せせらぎを眺めながら飲食を楽しむ粋な人びとでにぎわう。五条大橋からひとつ上流に架かる松原橋近くにあって、やはり川床を設けているのが「LE UN(ルアン)鮒鶴京都鴨川リゾート」(以下、ルアン)。そのルーツは、1870年(明治3年)に開業した仕出し屋「鮒鶴」だ。京都でもっとも広い座敷と川床を持つここは、古くから文人墨客のサロンとしても機能してきた。

松原橋からルアンとその川床を望む。現在の建物は1925年(大正14年)に竣工した旧館と、1934年(昭和9年)に増築された新館からなる五層楼閣建築だ

建物は140年の歴史をもつ登録有形文化財で、新館では手動扉のエレベーターがいまもなお現役で動いている。そして、かつては100畳の大座敷だったという、アールデコの意匠と現代のインテリアが融合したメインダイニングでは、地元産の野菜や味噌など調味料をつかった京フレンチが味わえる。

ルアンのメインダイニングで提供されたこの日の肉料理は「国産牛フィレ肉のポワレ」

インバウンドの増加もあって、オーバーツーリズムや観光客のマナーが問題になっている京都。実際に訪れると、人びとが殺到する場所さえ避ければ、十分に心身を癒やし、満たす旅を満喫できる。絵師の息づかいが感じられる襖絵、丹精こめて手入れされた苔庭、川床や荘厳な空間での美食、世代を超えて受け継がれてきたていねいな暮らしなどを体感することは、どれも京都だからこそできる、最高の夏のギフトなのだ。

※妙心寺天球院、杉本家住宅は取材のため特別な許可を得て撮影しています。写真の二次利用および転載を禁じます。

Photo & Text:萩原はるな

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