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渦潮の徳島・鳴門で見つけた「保育園併設サーフブランド」と「日本初のNFT美術館」【後編】
渦潮の徳島・鳴門で見つけた「保育園併設サーフブランド」と「日本初のNFT美術館」【後編】
FEATURE

渦潮の徳島・鳴門で見つけた「保育園併設サーフブランド」と「日本初のNFT美術館」【後編】

ときには海上交差点として、ときには四国の玄関口として人やモノが行き交うことで、しなやかに変化してきたSDGs先進県・徳島の「鳴門」。海辺のまちに息づく、古くて新しいデザインを探しにいきましょう。

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うねりがつくり出す風景

代表の山口輝陽志さん(左)と、香川から「モッコクハウス」に遊びに来ていた浦川千磯乃さん。徳島市の小松海岸でサーフィンした後によく立ち寄るのだそう/NALUTO TRUNKS & CO. 鳴門市大麻町松村字土井57-2

カーナビに従って到着した先は、畑の広がるエリアでは、少し目立つ一角だった。「おーい、こっち!」と初対面とは思えないフランクさで迎えてくれたのは山口輝陽志(きよし)さん。もともとは水着を製造していた父親の縫製工場を継ぎ、15年前にサーフィン用ショーツブランド「ナルトトランクス」を始めた。2019年には道路向かいに企業型保育園「ナルトキッズ保育園」を、2021年にはショップ兼ギャラリー「モッコクハウス」をオープンし、衣服だけでなく地域のコミュニティづくりにも力を入れている。

ランニングやヨガなど日常のあらゆるシーンでつかえる「every day,every one」シリーズ。リサイクル再生ポリエステルの糸から開発した生地は、速乾性抜群だ

工房に入るやいなや、明るい空間に「わぁ」と声が出る。高い吹き抜けの天井に、床から天井までの大きな窓、そこから出られるウッドデッキ。ハーマンミラー社製など機能性の高いイスが並ぶ。

ナルトトランクスの工房にある糸棚。引き出しを開けると同色の糸が入っている

「縫製工場って暗いイメージがある。それをブッ壊したかったんですよね」と山口さんはいたずらっぽく言うけれど、スタッフへの気づかいはあたたかい。

鳴門で生まれ育ち、サーフィンと西海岸カルチャーを愛する山口さん。20代は高松での社会人生活を満喫していたが、気づけば家に帰るようにここに戻ってきていたと笑う。

鳴門に3つある渡船のひとつで、1日300人ほどが利用する黒崎渡船。市が管理し、無料で乗船できる

よく見ると、ブランド名のロゴは「Naruto」ではなく「Naluto」になっている。

「Naluはハワイの言葉で『うねり』という意味です。この場所でやっていくと決めたときに名づけたんですが、ピッタリでしょう?」

鳴門市の内湾にあるウチノ海。湖のように静かな内海に、釣り屋形(釣り人のためのイカダ)がたくさん浮かぶ。中央のハート形の島は、無人島の鏡島

いつの時代も、内なるものが外からの風と混ざり合い、カルチャーが生まれてきた鳴門。人びとは水平線の向こうに夢を見て、新しいものをたくましくも柔軟に受け容れてきた。この町の風景がいつも新鮮な驚きに満ちているのは、土地と人が響き合うように“うねり”を生んだ、軌跡がそこにあるからだ。

2021年に開館した日本初のNFT美術館。展示の目玉は、細田守監督作『竜とそばかすの姫』とアパレルブランド「アンリアレイジ」がコラボし、2022年春夏パリコレで発表したNFT作品。実際にモデルが着用したルックとデジタルルックの両方が展示されている。/NFT 鳴門美術館 鳴門市撫養町林崎字北殿町149

●情報は、FRaU S-TRIP 2023年4月号発売時点のものです。

Photo:Shintaro Miyawaki Text:Yu Ikeo

Composition:林愛子

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