地産地消レストラン、絵画教室にスパ、野外シネマまであるロスカボスの有機農場「フローラ・ファームズ」を訪ねて
メキシコ西部、全長1250㎞に広がるバハ・カリフォルニア半島。その最南端にある世界的リゾート、ロスカボスは、北米大陸のなかでもサステナブルな取り組みに積極的なSDGs先進エリアです。2024年5月のレポートに引き続き、ライターの仁田ときこさんと写真家・かくたみほさんがこの地域を訪れ、最新の話題を3回にわたってお届けします。第2回はロスカボスにあるまち、サンホセ・デル・カボの北部、シエラ・ラグーナ山脈のふもとに広がる“究極の循環型施設”と名高い農場を訪れます。
ファームはいまや大規模複合施設に。毎日さまざまなワークショップが開催される
25エーカーの農場に人気レストランを移転
ロスカボスの沿岸都市、サンホセ・デル・カボには、4代にわたってワイナリーを営んできた家族が1996年に開いたオーガニックファーム「Flora farms(フローラ・ファームズ)」がある。一家はもともと、まちなかで小さなオーガニックレストランを経営していたが、土地と生産者と消費者が理想的に循環していくことを求めてレストランを25エーカー(約10ヘクタール)の有機農場に移転することを決意。そこから、このファームは野外シネマまで含む巨大複合施設に発展していく。
ファーム内レストランでは、ホルモン剤や抗生物質の入っていない野菜由来の飼料を食べて育った豚や鶏の肉がつかわれている
いつしか、フローラ・ファームズは、「農家の夢と理想が詰まった農場」「究極の循環型施設」とまでいわれるようになった。世界中のファーマーだけでなく、多くの起業家やセレブリティがわざわざ足を運び、土地と人とのつながりや、その理想形態をここに見出していくのだ。
同ファームの有機農場で育てる野菜、果物、ハーブは100種を超え、それらは毎日収穫されて新鮮なうちにレストランで調理される。ファーム内にはグロッサリーもあり、そこには新鮮そのものの野菜、肉、卵や、それらでつくられたドレッシング、色とりどりの花が並び、食事後に買い物を楽しむ人でにぎわう。まさに、生産者と消費者が非常に近い距離でつながる「ファーム・トゥ・テーブル」を体感できる施設なのだ。
レストラン隣の農園で収穫されたばかりの野菜も購入できる
取材した日は農園の野菜やハーブを用いた料理教室が大にぎわい
広大な敷地では毎日のようにさまざまなワークショップも開催されている。収穫したばかりの野菜を用いた料理教室はもちろん、豊かな植生をテーマにした絵画教室、野外でのシネマ鑑賞、ライブコンサートなどなど。セレクトショップやスパなどといった施設もあり、薬草学者と一緒に農場や周囲の砂漠をめぐって、薬草の効果とつかい方を学ぶツアーまで用意されている。
冬期も温暖なため年間通じて100種類以上の野菜、果実、ハーブを栽培
農場では土壌を破壊しないよう細心の注意が払われ、栄養価の高い堆肥や有機残骸を混ぜ込んだ土が使用されている。害虫駆除には唐辛子やニンニクエッセンス、ハーブなど、ナチュラルな素材を取り入れている。
ロスカボスでは年間350日以上も晴天が続くという。乾燥した大地で野菜を育てるには大変な苦労があったそうだ。しかしフローラ・ファームズは、シエラ・ラグーナ山脈のふもとにある水脈を発見、発掘して自ら灌漑施設をつくった。こうしてファーム内で見事な循環を生み出したのだ。世界でも稀少なこの成功例を視察するため、さまざまな人びとが視察に訪れているが、なんとファームの姿勢に共鳴した人気バンド「マルーン5」のボーカル、アダム・レヴィーンなどハリウッドセレブが、ここで結婚式まで挙げたというから驚きだ。ロスカボスを観光する際は、こんな新しい農場のあり方をじっくり見学するのも悪くない。
Flora farms https://www.instagram.com/florafarms
協力:ロスカボス観光局 photo:かくたみほ text:仁田ときこ
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