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「ザ・リッツ・カールトン京都」が本気で米づくりから手がけた日本酒とは
「ザ・リッツ・カールトン京都」が本気で米づくりから手がけた日本酒とは
FEATURE

「ザ・リッツ・カールトン京都」が本気で米づくりから手がけた日本酒とは

世界規模で展開する高級ホテルブランド「ザ・リッツ・カールトン」は、社会や地球環境に貢献できる取り組みを、率先しておこなっています。2014年のオープン以来、「ザ・リッツ・カールトン京都」がコンセプトに掲げているのは「Made For Kyoto」。景観に溶け込むデザインを採用し、日本文化や京都の伝統に敬意を払いながら、多彩な活動を推進しています。開業10周年を迎えた今年は、地域と社会の持続的発展にさらに貢献する施策のひとつとして、ホテルスタッフが手塩にかけて育てた酒米で醸したオリジナルの日本酒を制作。常に新しい価値を創造する、ザ・リッツ・カールトン京都を訪ねました。

京都らしい意匠にあふれたホテル

光源氏の邸宅「六条院」をイメージしているパブリックエリア

二条大橋の袂(たもと)、東山三十六峰を見渡す風光明媚なロケーションのザ・リッツ・カールトン京都。近くに河原町や祇園といった繁華街があるにも関わらず、鴨川の自然と静寂にあふれ、京都らしい情感が漂う。この場所は平安時代、貴族たちが東山から昇る月を愛でるための別邸を建てた地。関西財界を代表する藤田財閥の創始者・藤田傳三郎の別宅を活用した「ホテルフジタ京都」の跡地でもある。その由緒ある歴史と文化を継承し、いまに伝えるため、館内の随所に伝統的な意匠が凝らされている。

鴨川との一体感を感じさせる水流のアプローチからエントランスに足を踏みいれると、六弁七宝柄をあしらった白い陶器壁の通路に圧倒される。京都の町家を連想させる奥に長い館内には、源氏物語をコンセプトにした400点を超える現代アート作品を展示。琵琶をクリスタルビーズでコーティングした「PixCell-Biwa(Mica)」は名和晃平氏の作品で、ベネチアングラスで創作した輝く竹林は三嶋りつ恵氏作の「月の光」だ。京和傘の天井照明や組子など、日本の伝統意匠と現代アート作品が配置された館内は、さながら美術館のよう。身を置くだけで豊かな気持ちになる。

児童養護施設へのプレゼントを、ホテル客が持参するイベント

開業以来のコンセプト「Made For Kyoto」には、グローバルな視野だけでなく、京都の人々に向けたメッセージも込められている。

「京都由来の作品や製品、農産物を積極的につかうことで、地元の伝統文化維持、経済への貢献につながると考えています。京都にふさわしい、次世代に継承されるホテルになれるよう、京都に新たな魅力を付加し、日本文化の国際的な発信拠点として地域社会に貢献し続けることが目標。ザ・リッツ・カールトンの理念でもある『コミュニティフットプリント』という社会責任プログラムの活動では、毎年12月に京都の児童養護施設の子どもたちへのプレゼントを持参したゲストに朝食を提供する『チャリティブレックファースト』を開催し、例年300~400人の方に参加いただいております」(料理飲料部副部長・碓井孝尚さん)

「クリスマスには、地元の中・高生によるハンドベルやクリスマスキャロルの演奏会も開かれます」と語る碓井さん

館内を見わたすと、数多くの地元の人びとが、ラウンジやレストランでお茶や食事を楽しんでいる。地域活動を通して地元に調和し、愛されている証だろう。

北嵯峨でつくった酒米「祝」で唯一無二の酒「水明」を

同ホテルは開業10周年記念にあわせ、Made For Kyotoの一環として、ホテルスタッフが酒米づくりに取り組む「オリジナル日本酒プロジェクト」をスタートさせた。歴史的風土特別保存地区に指定されている右京区・北嵯峨での田植えからから約8ヵ月を経て、オリジナル日本酒「水明」が誕生。これには、「祝(いわい)」という京都府内でできた酒米を使用しており、すべてのプロセスにホテルスタッフが携わったという。

オリジナルの日本酒づくりは、自然の再生・維持に取り組むアドプランツコーポレーションと、およそ300年の歴史を誇る松井酒造の協力のもとでおこなわれた

北嵯峨には、歴史的風土保存区域の中でも特別指定を受けた美しい里山風景が残る。

「いにしえより稲作や農業が盛んな土地ですが、昨今は後継者不足のため放棄農耕地が増加し、水田や稲穂がたなびく美観が失われつつあります。さらに、化成肥料や農薬の多用による生態系への影響も取りざたされているのです」(アドプランツコーポレーション代表・増永滋生さん)

今回の取り組みでは、地域バイオマス堆肥や乳酸菌、有機質バイオ肥料をつかって酒米・祝が育てられたという。

「水田にはタガメやゲンゴロウ類が生息し、夏にはホタル、秋にはトンボが飛び交うような昔の環境をつくることにより、北嵯峨の美観復興の一助となることを目指しました」(増永さん)

日本料理「水暉」の箸置きは、三浦雅彦料理長が自ら創作。日本酒クーラーには三条大橋の改修の際に出た、古い木製の欄干を使用した

オリジナル日本酒・水明は、同ホテルがセノグラフィー(空間演出)とする山紫水明から命名。水流の躍動感あふれるラベルはホテルスタッフがデザインした。ボトルの首の部分には点字で「酒」と記されている。

水明を提供しているレストランは同ホテルの日本料理店・水暉。会席、鮨、天麩羅、鉄板の4セクションで構成される同店は南北に広がっており、南を天、北を地と見立て、天井の照明は不規則に漂う雲をイメージしてデザインされた。東側一面は大きなピクチャーウィンドウになっていて、ホテルフジタから受け継いだ石垣に流れ落ちる滝を望める。

「新酒のフレッシュ感をビンに閉じ込めた『水明』は、微発泡でガス感があり、爽やかな果実香とみずみずしさが充溢(じゅういつ)。甘みと酸味のバランスもエレガントです」(三浦雅彦料理長)

そんな水暉では、天麩羅、鮨、ステーキとともに水明を味わえる「開業10周年記念特別会席コース」を用意している。ほかでは味わえない唯一無二の日本酒を、特別な料理と心ゆくまで楽しみたい。

text:鈴木博美、photo:佐藤良一

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