Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

「神の手ドクター」に聞いた 乳がんの気づき方、治し方 【第2回】「乳がんにかかるリスクが高いのは、こんな人です」
「神の手ドクター」に聞いた 乳がんの気づき方、治し方 【第2回】「乳がんにかかるリスクが高いのは、こんな人です」
COLUMN

「神の手ドクター」に聞いた 乳がんの気づき方、治し方 【第2回】「乳がんにかかるリスクが高いのは、こんな人です」

日本の女性がもっとも多くかかる「がん」。それは「乳がん」です。いま、9人に1人がかかるといわれ、毎年9万人以上が罹患しています。そんな乳がん患者たちと真正面から向き合い、絶大な信頼を寄せられているのが、東京女子医科大学乳腺外科教授の明石定子さん。乳がん専門のスーパードクターとして知られる明石教授による、乳がんを正しく知るための連載第2回目をお届けします。

ーー第1回はこちらーー

NHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜』でも取り上げられ、これまで3000例以上の手術を成功させてきた明石教授。その手腕は「神の手」と賞賛されている。そんな明石先生に乳がん発症のリスクについて伺った。

努力次第でリスクは減らせます

乳がんにかかる可能性が高い人、そうでない人、いったい何が違うのでしょうか。一概にはいえませんが、「お酒を飲む人」「タバコを吸う人」「肥満体型の人」「運動をしない人」にがんのリスクが高いことは、広く一般に知られています。これらは、ご本人の心がけや生活習慣を変えることで改善できます。まずはこの、自分の努力次第で改善できることについてお話ししましょう。

①お酒を飲む人

アルコールは体内に入ると肝臓に集められ、アルコール脱水素酵素などによって、「アセトアルデヒド」になります。このアセトアルデヒドに発がん性があるのです。アルコールを飲む量が多いほど、乳がんのリスクはアップします。お酒を飲む場合は、日本酒なら1合(180ml)、ビールは中ジョッキ1杯(500ml)、ワインであればワイングラス2杯(200ml)までなら、リスク因子にならないという報告もあります。しかし、少量からでも飲む量に比例してリスクは上昇するという報告もあります。アルコールは適量を心がけてください。

②タバコを吸う人

若いときからタバコを吸っている人ほどリスクは高くなります。厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、喫煙者は男性が27.1%、女性が7.6%でした。本人の喫煙のみならず、受動喫煙も乳がんと関連があるという報告もありますので、その点も配慮することが大切です。

③肥満体型の人

肥満は万病のもと、生活習慣病のリスクをアップさせるといわれますが、乳がんに関していえば、とくに閉経後の肥満に注意が必要です。閉経後は脂肪細胞の中でステロイドホルモンが女性ホルモンに転換されているので、肥満の人ほど女性ホルモン値が高くなります。肥満予防は大切なのです。

④運動をしない人

まったく運動をしない、もしくは運動不足の方、要注意です。運動習慣がある人は、乳がんリスクが低下することがわかっています。たとえば、毎週3時間程度のジョギングを行うと、週ごとに3%ずつ乳がんにかかる可能性が下がっていくという驚くべき報告があるほどです。先ほど述べましたように、とくに罹患リスクの高い閉経後の女性は、ウォーキングや水泳などで適度に運動することにより、そのリスクをかなり減らせます。試してみてください。

⑤糖尿病の人

糖尿病と乳がん発症リスクに関しては、多くの研究報告があります。それによると、糖尿病の方の乳がん発症リスクは、糖尿病ではない人に比べて1.2~1.3倍になることがわかっています。糖尿病と診断されている方は、治療をしっかり行うとともに、定期的に乳がん検診を受けるように心がけましょう。

自力では変えにくい要因も。その場合は……

残念ながら、自分の努力だけでは変えにくい要因もあります。たとえば、以下のような方です。

⑥乳がんに罹患した家族がいる場合、および、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の人

母親もしくは姉妹が乳がんに罹ったことがある場合、乳がんを発症するリスクは約2倍になることがわかっています。とくに、両親のどちらかから、乳がんや卵巣がんの発症に関わる遺伝子「BRCA1」、もしくは「BRCA2」の変異を受け継いでいるケースは「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」と呼ばれ、70歳までに乳がんを発症する確率は約70%にのぼるといわれています。乳がんか卵巣がんを発症している方で、ご家族に乳がんの方がいるなどの条件に当てはまる場合は、保険診療で採血検査を受けられます。乳がんも卵巣がんも未発症の方の場合、残念ながら、いまの制度では保険でカバーされていないため、自費で20万円ほどの高額を支払っての検査となってしまいます。

⑦初潮が早く、閉経が遅かった人

つまり、生理の回数が多い方です。女性ホルモンのエストロゲンは生理周期によって増減しますが、生理回数が多いほど乳がん発症のリスクが高まるといわれています。

妊娠、出産に伴う女性ホルモンの変化は、乳がんのリスクを下げるとされています。また、授乳中は生理がないため、エストロゲンが低くなっていることや、授乳のために起きる乳腺の変化が乳がんリスクを抑えると考えられています。つまり、妊娠の経験がない、または高齢出産で授乳の回数が少ない、もしくはまったくない方は、そうしたリスクを抑える要因に乏しいため、注意が必要なのです。

ーー第1回はこちらーー

PLOFILE■明石定子(あかし・さだこ)

1990年3月、東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院、国立がん研究センター中央病院、昭和大学病院・乳腺外科を経て、2022年9月より、東京女子医科大学・乳腺外科教授。患者の希望や整容性に配慮した手術、治療に定評がある。NHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜』、NHK Eテレ『きょうの健康』など、メディア出演多数。

取材・構成/松井宏夫(医学ジャーナリスト)

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!