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「神の手ドクター」に聞いた、乳がんの気づき方、治し方【第1回】 「乳がん」は治ります。そのための方策を知りましょう。
「神の手ドクター」に聞いた、乳がんの気づき方、治し方【第1回】 「乳がん」は治ります。そのための方策を知りましょう。
COLUMN

「神の手ドクター」に聞いた、乳がんの気づき方、治し方【第1回】 「乳がん」は治ります。そのための方策を知りましょう。

日本の女性がもっとも多くかかる「がん」。それは「乳がん」です。いま、9人にひとりがかかるといわれ、毎年9万人以上が罹患しています。そんな乳がん患者たちと真正面から向き合い、絶大な信頼を寄せられているのが、東京女子医科大学乳腺外科教授の明石定子さん。乳がん専門のスーパードクターとして知られる明石教授による、乳がんを正しく知るための連載がスタートします。

NHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜』でも取り上げられ、これまで3000例以上の手術を成功させてきた明石教授。その手腕は「神の手」と賞賛されている。

「たしかに乳がんの罹患数は増え続けていますが、いまや、さまざまな治療法が確立されている病気でもあります」と明石先生。まずは何よりも、早期発見、そして正確な知識を持つことが大切だという。そのために私たちが知っておくべくことを、先生に聞いてみた。

「乳がんの治癒率は90%以上です。恐れることはありません」

まず皆さんに知っていただきたいのは、乳がんは「治る病気」だということです。乳がんは早期に発見して適切な治療を受ければ、90%以上の確率で治るといわれています。必要以上に怖がることはないのです。

ただ、日本人女性が最も多く発症しているがんが、乳がんであることも事実です。2019年の日本の乳がん罹患者数は9万7142人。女性の9人にひとりが、生涯のうちに乳がんにかかるといいます。2021年にアメリカで発表された論文によれば、残念ながら2040年になっても、乳がんは、アメリカ人女性が罹患するがんとして第1位だろうと予測されています。

次に、乳がんの発症年齢についてお話しします。統計的には、30代後半になると発症する人が増えてきます。かつては40代後半で発症する方がもっとも多かったのですが、いまは60〜70代がピークになっています。もちろん80代以上で発症するケースもあります。

乳房は、母乳を分泌する乳腺組織と脂肪などからできています。そして乳腺組織は、母乳を分泌するブドウの房のような形をした小葉と、小葉でつくられた母乳を乳頭(乳首)に運ぶ乳管から成っています。乳がんの90%以上は、この乳管から発生するのです。

ふつう、乳がんはゆっくり増殖します。1㎝程度の大きさに成長するまでに約7年かかるのです。ゆっくり増殖するからこそ、早期発見のチャンスは高いといえます。

「ブレスト・アウェアネス」という言葉を耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。これは「乳房を意識する生活習慣」のこと。乳がんの早期発見のために、自分の乳房に関心を持ちましょう、そして入浴中など折に触れ乳房に触ることで、しこりなどの変化に気づいたら、少しでも早く乳腺外科を受診しましょう、きちんと乳がん検診も受けましょうという運動です。

しかし、「自己触診で乳がんを見つけましょう」といわれても、「この方法は正しいのか」「しこりとは具体的にどの程度のものなのか」と、皆さん疑問だらけでしょう。実際には、しこりを見つけるというより、変化があるかを確認するだけで十分なのですが、それでもよくわからないでしょうから、今後、詳しくお話ししていきます。

乳房にしこりがあれば、すべて乳がんというわけでもありません。たとえば生理前には、しこりができることがありますが、それが嚢胞(のうほう=水の入ったしこり)であれば、生理後には消えるので心配ありません。しこりが生理後も残るようなら、乳腺外科を受診してください。

一般的に、自分で乳房を触って、しこりとして発見できる乳がんの大きさは2~3㎝以上といわれています。乳がんをより小さい状態で発見するには、乳がん検診をしっかり受けてください。たとえば日本の乳がん検診の受診率は、50~69歳で41%。対して、欧米の乳がん検診の受診率は80~90%です。まだまだ、日本の乳がん検診の受診率は低いのです。日本の検診受診率がアップすれば、乳がん死亡率は欧米諸国のように低下に転じるでしょう。

さて、日本人女性が最も多く罹患するがんが乳がんであることは先に述べたとおりですが、乳がんは男性も罹患します。年間罹患者数の0.5%程度が男性で、日本では年間450~500人程度となっています。私も年にひとりくらいの割合で男性の患者を診察、治療をしています。

男性の乳がんは、乳頭の真下にしこりができます。男性は胸のふくらみがないので、触るとしこりに気づきやすいのですが、乳がんは自分に関係ないことだと考えている方が多いので、受診につながらないケースがあります。男性乳がん患者の約20%は、家族に乳がんになった方が多い「遺伝性乳がん」にあたります。男性でも乳房が膨らむ(女性化乳房)ことがしばしばあります。肝臓の疾患や胃薬などの影響で起こるのですが、「何か変だな」と思ったら、女性と同じく、乳腺外科をすぐに受診しましょう。

次回は、「乳がん発症リスク」のチェック項目について詳しくお話しします。

PROFILE■明石定子(あかし・さだこ) 1990年3月、東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院、国立がん研究センター中央病院、昭和大学病院・乳腺外科を経て、2022年9月より、東京女子医科大学・乳腺外科教授。患者の希望や整容性に配慮した手術、治療に定評がある。NHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜』、NHK Eテレ『きょうの健康』など、メディア出演多数。

取材・構成 / 松井宏夫(医学ジャーナリスト)

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