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牡蠣殻でサステナブルな除菌剤をつくった「牡蠣県=広島」企業の探究心!【中編】
牡蠣殻でサステナブルな除菌剤をつくった「牡蠣県=広島」企業の探究心!【中編】
COLUMN

牡蠣殻でサステナブルな除菌剤をつくった「牡蠣県=広島」企業の探究心!【中編】

牡蠣の生産量が日本一の広島県では、年間数千トンの牡蠣殻が発生しているといいます。かつてはごみとして廃棄されていましたが、昨今では、その特性を生かした再利用があちこちで行われています。珍しいところでは、除菌剤として利用されているケースも。牡蠣殻に除菌効果!? にわかには信じがたい気もしますが、その真相に迫ってみましょう。

――「牡蠣殻を利用したトイレ」記事はこちらーーー

牡蠣殻と水だけでできた、環境にも肌にもやさしい除菌剤

牡蠣殻にはさまざまな効用があることが知られている。たとえば水質浄化。牡蠣殻を水中に入れると、アルカリ成分の炭酸カルシウムが溶け出して酸性に傾いた水を中和するため、水をキレイにする効果が期待できるのだ。こうした特性から、家庭でもメダカや金魚の水槽に牡蠣殻を入れることがあるという。これを大掛かりにした装置が、前編で紹介の牡蠣殻を活用した「排水の出ない画期的なトイレシステム」だ。

牡蠣殻は海水のミネラルを豊富に含むため「天然の石灰」とも呼ばれていて、肥料や、酸性に傾いた土壌をアルカリ成分で中和するための土壌改良材としても活用されている。さらには、牡蠣殻を原材料にした除菌剤まであるというから、さっそく取材してみた。

開発したのは、広島市に本社をもつ「新まるせ」という会社。創業以来、高速道路、空港滑走路、国道など、もっぱら道路舗装や建設に携わってきた企業である。その会社が、まったく畑違いの分野に乗り出したのには理由があった。

「弊社では、道路のアスファルト舗装で使用する重機の油汚れを落とすために、ある洗剤を使っていました。この洗剤は強アルカリ性で、汚れはよく落ちるのですが高価なのが難点。洗剤にかけるコストを削減したいと思っていたときに、牡蠣殻を焼いたもの(=牡蠣殻セラミック)が強アルカリ性で、洗浄剤と同じ効果があることを耳にしたんです。

牡蠣殻は本来、廃棄されるもの。しかも、広島は牡蠣の産地ですから、牡蠣殻はあり余っている。これを洗剤として活用できたら、コストだけでなく、ごみの削減にもつながるのではないか。そう思ったことがキッカケでした」(新まるせ代表取締役・土村学さん、以下同)

とはいえ、同社にとって洗剤は未知の領域。やはり助言が必要だろうということで、県立広島大学でリサイクル技術や環境材料の研究を専門とする教授のもとを訪れ、協力を仰ぐことにした。つまり、産学連携に踏み出したというわけだ。

「大学の先生がおっしゃるには、牡蠣殻には洗浄効果もさることながら、除菌効果もあるということでした。『それなら、商品化を前提に除菌剤をつくってみよう』ということになったのです。帆立の貝殻を主成分にした水溶液に除菌作用があることは知られていて、それを利用した商品も出回っています。同様のものが牡蠣殻でもできないか。プロジェクトは、そこからスタートしました」

こうして開発に乗り出したものの、一朝一夕にとはいかず、完成するまで足かけ5年もかかってしまった。販売を開始したのは2020年3月。折しも新型コロナウイルスの感染が広がりはじめた頃で、消毒や除菌剤の需要が高まっていたこともあり、牡蠣殻を原材料にした除菌剤は県内外から注目を集めることになる。

牡蠣殻を焼いて粉状にしたものを水に溶かしてできた除菌剤「カキララ」は、天然素材100%で手肌や環境にやさしい。帆立の貝殻にも似たような効果があるが、「帆立に比べ、牡蠣のほうが除菌効果の持続性が高いことが認められている」(土村さん)という

完成したのは、牡蠣殻を1200度で焼いて粉末にし、それを水に溶かした天然素材100%の除菌剤「カキララ」だ。

「アルカリ性で除菌効果が高く、ウイルスや細菌類に対する効果が期待できます。塩素や次亜塩素酸ナトリウムを用いた除菌剤にくらべ、効能の持続性が長いこともわかっています。手肌や環境にやさしく、小さなお子さんやお年寄りにも安心して使ってもらえるのもポイント。実際、2〜3年継続して使っている保育園や幼稚園、老人ホームもあるんですよ。もちろん、一般の事業所でも使われていますし、ネット販売もしていますので、利用範囲は広がっています」

カキララは第16回ひろしまグッドデザイン賞・プロダクト部門で準グランプリを受賞した。廃棄物の牡蠣殻を原材料としていて社会性、地域性が高いことはもちろん、牡蠣をイメージした形状のボトルが、持ちやすさ、安定性など、機能性にも配慮されていることが評価された

現在、洗剤メーカーとのコラボで、すすぎのいらない除菌効果のある洗剤を開発中。今年の末くらいには完成する見込みだという。牡蠣殻をつかったサステナブルな除菌製品シリーズは、今後も増えていくのかもしれない。

取材・文/佐藤美由紀

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