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「やさしいお金の流れ」をつくる5つのヒント
「やさしいお金の流れ」をつくる5つのヒント
COLUMN

「やさしいお金の流れ」をつくる5つのヒント

いま、SDGsの目標達成には毎年約2兆5000億ドルが不足しているそうです。この現状を受け、世界ではひとり一人のお金の使い方を見直そうという機運が高まりつつあります。お金のつかい方やその流れを変えることは、世界の様々な課題解決を後押しする大きな力になると、多くの人が気づきはじめているのです。

自分の暮らしも豊かになって、かつ環境や社会もよくできるお金のつかい方。素敵な響きだけれど、どうしたらそんなお金とのつき合いができるんだろう? 「やさしいお金の流れ」をつくろうと行動する専門家、eumoの新井和宏さんにヒントを聞きました。

そのお金、誰に払っていますか?

あるときは街中のコンビニで。また、あるときはスマホの画面上で。私たちは日に何度もお金を払い、物を購入します。そのお金が、最終的に誰のもとに行きつくのか、あなたは考えたことがありますか? たとえば洋服なら、一方は環境にも従業員にもやさしいメーカーで、他方は在庫の大量廃棄や劣悪な労働環境などが問題視されるメーカーだったならば。あなたがお金を出して応援したいのは、どちらの企業でしょうか?

私たちがお金を払う行為は「どんな社会にしたいか」を選択し、一票を投じることに等しいのです。環境にも人にもやさしい「いい会社」が多くの票を集めれば、世界の経済も社会も豊かになります。応援すればするほど、暮らしやすい社会となってひとりひとりに還元されるのです。誰も犠牲にしない持続可能なお金の流れは、個人の応援からはじまります。何を選択するかは自分次第。ならば、幸せになれる関わり方を選びませんか?

「円=縁」。お金からはじまる豊かな関係

金の切れ目が縁の切れ目。このことわざが示すように、元来お金には関係性を「切る」性質があります。「決済」という言葉も同じ。お金を払った瞬間に「ご縁」は解消されてしまう。そうではなくて、むしろ「お金の切れ目が縁のはじまり」になれば、もっと楽しくなると思いませんか?

農家や漁師がインターネット上に直接出品する「ポケットマルシェ」では、すでにそれがはじまっています。写真つきのコメント欄で、届いた野菜の感想を直接伝えられる、顔の見えるやりとり。リピーターにオマケの野菜を入れはじめると、相手もまたお返しの気持ちで何度も購入するようになる、そんな健全な「えこひいき」。お金を通して、生産者と消費者が強く結びつく豊かな関係は、便利さと効率をやみくもに追求する社会が失ったものでしょう。ご縁をつくるお金のつかい方は、自らを幸せにします。お金で割り切って面倒を排除した、希薄な関係からは何も生まれないのです。

お金でつくる「ありがとう」の循環

この社会は持ちつ持たれつの、役割分担で成り立ちます。そこで大切なのは「ありがとう」の気持ち。たとえば野菜ひとつとっても、買う側は「つくってくれてありがとう」。つくる側も「食べてくれてありがとう」。しかしそのとき、一方がお金を払うから、お金をもらうから、それを「当然だ」と考えるなら、双方の関係は分断し、やがて心とともに社会が腐りはじめます。

残念ながら現在の資本主義はこうした分断が起きやすいシステムです。テーブル上のお金を奪い合い、手元のお金の量で勝ち負けを決めるゲームでは、誰もがお金を貯めて渡したがらない。ですが、その場に手元のお金を手放す人が現れたなら、その人が「ありがとう」の気持ちで消費や投資、寄付を通して「ギフト」するならば、ゲームの流れは変わります。応援したい人や会社にギフトする習慣が広がれば「ありがとう」の循環が加速し、誰もがギフトされる側になる。そんな心地よい社会をつくりませんか。

自分の価値観で使うお金を選ぶ

「お金を選ぶ」と聞くと違和感を抱くでしょうか。たしかに一見、日本では「円」以外の選択肢はないように思えます。では、ポイントやマイルは? すでにお金と同様にそれで物を買ったり、旅行に行ったり、投資の資金にしたりしていませんか。そう考えれば事実、お金はひとつではないのです。

アマゾンや楽天など、何らかのECモールのポイントを「お金」として活用しているなら、あなたはすでにそのコミュニティの経済圏に属しています。せっかくなら自分の価値観に近い場を選び取りたいと思いませんか。属する人々が共感しリスペクトし合うコミュニティでは、そこに関係性が生まれ「ありがとう」の循環が起こる。私自身も、そんな場を目指して共感コミュニティ通貨「eumo」を始めました。いまの資本主義に合わないなら、別の場を選べばいい。そのコミュニティは多種多様であっていいし、むしろ、そのほうが社会はより豊かになるのです。

お金と幸せの関係

私たちは「お金があれば幸せになれる」わけではありません。お金はあくまで、その手段のひとつ。現在の社会システムでは多くの人が、お金がなくては生きられないと不安を抱き、消費をあおることでしか経済は成り立たないと思い込まされています。しかし、このまま大量生産・大量消費をつづけても、人々は幸せにはなれません。

ハーバードメディカルスクールによる75年以上の追跡調査によれば、人間の幸福に必要なものは「良好な人間関係」だとわかっています。すべては関係性。それなのに現代では便利と効率を追求した結果、そうした関係性を奪うお金のやりとり、まさに前述の通り「決済」が主流となったわけです。人生を本当の意味で幸せにしてくれるのは、素晴らしい人と出会うことでしょう。お金をつかえばつかうほどにワクワクするようなつながりが生まれるならば、きっとそのお金のつかい方は「正しい」のです。

PROFILE

新井和宏
あらい・かずひろ/外資系資産運用会社で働いていたとき、金融のあり方に疑問を抱き、仲間と鎌倉投信を創業。投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍。退職後の2018年に、共感資本社会の実現を目指して、株式会社eumo(ユーモ)を設立。eumo.co.jp

●情報は、FRaU SDGs MOOK Money発売時点のものです(2020年11月)。
Illustration : Tadashi Nishiwaki Text : Saori Takagi Edit : Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

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