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ユニークな視点から「世界と社会を良くする」若者のアクション
ユニークな視点から「世界と社会を良くする」若者のアクション
COLUMN

ユニークな視点から「世界と社会を良くする」若者のアクション

古き日本から学べるサステナブルな知恵を取り上げているNIPPON温故知新。
「新しい日本の動きを知る」企画で3回に亘り、日本の若い世代(学生~25歳くらい)が取り組んでいるサステナブルな活動のリアルに迫ってまいりました。
今回の第4回は少しユニークな視点をもって活動している3名をご紹介します。

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真のサステナビリティを学びにデンマークに渡るカレー屋大学生

最初にご紹介する菅原瑞季さんは、食と農に携わり、スパイスカレーのお店を営む現役大学生です。その活動の裏側にはモノづくりの背景にある環境負荷に対する気づきがありました。

――今どんなことをやっていますか?

ThinkESGというWebメディアでESG関連ニュースを担当するライターのインターンをしています。ThinkESGではESGのE(環境問題)の部分に特に着目し、基礎知識、最新のニュースの発信をしています。また、現在デンマークへの留学に向け大学を休学しているため、地元茨城の有機農家さんや、滋賀県の自然農法の稲作のお手伝いをしたり、間借りでスパイスカレー屋「Rummy Curry」を営んだりして「食と農」に携わる活動をしています。

――なぜその活動をしているのですか?

5年間ユニクロでアルバイトをした経験から、服の背景にある大量生産・大量消費、環境負荷の現実を知り、改めて自分たちが行う「消費」に疑問を持ち、モノづくりの背景を考えるようになったからです。

5年前の私にとって、安くて可愛いものが手に入るファストファッションは魅力的でした。しかしその商品が、どこで、誰の手によって、どのようにして生まれたのかを知らずにそれらの服を良しと思うことはあまりにも恐ろしいことなのではないか、自分が知らないうちに誰かを何かを苦しめることに加担しているのではないか、それは嫌だと強く思うようになりました。同時に、モノの背景を知ることはその先長く使うこと、大事にすることに繋がるのではとも考えるようにもなりました。そこで、まずは自分たちの日常のモノ消費に真摯に向き合おう!! という想いから、上記の活動を行っています。

カレー屋の経営は、自分自身が食を提供する立場になり、カレーというツールを通して「消費」について皆さんと一緒に考える場を作りたいと思って始めました。こちらは既に店を開いたことで食を通して地元の方のお話を紹介したり、実際に自分が農業をやってみて感じたこと、そこで収穫された野菜をはじめ、お店でお客様が口にしているものの成り立ちのストーリーなどをお話しすることができています。

この活動を通して、服作りも農業も、自分たちを作るものは土からできていることが多いことに気づきました。持続可能な土作りを学ぶことが今後の自分にとって必要な選択である気がしています。

――今後はどんな活動をしていきますか?

対話を通して、自然と共存する人間の生き方を学ぶフォルケホイスコーレ(学校)に行ったり、環境負荷の少ない暮らし方を求める人々が創るコミュニティ「エコビレッジ」で実際にボランティアとして滞在したりして、自然環境との向き合い方を見つめ直す留学を実践したいと考えています。

プロフィール
菅原瑞季
1999年茨城県生まれ、昭和女子大学人間社会学部現代教養学科4年。現在、ThinkESGでライターのインターンとして働きつつ、対話するカレー屋 「Rummy Curry」を間借りで営む。ユニクロでの5年間のアルバイト経験から服の生産背景にある労働問題や、環境問題について注目するようになる。日本エシカル協会エシカルコンシェルジュの称号取得後、省庁などに政策提言を行った気候若者会議に参加。春からデンマーク・フォルケホイスコーレへの留学に向けて準備中。

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Rummy Curry

地球の呼吸を感じて自分を感じ、写真を通して自分を知り、優しさを知っていく人生が、今の私の地球との向き合い方

次に紹介するのは写真を通して環境問題・地球温暖化と向き合う藤田真奈さんです。

――今どんなことをやっていますか?

日常の生活の中や、自然いっぱいの中に入った時に何か温かいと感じたもの、心が動いていると感じた時にカメラを通して、その一瞬にシャッターを切るということをしています。

また、大学1年生の頃から本格的に登山を始めたため、北アルプス縦走をして山に籠ったり、関東圏を中心に山に登ったりしています。生死を感じるその環境で命の尊さ、生きていることの素晴らしさを身体全体で知り、「生きるということ」を山を通して学んでいます。

――なぜ今その活動をしているのですか?

シンプルにまとめると、それが自分の中でとてもやりたいことだから。写真を通して、自然から受け取ったものを表現していきたいと思ったからです。

小学生の頃から天気を見ることや、空や雲を眺めることが好きだったり、毎年夏に家族でキャンプをしたりしたことがきっかけでした。その頃から「環境問題」「地球温暖化」というワードに自然と興味を持ち始め、大きくなるにつれて、自分にもそれらに対して何かアクションを起こせないのかなと思っていました。

そんな時に知り合いが東京・渋谷で、気候マーチをしている人がいることを教えてくれました。それがきっかけで、Fridays For Future JAPANの設立者である井上寛人さんや、それ以外にも今も各方面で活躍している方々と繋がることができ、埼玉にもう1人同じ仲間がいると繋げていただき……2019年12月に地元の駅で初めてスタンディング型のアクションであるFridays For Future Saitamaを立ち上げ、活動を始めました。

それからもオーストラリアで起こった大火災を支援する募金をしたり、SNSで現在の地球で起きていることについての投稿を発信したりしたものの、知れば知るほど、「人間がこの星に来なかったら良かったのでは」とか、「人間が地球にいるから環境問題という概念を生み出しているだけであって、そもそも本当に環境問題は起こっているのだろうか」など、疑問に思うことが増えていきました。その結果、私は何かを訴えたいのではなくて、地球と、人と、共に歩むことがしたいのだなと気づき、大学1年生の頃から始めたカメラを本格的に手に取り、日常に溶け込み目の前で起こる現象を切り取っていくようになりました。

――今後どんな活動をしていきますか?

引き続き、自然の美しさや、今の地球のリアルに対してシャッターを切ることで、その写真を見た誰かが地球と環境に対し、これまでより少しだけでも優しい選択をしようと思えるようなきっかけを作っていきたい。そして、自分の生き方、毎日の生活こそを磨いていきたい。それが問題といわれているさまざまなものを良くする一番の解決策であると思っています。

また、ご縁あって訪れた標高500メートルの山の上に突如現れる、村全体の建物が紅に染まっているいる街である「岡山県の吹屋ふるさと村」という場所は今、高齢化と人口減少が進んでおり、このままでは村が存続していかない可能性があります。だから、人の温かさが感じられ、物々交換が行われたり、都会に住んでいてはかんじられない村全体の一体感を感じられたり、ふとしたときにいつの時代にいるかわからなくなるが、心地がいいこの吹屋を次世代にも繋いでいきたいと思っているので、微力ながらもそのための行動を起こしていきたいです。私自身も、いつかこの地に多拠点生活の一つの帰る場所として、家を持つ予定でいます

プロフィール
藤田真奈
1999年生まれ、現在は立教大学経済学部4年生。2020年以降、オンライン授業を活用して、三重に住んだり、東大阪市にあるTNK BASEという同世代の面白い人たちが集まるシェアハウスを拠点にして日常を共にする生活をしたり、知り合いのいる石川県の中能登町と広島県を主に行き来しながら生活したりしていた。その途中、TNKの住人の一人に吹屋を勧められ、2021年7月に初めて訪れた時、その土地と、村の方々の温かさに触れて、惚れ込む。その後、吹屋ふるさと村で、写真展「くじら」を開催。テーマは「地球の美しさ・愛」。

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吹屋ふるさと村、ぜひ訪れてみてください!
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エシカルファッションに貢献したいから、一度離れてみる

最後にご紹介するのは、将来エシカルファッションに貢献するために、現在他の領域で活動している錦織史哉さんです。

――今どんなことをやっていますか?

大学を卒業し、Gap year(入学前や卒業後などに社会活動を行う猶予期間のこと)を利用して博報堂UoC(以下UoC)という研究機関とSNSマーケティングのベンチャー企業の2社でインターンをしています。このUoCは“創造性で社会を変える”をテーマとした研究機関であるため、私が在学中に学んできた「エシカルファッション」以外の社会問題を考えるきっかけになっています。またSNSマーケティングの会社では、“盆栽”という日本文化の支援をお手伝いしています。芸術・自然・後継者不足・高齢化・日本文化など幅広いジャンルに跨がる商材の販売促進及び、文化の継承に尽力しています。

――なぜその活動をしているのですか?

日本で学びを深めるには限界があると感じ、ドイツに留学をし知識を蓄えていきました。しかし学びを深めれば深めるほど、研究当初に思っていた起業の夢は消えていっていました。理由として、起業を通してアパレル産業の問題を解決するがとても困難であると思ったからです。例えば、エシカルファッションの研究を生かしてエシカルな素材を使ったアパレルブランドを作ったとします。しかし、このブランドコンセプトが届く層は既に「エシカル」の言葉を知っている人に限れられてくると思いました。また、今の自分にそれ以上の層に届かせる力もないと考えました。

そこで、一度本筋から離れることにしました。インターンをすることでマクロな視点で他の社会問題やお金の動きなどのビジネスサイドに触れ、また、他にもさまざまな経験も積むことで、将来的にエシカルファッションに貢献していければと思っています。

――今後はどんな活動をしていきますか? 参加できるイベントやコミュニティ、購入できる商品などあれば教えてください。

二つあります。一つ目は、ファッションに関する活動です。留学では文献からのインプットが多く、アウトプットとして予定していた海外インターンがコロナでなくなってしまいました。そこで、今後は親戚の繊維工場でのお手伝いや、知り合いの繊維メーカーのインターンなどを通して多角的にファッションの経験を積んでいきたいと考えています。

二つ目は、何らかの形でエシカルファッションの発展に貢献していきたいと考えています。現在、エシカルファッションに対してまだ具体的な活動ができていません。大きなことをやろうと最初に考えてしまい、一歩目がとても重くなってしまいました。そこで、まずは小さなことでもいいので、一つ目の活動を通して得た経験を活かしてエシカルファッションの拡大に貢献していこうと思っています。

プロフィール
錦織史哉
1998年千葉県生まれ。東洋大学国際学部国際地域学科卒業。博報堂UoCに出向インターン。並行して、まじすけ株式会社でもインターン中。大学在学中はファストファッションのアルバイトからエシカルファッションに興味を持ち、ドイツに留学。帰国後は、BS12chの「夢らぼ」に出演。

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全4回にわたり、10名の日本の若者たちの取り組みをご紹介してまいりました。

今回お話を伺いながら、私も地方の食と農、地域活性化や六次産業化を支援する仕事へと飛び込んだのも同じくらいの年頃だったのを思い出しました。

そして、十人十色のお話を伺いながら、今自分にできることから「世界をほんの少しでも良くしたい」という気持ちが、過去の私も含めてそれぞれのライフスタイルや仕事を選択する原動力になったことが共通点のように思います。

大量生産・大量消費社会の裏側で起きている地球環境への負荷や労働者の問題、食糧問題、農業や伝統工業の生産者の後継者不足、近代化の営みの中で膨れ上がってきた問題に、近年ようやく社会が正面から目を向ける時代になったように思います。

ですが実際に自分事になって考えた時、

サステナブルなアクションってなんだろう?
自分は何をしたらいいんだろう?

そのように、どこかハードルが高く感じたり、他人事のように感じてしまったりすることがあるかもしれません。

今回インタビューに協力いただいた若者たちは、そこに誰かが決めた正解や王道はなく、自分の興味や偶然出会ったきっかけ、好きなものなど、小さなことからでも、日常の生活の中で誰もがアクションを起こせると教えてくれました。

大切なのは、自分が住んでいるコミュニティや地域、国や地球に今何が起きているのか、まずは身近なところから関心を持つこと。不自然であると感じたら無視せずに疑問を持つこと。知る・気づくだけでも、まずはアクションの一歩になります。

今回紹介した10名の方々の話を聞いたり仲間に加わったりすることも、一つの選択肢になるかもしれません。

若者たちの「Do well by doing good(いいことをして世界と社会を良くしていこう)」なアクションはまだまだ始まったばかり。これから彼らがどんなムーブメントを起こしていくのか、とても楽しみです。

守岡実里子(もりおか まりこ)

サステナブルフードジャパン代表
日本食文化研究料理家/
ローカルフードプロデューサー

大学時代にマクロビオティックで両親の病気を克服した事がきっかけで、日本の伝統的な食文化に興味を持ち食の世界へ。地方創生、農畜水産業の6次産業化支援を専門とするコンサル会社にてフードコンサルタントとして勤務し、2013年に独立。全国の地域の食のブランディングや商品開発、飲食店、旅館のプロデュースなど、地方の生産者支援に携わる。マクロビオティックや日本の食養生、江戸料理を専門に学び「和食から美と健康、サステナブルな社会を叶える」を生涯のミッションに、心と身体、地球に優しい日本の食習慣術を伝えている。日本酒好きが高じて唎酒師の資格を取得。

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