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北の大地で出逢うオホーツクの流氷と地球温暖化
北の大地で出逢うオホーツクの流氷と地球温暖化
COLUMN

北の大地で出逢うオホーツクの流氷と地球温暖化

日本文化を温故知新し、日本人のサステナブルな生き方の知恵を、現代のライフスタイルに取りいれるコラム『NIPPON温故知新』。今回は、オホーツクの流氷が伝える地球温暖化をテーマにお届けいたします。

2020年から世界全体の平均気温の上昇を抑える国際的な枠組み「パリ協定」の運用が始まり、すべての国が温室効果ガスの排出量の削減に取り組み始めました。

パリ協定では、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑えるよう努力を続けることを目的に掲げています(パリ協定第2条)

温暖化というとあまり私達の日常の中で影響を感じることがありませんが、今回北海道を旅する中で、極寒の北の海では地球温暖化の影響がはっきり見られることを知りました。
それは網走~知床半島のオホーツク海沿岸に押し寄せる流氷です。

オホーツク沿岸部の流氷観光は大切な観光資源

北海道のオホーツク海沿岸は、1月から3月にかけて白い流氷が海に広がります。
流氷の季節に網走に行くと、砕氷船が改造された流氷の中を航行できる観光船に乗り流氷クルーズを楽しむことができます。
冬の間流氷で漁業ができないオホーツク海沿岸部の人にとっては、流氷は大切な観光資源となっています。
近年では1月から3月の流氷シーズンにオホーツク地方に毎年150万人前後の観光客が訪れているといわれています。

北海道は流氷にとっては南の楽園だった

網走では、オホーツク流氷館と北海道立北方民族博物館を訪れました。
この二つの博物館を見ると、網走~知床半島は、日本の北の果ての地でありながら、もう一方で北方地域の大陸からつながるオホーツク海沿岸部の文化圏であることがよく分かります。
かつてサハリンから千島列島にかけてのオホーツク海を囲む地域ではオホーツク文化と呼ばれる独自の文化が発展していました。

オホーツク流氷館より

そして、流氷が辿り着く最後の南の楽園、それが知床半島です。
私達日本人から見ると北海道のオホーツク海沿岸部は最も寒い北の大地。
ですが、オホーツク全域から見ると北半球で流氷が見られる最も南の地域でした。
この流氷が見られるのが1~3月。

しかし、近年は流氷がどんどん減っていて最盛期の2月でもほとんど見られないことも珍しくないといいます。
オホーツク流氷館のガイドさんのお話では、30年後には網走で流氷が見られなくなるかもしれないのだそうです。

流氷は平均気温が4度上昇すると発生しなくなると言われています。
気象庁は1994年に「50年後にオホーツク海では4度気温が上昇する」と発表しました。そうなると流氷はもう見られなくなる可能性があるのです。

流氷に生息するクリオネ

流氷が運ぶプランクトンは海の幸の大切な栄養

流氷の役割は実は観光資源だけではありません。北海道の美味しい蟹や魚介類にも影響しています。
知床では流氷とともにもたらされる大量のプランクトンが基礎となり、海、川、森の各生態系にわたるダイナミックな食物網が形成されています。
流氷の底は植物プランクトンの格好の生育場となり、春、流氷が溶け始めると植物プランクトンは爆発的に増殖します。知床ではそうした増殖がオホーツク海の中で一番早く起こります。
植物プランクトンは、それを餌とする動物プランクトン、さらにそれを食べる魚類や海棲哺乳類、陸上の生物にまでつながる食物連鎖を支えています。
この豊富なプランクトンを食べて美味しい蟹や魚貝類が育っているのです。オホーツクの海の幸にとって、流氷はとても大切な存在だったのです。

日本にいてもなかなか旅するご縁がなかった網走・知床半島。

北海道で出会った流氷の物語からは、日本のその向こうにある北の国々との文化のつながりや、オホーツクの流氷から生まれる小さなプランクトンの命、その食物連鎖の先に私達が食べている海の恵み、そして私達人間がいることを教えられました。
今回の旅を通して、地球温暖化を身近に感じ、日常の小さなことからでも地球の未来に対してできるアクションを見つけていきたいと思います。

守岡実里子(もりおか まりこ)

サステナブルフードジャパン代表
日本食文化研究料理家/
ローカルフードプロデューサー

大学時代にマクロビオティックで両親の病気を克服した事がきっかけで、日本の伝統的な食文化に興味を持ち食の世界へ。地方創生、農畜水産業の6次産業化支援を専門とするコンサル会社にてフードコンサルタントとして勤務し、2013年に独立。全国の地域の食のブランディングや商品開発、飲食店、旅館のプロデュースなど、地方の生産者支援に携わる。マクロビオティックや日本の食養生、江戸料理を専門に学び「和食から美と健康、サステナブルな社会を叶える」を生涯のミッションに、心と身体、地球に優しい日本の食習慣術を伝えている。日本酒好きが高じて唎酒師の資格を取得。

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