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新しいへしこをRe designする糠漬けへしこクリエイター
新しいへしこをRe designする糠漬けへしこクリエイター
COLUMN

新しいへしこをRe designする糠漬けへしこクリエイター

日本文化を温故知新し、日本人のサステナブルな生き方の知恵を、現代のライフスタイルに取りいれるコラム『NIPPON温故知新』。今回は京丹後のへしこ工房HISAMIで糠漬けへしこクリエイターとしてへしこ作りをしている今出兄弟にお話を伺いました。

HISAMI KYOTO

公式サイト

へしこは魚を糠床に漬ける北陸~日本海沿岸部の伝統的な保存食。そのなんともいえない旨みは日本酒のあての珍味として今なおファンがいます。しかし、時代の変化と共にへしこを作る人も食べる人も少なくなっています。

京丹後でへしこ作りをされているへしこ工房HISAMIさんでは、現社長であるお父様の時代から新しい形のへしこ作り「浅漬けへしこ」にチャレンジしてきました。

へしこの概念を変えた伝統の浅漬けへしこ

実はHISAMIのへしこは、70年前からひいおばあちゃんが作り続けていた今出家の伝統の味。かつて市場で働く人達に自ら作ってふるまい愛されていたへしこなのだそうです。

その味を現社長が再現したのがHISAMIの浅漬けへしこでした。その特徴は塩分量。通常のへしこよりも塩分を抑えたへしこはふっくらジューシー。地域の旅館でも扱いたいという声が増え、お土産としても売上を伸ばしてきました。

「糠漬けをリデザインする」今出兄弟の新しい挑戦

へしこ工房HISAMIの2代目である今出兄弟ですが、兄の昌宏さんは料理人として京都や東京で修業し、弟の健太さんは東京でパティシエとしてそれぞれ働いた後、共に京丹後に戻り、今は現社長の伝統のへしこを超える新しいへしこ作りにチャレンジしています。

浅漬けといってもやはり塩味の強いへしこは、ご飯のおともや酒のあてとして楽しまれることが多く、焼き魚のようなおかずとしては食卓に上りません。そこで今出兄弟は考えました。

「冷蔵庫が普及し保存の必要がない現代、保存するための塩味は必要ないのではないか」「できるだけ減塩し、糠床に漬け込むことで魚が美味しくなる“旨み”の味だけにすることで、もっと焼き魚として食べられるような美味しい米糠の発酵食品にできないだろうか」「へしこは珍味として親しんでくれる人もいるけれど、糠臭さが苦手で敬遠する人もいる。若者や外国人でも美味しく食べられる糠漬けができないものか」

これらの問題点を改善することで、へしこが現代の食卓のシーンにもっと身近に親しまれる商品になるのではないか。そう考えた今出兄弟は新しいへしこを作り始めました。目指したのはへしこと西京漬の中間のようなハイブリッドな魚の糠漬けです。

米と4種の熟成発酵の旨み、未体験の糠漬け「旨米漬け」

今出兄弟が新たに作リ出すへしこは、糠床からこれまでのものとは異なります。使用するのは米糠の他に米麹や白ワインなど4種類の発酵食品を加えた旨みたっぷりの糠床。塩分は従来品の1/4までカットしています。

一度ばらばらにした糠と米の部分(麹)をまた合体させたことで、さらに増えた米の旨みがたっぷり詰まっていることから「旨米漬け(うまいづけ)」と名付けられました。

塩味は薄く、ふっくらと魚の脂(あぶら)もジューシーに焼き上がるため、焼き魚としても美味しく食べられます。香りがよく糠くささも一切ない、まさに奇跡のへしこと言ってもいいほどの味わいです。

糠漬けへしこクリエイターとしてのこれからのビジョン

新しい糠漬け作りを通して、糠漬けの可能性を広げることをしていきたい。糠漬けを世界に発信し、次世代に残す役割を担いたい。そして、糠漬けづくりで地域に貢献したい。そう今出兄弟は話しています。

「糠漬けは腸内環境を整えてくれるヘルシーな食品であり、廃棄してしまう糠を使うサステナブルな食品でもあります。また、糠漬けは規格外品の食品を上手に使うことができます。京都にも京鰆(きょうさわら)というブランド魚があるけれど、全国的にはあまり知られていません。また、サイズが小さいものはブランド魚として認定されないので、なかなか価値が上げられません。そうした魚で新しい旨米漬けを作って地域を盛り上げていきたいと思っています」。

今、糠漬け界で注目すべき今出兄弟の挑戦は、まだまだ始まったばかり。
日本の大切な伝統食「糠漬け」。その良さを新しい技術で革新していけば、伝統を残していくことに繋がる。私たちもそうした想いが込もった食品を美味しく食べることで、生産者の応援と伝統の継承に繋がる。そんなサステナブルな循環が、日本の伝統を守っていくことに繋がるのではないでしょうか。

守岡実里子(もりおか まりこ)

サステナブルフードジャパン代表
日本食文化研究料理家/
ローカルフードプロデューサー

大学時代にマクロビオティックで両親の病気を克服した事がきっかけで、日本の伝統的な食文化に興味を持ち食の世界へ。地方創生、農畜水産業の6次産業化支援を専門とするコンサル会社にてフードコンサルタントとして勤務し、2013年に独立。全国の地域の食のブランディングや商品開発、飲食店、旅館のプロデュースなど、地方の生産者支援に携わる。マクロビオティックや日本の食養生、江戸料理を専門に学び「和食から美と健康、サステナブルな社会を叶える」を生涯のミッションに、心と身体、地球に優しい日本の食習慣術を伝えている。日本酒好きが高じて唎酒師の資格を取得。

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