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[from São Paulo]サンパウロのビーチクリーン 大作戦【後編】by Katsura ishihara
[from São Paulo]サンパウロのビーチクリーン 大作戦【後編】by Katsura ishihara
COLUMN

[from São Paulo]サンパウロのビーチクリーン 大作戦【後編】by Katsura ishihara

世界のサステナブルな情報を紹介するfrom the WORLD。ブラジルからはサンパウロ在住の石原桂さんが、前編に引き続きサンパウロのビーチクリーン大作戦を紹介。後編では学校でおこなわれているワークショップの様子や、日本の技術を活かした廃棄魚を食品にする試みについてもレポートしています。

前編はこちら

海を守ることを、小さい頃からの習慣に

ビーチや島周辺を囲む入り江には、ウミネコやシギなどたくさんの野鳥やピンクイルカ、ウミガメが生息しています。ここ数年クジラやウミガメの死骸が相次いでビーチに打ち上げられ、住民のあいだでもショッキングな話題になっていました。その死因と海洋ゴミとの因果関係を知ってもらい、ゴミを資源に変える大切さをおとなと一緒に子どもも学びます。

分別以前に、まずゴミを「ちゃんと捨てる」

そもそも日常生活から出るゴミを資源として見るのは、実は難しいことです。今までずっと一つのゴミ箱に捨てていたものの素材を見極めて分けるには、少し練習が必要かもしれません。ビン、カン、ペットボトル、プラスチック、電池、燃えるゴミ、燃えないゴミなど日本では当たり前になっているゴミの分別は、ブラジルではまだまだ普及していません。ゴミ箱に捨てることすら当たり前ではないのです。そこで、小さい頃からの習慣になるよう、子どもたちに学校教育の一環として身につけてもらうことが、これから先の環境美化対策へのいちばんの近道となりそうです。

廃物を利用して、カラフルな看板や楽器に

ワークショップで手作りされた資源ゴミ入れの表示板は、誰の目も引く子どもたちの力作です。ビーチに設置するため廃材を利用した標語の看板も作りました。デコレーションが得意なブラジルならではのカラフルさで、わいわいみんなで作り上げた様子が思い浮かびます。ワークショップでは資源ゴミで回収された空きビンやペットボトルを使ってインテリアや棚、サーフボードや楽器などの遊び道具まで作るため、ゴミが素材に生まれ変わったことを実感することができます。「いま自分の手の中にあるゴミをどう捨てるのか」を意識することで大好きな海とサステナブルな関係になれるのだと、この活動から子どもたちはいつの間にか学んでいる気がします。

日本の技術で廃棄魚を食品に

生活ゴミのなかでも、海辺の地域ならではの困ったゴミがあります。なんと漁業で出るゴミがあるのです。遠洋のエビ漁船が、網にかかったエビ以外の雑魚をその場で海へ捨てています。いちど網で捕らえられた魚は弱っていて、多くの魚は海へ戻されても死んでしまい、ビーチに打ち上げられます。雑魚といっても地元の市場に並ぶ立派な食材。もったいないの極みです。そこで雑魚を海上に捨てずにとっておき、すり身加工をして魚肉ソーセージやフィッシュボールに変身させる試みが始まっています。この着眼は海産物加工研究で名高い、東京海洋大学の大迫一史教授の指導協力のもと行われました。さらに加工技術を深めるため、JICA四国と香川県の協力によりイーリャ・コンプリーダ市の職員を派遣し、現地でのすり身加工実習がなされました。魚の骨がなく食べやすいすり身食品は、子どもたちの学校給食に提供される予定です。ここでもきっと子どもたちはサステナブルな海や魚との共存を感じることでしょう。

※すり身加工品

また、お隣のカナネイア市ではカキやワタリガニの養殖が盛んに行われています。サンパウロ州で新鮮な生牡蠣が食べられる貴重な場所でもあります。その食後に山のように残る殻の多くはそのままゴミになり廃棄されてきましたが、最近ではカルシウム剤の原料として再利用されるようになりました。ビーチクリーン活動からつながるサステナブルな暮らしへのいざないが、サンパウロのビーチにも大きなうねりとして存在しています。

石原桂

ブラジル・サンパウロ郊外在住。日本移民100周年のお祝いムードに沸く2008年に渡伯。翻訳業の傍ら、コーヒー、スパイス、アマゾンハーブ、ヴィンテージ食器、キッチン用品などの品々を扱い、日本へ発信中。

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