編集者・藤本智士が最近買った「旅に持っていけるもの」「暮らしに溶け込むもの」
「買い物は投票だ」といいますが、何をどう選ぶのか、買い物の基準は人それぞれ。気になるあの人は、どんな視点で選択するのでしょうか。編集者の藤本智士さんに、最近買ってよかったものを聞きました。
つかい捨てが好きじゃないので
永く一緒に暮らせるものを
秋田県など、地方での仕事が多い藤本智士さん。もの選びにおいて、「旅に持っていける」という視点を持つと、コンパクトでムダがなく、暮らしが軽やかになると話す。最近買ってよかったのは、尾州で織られた100%ウールのTシャツ。
「ウールは吸湿性が高く、かつ乾きが早くて汗の臭いがつかないと聞き、半信半疑で購入したものの、本当にそのとおり。旅ばかりしている僕は、真夏の旅でもこのTシャツ2枚しかもっていかず、ホテルで毎晩、裏返して干しローテーションでつかいます」
もうひとつは高知県の「セブンデイズホテル」で、佇まいに惚れ込んで買った箸。
つかいやすくて暮らしにすっかり溶け込んでいます。安価な塗りの箸を剥げさせては買い替えてを繰り返していた僕にとって、この子はこの先もともに永く暮らしていく予感」
「糸と色」の、お下がりスリーブ
毛織物の産地、尾州で織られる100%ウールのTシャツ。
「尾州では、糸や生地をほぐし、わた状に戻して再び撚糸する再生ウール『毛七』の文化が60年以上続いています。ウール100%という単一素材のTシャツは、いつか着古したあとの再活用も見えていて、そこも僕は気持ちがいいのです」
下本一歩さんの箸
筒のまま燻製された竹でつくられた箸。
「燻製した竹は抗菌作用がより高まるそうで、カビや虫にも強く、強度も増すとのこと。僕は左利きかつ、お箸の持ち方がかなりヘンテコスタイルなのですが、先が細くスマートなこのお箸のおかげで、豆だろうと米粒だろうと安定感たっぷりにつまめるようになりました」
PROFILE
藤本智士 ふじもと・さとし
編集者。有限会社りす代表。雑誌『Re:S』『のんびり』編集長。著書に『魔法をかける編集』(インプレス)、『風と土の秋田』(リトルモア)、共著に『Baby Book』(コクヨ)、『アルバムのチカラ』(赤々舎)ほか、手がけた書籍多数。「マイボトル」という言葉の生みの親。
●情報は、FRaU2023年1月号発売時点のものです。
Illustration:Takashi Nakamura Text & Edit:Chihiro Kurimoto
Composition:林愛子