東北スタンダード・岩井巽が最近買った「いいもの」
「買い物は投票だ」といいますが、何をどう選ぶのか、買い物の基準は人それぞれ。気になるあの人は、どんな視点で選択するのでしょうか。東北スタンダードディレクターの岩井巽さんに、2022年、買ってよかったものを聞きました。
つくられた背景がよいものでも、
生活にマッチしないなら買わない
ものづくりが大好きで、DIY、裁縫、料理など何でも自分でやってみるという岩井巽さん。自分でつくった経験があるからこそ、ものの背景を意識するように。最近買ったのは、がま口と南部鉄瓶。
「恩師の教え『よきデザイナーはよき生活者であれ』の言葉のもと、自分の生活に役立つもの、実際につかうものを選びます。丁寧につくられたものをしまっておくのはもったいないし、買う動機が社会貢献だけだと、作り手の技術力や努力が置いてけぼりになりますから」
「と革」の猪のがま口
鹿、熊、猪など、人間に駆除された動物の革を仕立てるブランド。
「新品ですが、祖父母の家にあった印鑑入れのようで淡い記憶が蘇りました。店主の高見澤篤さんが、口金を製造する下町のおじいちゃんに毎日タバコとコーヒーを差し入れて仲よくなったというエピソードもいい」
「南部鉄瓶 紅蓮堂」の鉄瓶「日和」
岩手県盛岡市の鉄瓶工房。
「鉄瓶には工業生産と、手仕事による生産があり、後者の職人は盛岡市内でも数人といわれています。作家の葛巻元さんの謙虚なお人柄に惹かれて、ついつい紅蓮堂の鉄瓶に手が伸びます。職人から直接購入すると、つかうたびに人を思い出せていい」
PROFILE
岩井巽 いわい・たつみ
東北の伝統工芸品と、新たな東北のスタンダードとなりえる商品をセレクトする東北スタンダードのディレクター。工芸家とのプロダクト開発やバイイング、ローカルデザインを軸に活動。最近では青森から人と動物の関係を見直すブランド「GOBU|五分」をローンチ。
●情報は、FRaU2023年1月号発売時点のものです。
Illustration:Takashi Nakamura Text & Edit:Chihiro Kurimoto
Composition:林愛子