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中川大志「誰かがやらなきゃいけないから、僕がやるんだよ」
中川大志「誰かがやらなきゃいけないから、僕がやるんだよ」
VOICE

中川大志「誰かがやらなきゃいけないから、僕がやるんだよ」

ここ数年でSDGsの認知度はぐっと高まり、アクションを起こしている著名人もたくさんいます。彼らはどのような社会課題について問題意識をもっているのでしょうか。今回は、俳優の中川大志さんに話を伺いました。

動物たちと一緒に
幸せに暮らしていくために

シャツ(ヒューミス/スエムピーアール) パンツ(ホワイトマウンテニアリング)

さわやかな笑顔がまぶしい中川大志さんは、シリアスなドラマからコントまで幅広いフィールドで活躍する若手実力派俳優。2021年公開の『犬部!』は、2010年に刊行されたノンフィクション『北里大学獣医学部 犬部!』(片野ゆか著)を原案とした映画で、青森県十和田市に実在した動物愛護サークルの物語だ。

「獣医大生たちが自主的に立ち上げた『犬部』は、行き場を失った犬や猫を保護し、里親の募集や譲渡会などの活動を行っているんです。映画では動物たちの命と向き合っていくうえで、動物から人間がもらっているもの、人間が動物たちにしてあげられることが描かれています。『犬部』の存在はもちろん、保護犬や保護猫の事情、獣医療の世界や保健所の歴史など、この作品を通してはじめて知る事実がたくさんありました。僕自身も小さい頃から犬を飼っていて、いまはフレンチ・ブルドッグと暮らしている。娘みたいな存在で、いつも癒やされています。仕事が終わると早く帰りたいなと思いますし、一緒に過ごせる時間はとても大切。あらためて、犬との暮らしや向き合い方についても考えさせられました」

動物たちとの共演はもちろん、彼らの名演技も見どころのひとつだ。

「ここまでがっつり犬たちと一緒にお芝居をするのは初めてだったので、そこが楽しみでもあり、課題でもありました。彼らは素直で嘘がつけないので、どれだけ心を開いてもらえるか。しっかりと関係性をつくれるように、撮影以外の時間も、犬たちが滞在しているところにお邪魔して、お世話の手伝いをさせてもらったり、一緒にお散歩に行ったりして絆を深めていきました。犬たちは演技ができない分、素直な反応や、僕たちと気持ちが通じた瞬間をカメラに収められたら、人間の演技以上に感動が伝わると思う。その一瞬を映像に切り取ることができたら、心が動くものになるのではないかなと。根気よく向き合ってつくっていきました」

中川さんは主人公・花井颯太の親友、柴崎涼介役を演じている。ふたりの関係性には共感できる部分も多かったという。

「颯太がハートで動くのに対して、柴崎は物事を広く奥行きを持って見られる人。自分にないものを持っている颯太をとてもリスペクトしている。時にうらましく思うこともあるけど、彼の存在が自分を強くもしてくれる。僕にもそんな親友がいるので、思い浮かべながら演じていました。卒業後に保健所に勤める道を選ぶ柴崎は、保護犬の置かれた環境や殺処分など、辛い現実を担うキャラクターでもある。『誰かがやらなきゃいけないから、僕がやるんだよ』という台詞が印象的でした。そういう人たちの思いや闘いがあって、少しずつ変わってきたいまがある。この作品が少しでも動物たちを取り巻く環境や、彼らの命に対する向き合い方を考えるきっかけになればいいなと思います。もちろん、純粋にさわやかな青春物語の一面も楽しんで欲しい」

コロナ禍で、自身の仕事についても考えさせられたと語る。

「極端に言うと、エンターテインメントがなくても、人の生死にはかかわりない。もっと他に必要なことがあるんじゃないかと考えたりもしました。労力もお金も時間もかけてつくるなら、そこに意味や意義がないとやっぱり寂しいですよね。たとえば、人の心を癒したり、希望を与えるものであったり、現実やメッセージを伝えたり。あらためて、責任を持って臨まなければと思いました。“なくてはならないもの”になったらいいなと。いま仕事ができているのは当たり前ではなくて、多くの人がかかわってひとつの作品をつくり上げることは、本当に奇跡の積み重ねであり、特別なことなんだと感じました」

オフの日はアウトドアで過ごすのが好きで、自然環境のことが気になるそう。

「釣りやキャンプには小さいときからずっと親しんでいました。自然に触れると頭も体もリフレッシュできる。一方で、実際に足を運んでみるとごみが落ちていたり、現実を肌で感じることも多い。その場所でのルールを守るのは最低限の話ですが、落ちているごみを拾ったり、自分なりにできることはやっていきたいですね。SDGsについてはまだまだ勉強中なのですが、とりあえずエコバッグは忘れないように玄関のドアに掛けてます(笑)。レジ袋が有料になり、ストローも紙になって、プラスチック問題も身近に感じるように。小さいことだけど、意外と継続するのが難しい。でも、ひとり一人が心がけていけば、大きな変化につながっていくんだろうなと思います」

PROFILE

中川大志 なかがわ・たいし
1998年東京都生まれ。2009年デビュー。2019年には「坂道のアポロン」「覚悟はいいかそこの女子。」(主演)で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では畠山重忠役を好演。ドラマ中で殺害され出番がなくなると、「畠山ロス」なる言葉がSNS上を賑わせた。

●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Photo:Tetsuo Kashiwada Styling:Takashi Tokunaga Hair & Make-Up:Sayaka Tsutsumi Edit:Naoko Sasaki
Composition:林愛子

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