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高山都「つくる人にも食べる人にも『いい食』って何だろう?」
高山都「つくる人にも食べる人にも『いい食』って何だろう?」
VOICE

高山都「つくる人にも食べる人にも『いい食』って何だろう?」

毎日の暮らしに欠かせない「食」と真摯に向き合う人が増えています。地域とつながり畑を耕したり、コロナ禍の飲食店を応援したり、食事から健康を考えたり。食に思いを巡らせ、未来を考える、モデルの高山都さんに話を聞きました。

台風のなかで見た農作業が
食への向き合い方を変えた

モデルとして雑誌や広告で活躍する傍ら、エッセイなどで日々の暮らしについて綴る高山都さん。元気なときも少し向かい風が吹くときも、包み隠さず本音で語る潔さ、自然体なライフスタイルが共感を集めている。なかでも毎日の食事づくりのようすを配信するインスタライブは近年のライフワーク。視聴者からの食にまつわる質問や悩みに耳を傾けながら、一緒に考える時間を大切にしている。

「20代の頃は仕事も少なくて、家計はカツカツ。毎日食べるものには気をつかいたいと思ってはいましたが、背に腹は替えられない。オーガニックや生産者の顔が見える食材を買いたいという気持ちがあっても、実際売り場に行くと『え、こんなに高いの⁉ ムリ、ムリ!』となって。どうしても『いかに安くたくさん買うか』を重視しがちでした」

30代で仕事が軌道に乗ると、少しずつ食に対する考え方と行動に変化が起きた。

「お財布に余裕があるときは、環境に配慮してつくられた食材や、生産者の姿勢に共感できるものを選ぶようになりました。実際に食べてみるとすごくおいしくて感動しましたし、生産背景について知るほど、ありがたいなと思うようになって。自分が食べる食材を誰かが一生懸命つくっているんだという、すごく当たり前のことに気がついたんです」

数年前、多忙な生活のなかで体調を崩した。そのとき支えになったのも食だった。

「薬剤師をしている友人から、知り合いの農家さんが無農薬・無化学肥料でつくっている玄米を分けてもらったんですけど、それを食べるようになってから体が軽くなって。食べ物ってすごいなと心底思いました。感謝の気持ちを伝えたくて、佐賀にあるその農家さんの田んぼを訪ねたのですが、ご夫婦で丹精込めて稲を育てていらっしゃって。実はお邪魔したのが台風の日だったんですけど、そんななかでも手作業で雑草をとったり、休みなく作業をされていて、こんなに大変なのか!って驚きました。現場を見て、あらためて頭が下がるというか、ありがとうございます、大切にいただきますという気持ちが強くなりました」

自分は続けられるかな? 
それぞれの歩幅で考えること

その体験以来、自分が「おいしい」と思った食材はできるだけ生産現場を見に行きたいと思うようになったそう。

「青山のファーマーズマーケットによく行くのですが、そこに出店していた農家さんのバジルが本当においしくて。お料理はもちろん、水出しでお茶にしたり、ブーケとして部屋に飾ったり。ハーブってこんな多様な魅力があるんだって教えてくれた存在なんです。あまりに好きすぎて、浜松にある畑にお邪魔したこともありました。生産者の方にお目にかかっていろいろな話を伺うのは刺激的ですし、誰かにおすすめするときにも、現地で見たこと、聞いたことを交えて話ができます。応援団といったら大げさですが、そんなふうにして、生産者さんのストーリーを伝えていけたらいいなとも思っているんです」

「環境にいい」ということは素晴らしいし、みんなが意識するようになればいいことはわかっている。けれど、それを人に押しつけてしまうのは少し違うかも、と高山さん。

「時間的、経済的なことも含めて考えると、いきなり100%エシカルな生活というのはできっこありません。大切にしているのは、自分が続けられることをコツコツとやること。たとえば有機野菜の定期便を頼んだとしても、私の場合は泊まりのお仕事があったりするので、きっと余らせてムダにしてしまう。だったら時間に余裕があるときに買いに行くほうがいいなと。そんなふうに、自分のライフスタイルに合わせた形で何ができるかを立ち止まって考えるようにしています」

毎日の食事づくりを発信していると、見ている人から「すごいですね」「私には無理かも」という率直な声も届く。

「20代の頃の私も、友人たちが迷いなくオーガニックなどの食材を選ぶ姿を見て、すごいな~、ムリだな~と思っていたので、その気持ちがよくわかるんです。正直、いまでも給料日の前は安さ重視になりそうなときもありますし(笑)。そんなときは、野菜に多く払ったぶん、いつも買っているテイクアウトのコーヒーはやめておこうとか、ほかで帳尻を合わせるようにするんです。本当に一歩ずつですが、そんなふうにして私自身、食に対する考え方が変わってきたので、これからも自分のペースで『つくる人にも食べる人にもいい食って何だろう?』ということを考えながら、実践していけたらいいなと思っています」

PROFILE

高山 都 たかやま・みやこ
モデル。1982年生まれ。雑誌や広告、ファッションカタログなどで活躍。ラジオ番組のパーソナリティやエッセイ寄稿、料理レシピ提案など幅広く活動する。近年はファッションブランドとのコラボレーションで商品開発にも力を注ぐ。趣味のランニングはフルマラソンを完走するほど。料理、ビューティ、ファッションなど、自身のライフスタイルを綴った著書『高山都の美食姿』1~4巻(双葉社)が発売中。

●情報は、『FRaU SDGs MOOK FOOD』発売時点のものです(2021年10月)。
Photo:Ayumi Yamamoto Hair & Make-Up:Akihiro Motooka Text & Edit:Yuriko Kobayashi

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