川邉サチコ「年を重ねると、おしゃれでかっこよくなれるわよ!」
美しさとは、限られた人だけが持っているものではありません。美しくあることに年齢、容姿、性別などは、なにも関係ない。美しさには正解も、基準もない。今回は、自分らしさを発信するビューティクリエイターの川邉サチコさんに、美について伺いました。
老化を悲観するのではなく
前向きに活かして心身を整える
「若くても『もうおばさんだから』なんて口にする人がいるけれど、人生100年といわれる時代で、この先もずっと『老化した』と思いながら生きていくの?」
長い間ビューティクリエイターとして多くの人を美しくする手伝いをしてきた川邉サチコさんは笑う。
「おしゃれでかっこいいと、メンタルまで変わってくる。キレイになろうとする人のお手伝いをするのが、いまの私のライフワークです。自分に自身が持てるようになると人生観まで変わるという事例を間近で見てきて、人間は年齢ではないと実感しています」
「高齢になったからといって、美しくあることをあきらめる必要はない」と川邉さんはいう。
「高齢者とは、人生を一生懸命に生きて経験を積み重ねてきた人たち。長い人生経験はその方の財産よね。誇りを持ってほしいと思います。この高齢化社会で、自分に自信を持って生きる人たちが増えたら、社会も明るくなると思う。私はプロのファッション、ビューティを手がける仕事を長年してきましたが、94年からは一般の方を健康で美しくするサロンを開きました」
サロンでの施術をはじめ、講演会などで全国をまわり、美のつくり方や考え方を伝えている。年齢はただの数字だと考えている川邉さんは、体の変化も前向きに捉えている。トレードマークとなったシルバーヘアも、そんな考えからはじまった。加齢とともに変わる体の変化を楽しんでしまおうと白髪染めをやめたことで、また自分に似合うものが見つかったのだ。
「シルバーヘアになってから、ヘアスタイル、メイク、着るものにも変化がありました。この髪色にしたからこそ、長い髪も楽しめるようになったんです。キレイな色の服やメイクも似合うようになっておしゃれの幅も広がりました。若い人からは「かっこいいですね」といわれます。シルバーヘアは若いときにはなかなか出せないこなれ感が出せる。老化による変化を楽しむのもいいものですよ」
年齢を受け入れつつも、健康を維持するための努力は惜しまない。
「老化を悲観するのではなく、それを前向きに活かすこと、心身を整えていくことが大切です。整えるという行為は時間やお金がかかるものだと続かないので、自分に合った簡単なことを持続するのがいい。私の場合は、天気がよい日の早朝の40分ウォーキングや、朝の寒冷二度洗顔、テレビを見ながらのヨガ呼吸法、週1回の水泳など、生活習慣に組み込む方法なので40年ほど続いています。心身を整えると、いまの自分の気分や健康状態がわかるので、変化を早期発見して対処できるのが大きなメリットですよ」
美しさとは、生き方だと語る川邉さん。人生の瞬間をいつも楽しむそのポジティブな姿勢は、多くの人を励ましている。
「ファッションに関して、誰かの模倣をしたり、みんなと同じにしたがったり、安心感があることを選択しがちだけれど、これからの高齢者は大人ではなくてはできないおしゃれをもっと楽しんでほしい。年を重ねておしゃれをしてきた歴史があるのだから、もっと自信を持っていいと思います」
現代は、自分の好きな自分でいられる環境に近づきつつあると川邉さんは感じている。
「年を重ねることに不安を持つ人も多いけれど、健康で美しくいられたらこんなに楽しいことはない。まわりも優しくしてくれるし、人間関係も円滑になる。時代の変化もたくさん見てきました。何歳になっても自分を大切にして、おしゃれを楽しむ人生を送ってほしいと思います」
PROFILE
川邉サチコ かわべ・さちこ
1938年東京生まれ。ビューティクリエイター。女子美術大学卒業。23歳のときにパリで美容を学び、国内外のファッションショー、広告、アーティストのヘアメイクを担当。94年から、トータルビューティサロン「KAWABE LAB」にて、ビューティアドバイスを行う。著書に娘の美木ちがやさんとの共著『あの人が着ると、パーカーがなぜおしゃれに見えるのか』(主婦と生活社)など。
@sachiko_kawabe
●情報は、FRaU2022年1月号発売時点のものです。
Photo:Masanori Kaneshita Text & Edit:Saki Miyahara