モデル・森星が思い描く「LOVEがあふれる2030年」
2030年には、平和や差別、エネルギーなど、さまざまな問題の何がどんなふうに叶えられているでしょうか。今回は、モデルの森星さんに、“こうなってほしい未来” を話してもらいました。
“LOVE”を前提にした制度が
たくさんつくられる
私がやっているモデルという職業柄、SDGsでいうと12番の目標「つくる責任 つかう責任」には、自覚的にならざるを得ないですね。以前は自分を安易に流行り廃りに合わせたり、生活に使うものも誰かから「これがいいよ」って聞くと無条件に受け入れたり、ただ消費するだけになってしまいがちだったんですけど、いまでは、それがどこからきたものなのか、どうやってつくられたものなのか知るという楽しみがあります。
学校の授業はちょっと苦手だったけど、自分で情報を収集するとシンプルに気持ちがいい。ブランドとコラボレートしてつくる側に回るときだってそう。なるべくムダを少なくしたりとか、リサイクルに活用できる方法を考えたりだとか、ひとつ視点を加えることで、ただトレンドに流されるだけじゃない気持ちのいいものづくりができるんです。
こうした考えを持つきっかけになったのは、国際NGOのプラン・インターナショナルとの出合いが大きいですね。貧困や差別から子供たちを守る活動をしている団体で、2014年以来、このNGOといっしょにベトナムやカンボジア、ネパール、フィリピンなどの村落を訪れました。当然、そこには過酷な生活環境や満足に行き届かない教育事情といった避けられない問題が山積みで、都会に比べるとないもののほうが圧倒的に多いけれど、洋服に関しても食材に関しても、いま持っているものだけでやりくりするアイデアに満ちていました。
余計なものがないシンプルな生活がスマートに感じられ学ぶことは多かったですね。それまでは有名になりたい、あの番組に出たい、あのCMに出たい、と欲望を原動力にして自分の仕事に向かい合っていた部分があったけれど、「衣食住ライフスタイル全般に寄り添ったモデルでありたい」とマインドチェンジできました。
現地の子どもたちと接して、笑顔やポジティブなエネルギーがあれば言葉の壁を乗り越えてコミュニケーションが可能なんだと気づかされました。初めて会う日本人が私という子どもたちばかりで責任重大だったけれど、結局行きつくのは人対人のイーブンなやりとり。ひとり一人ができることは小さい。でも、そうやってみんながLOVEを持ち寄れば未来は明るいんじゃないかな。政治的な問題など簡単に解決できることではないけれど、子供たちの食の安全を考えることやそれぞれの国が武器を持たない選択をすることに、LOVEは不可欠。ほかにも、いろんなカテゴリでLOVEを前提にした制度づくりが行われる2030年になったら素敵なのに。
PROFILE
森星
モデル。1992年生まれ。東京都出身。資生堂「ANESSA」や日本コカ・コーラ「AQUARIUS」のMUSEに就任するなど、モデルとして数々のファッション誌や広告で活躍。写真集『HIKARI MORI』(トランスワールド)が発売中。
●情報は、FRaU2019年1月号発売時点のものです。
Illustration:Katsuki Tanaka Text:Toyofumi Makino Text&edit:Asuka Ochi