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生物学者・福岡伸一がガラパゴスで考えた「人間が地球の一員であるために」【後編】
生物学者・福岡伸一がガラパゴスで考えた「人間が地球の一員であるために」【後編】
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生物学者・福岡伸一がガラパゴスで考えた「人間が地球の一員であるために」【後編】

地球環境のために、私たちがいまできることとは何でしょうか。ガラパゴス諸島で進化の最前線に触れた生物学者の福岡伸一ハカセが、動物たちと触れ合い確信した真実の進化論、生命のあり方とは?

▼前編はこちら

人間以外の生物はすべて利他的
「余り」は他の生命に渡している

写真:『生命海流 GALAPAGOS』(朝日出版社刊)/撮影:阿部雄介

人間は生物の一員として、進化の最後に現れ、言語を持ち、都市や文明、文化を作り、いまや地球の支配者のように振る舞っています。資源は自分たちのものと、どんどん採掘をして燃料を燃やし、他の生物を食料として獲って食べている。人間にとって地球環境はなくてはならないものですが、地球にとって人間はただ負荷がかかるだけの最悪最凶の外来生物と言えます。まずは、そのことをもっと自覚しなくてはなりません。

そして人はひとりで生きているわけではありません。私は「動的平衡」と呼んでいますが、自分という生命体は個体ではなく流体のようなもので、呼吸や排泄をするように、絶えず地球から何かをもらいつつ、何かを渡して生きている。人間以外の生物の振る舞いは利他的で、たとえば植物は、葉や実を自分に必要最低限な量だけではなく、余分につけて昆虫や鳥に与え、落ち葉を土壌生物の糧にして地球環境を支えている。食料やエネルギーなどの資源を溜めず、余剰分は必ず手渡していますよね。一方で、人間は利己的に富を囲い込み、蓄積する。我々も同じ生態系のなかで利他的に、他の生物と同じように責任を果たさない限りは、地球環境の一員でいる資格はありません。それには、ストックをフローに変えていく必要がある。人がひとり生存していく以上のものは溜めずに、余りが出るときは、他の生物や人々に手渡すことで循環が始まるのです。

写真:『生命海流 GALAPAGOS』(朝日出版社刊)/撮影:阿部雄介

このフローを実現するために、生命的なものというのはすべて、あらかじめ壊されることを予定してつくられています。細胞の仕組みもタンパク質もDNAを見ても、そのように形成されている。でも、人間がつくり出している工業製品などはどうでしょう。一度つくったらなかなか壊せないし、分解できないものも多いですよね。あらかじめ壊され、分解されることがつくるときから予定されているものほど、自然環境のあり方に適っています。人間も、できるだけそのような分解可能性を考えてつくり、選ばないといけない。所有を流れに変えること。衣食住すべてを、いかに元の自然のサイクルに戻せるかを考えていくことが大事です。

写真:『生命海流 GALAPAGOS』(朝日出版社刊)/撮影:阿部雄介

地球はいまも網の目のネットワークのように、絶えず物質とエネルギーと情報を手渡し続けています。あらゆる生物が地球環境のプレイヤーとして、何らかの動的平衡の営みに参加している。その結節点にいる生物が多様であればあるほど、網の目の点は多くなり、地球として強靭なネットワークを保つことができる。それが抜け落ちていくと、動的平衡も脆弱になってしまいます。人間の存在によって、生物がどんどん絶滅しているのは紛れもない事実です。我々も地球環境の一員としての利他的なあり方を、もっと意識して変えていく必要があるのです。

PROFILE

福岡伸一 ふくおか・しんいち
生物学者。1959年東京生まれ。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員研究者。著書に『生物と無生物のあいだ』など。ガラパゴスへ赴き、「生命とは何か」の本質に迫った『生命海流 GALAPAGOS』(朝日出版社)が発売中。

●情報は、FRaU2022年1月号発売時点のものです。
Text & Edit:Asuka Ochi

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