俳優・井浦新が「本気度120%のSDGsシャンプー」をつくった理由【前編】
これからのものづくりにサステナビリティは欠かせない視点。地球環境は守られているか。働く人たちへの配慮がされているか。残すべき伝統がきちんと次世代へ継承されているか。私たちはつくられた背景に賛同し、応援する気持ちで選びたい。つくり手の思いを聞きに、ものづくりの現場を訪ねました。今回は、鹿児島県のボタニカルファクトリーへ。
地球にも人にもやさしい
シャンプーをつくりたい
家族で「Valley and Wind」を立ち上げ、100%自然由来のシャンプー「Kruhi(クルヒ)」をプロデュースした俳優の井浦新さん。その背景には、一生使いたいと思うものをつくる、という強い思いがあった。
「ナチュラルなものだと信じて買った商品が意外とそうでなかったりして、頭皮にできものができたりと体に害があるだけでなく、排水として流れていけばヘドロになるような石油由来のものだったり。家族それぞれが髪や頭皮の問題のためにいろいろなシャンプーを試すうちに、バスルームがボトルだらけになっていたんです。いいものを選びたいからとやっていることが、結果的にごみを増やしているだけだった。これって矛盾しているなと思ったのが、きっかけでした」
納得できるものがないなら自分たちでつくろうと考え、家族の髪の悩みを解決するだけでなく、バスタイムにつかう後ろめたさを感じないものにするというのが出発点となった。プロダクトの軸は、排水として流しても環境に負担をかけない、人にも地球にもやさしい石鹸シャンプー。石油由来成分やシリコンをいっさい使用しない、誰もが安心して使える商品だった。
「まずは環境のことというより、いま地球規模で起きている課題に、自分たちがどう向き合えるか。変えたほうがいいと思うものをきちんと選び直して生活をアップデートするのと同じように、手の届く範囲内でやっていくということが第一にありました。意義と意味のあるものをつくって、それを生活の中でつかうことで、環境にも寄り添える。その積み重ねがきっと大きな力になっていくと考えました」
そしてさまざまな企業を探して、鹿児島県の化粧品製造メーカー「ボタニカルファクトリー」と出合った。
「100%自然由来の成分で石鹸シャンプーをつくっている工場があると知り、まずはすぐにオリジナルの商品をいろいろ買って試していきました。シャンプー以外のスキンケア商品も、その地域ならではの無農薬の原料や自生する植物をつかっていて、鹿児島の元気な土地に根づいた真面目なものづくりをしているのが伝わってきた。農家さんから廃棄される果物を買い取り、原材料のエキスや栄養を抽出した後も肥料として役立てるなど、すべてにおいて循環していくものづくりをしているところにも共感して、一緒に自分たちが理想とするヘアケアアイテムをつくりたいなと。ボタニカルファクトリーとならいいものができるという確信があったので、あとはひとつひとつの設計に丁寧に関わって、こんな仕上がりになったらいいよね、というものをとにかく妥協なく開発していきました」
▼後編につづく
ボタニカルファクトリー
新さんも参加した35種類の天然アロマからつくるオリジナルフレグランスのワークショップも。鹿児島県肝属郡南大隅町根占辺田3222。botanical.co.jp
●情報は、FRaU2023年1月号発売時点のものです。
Photo:Satoko Imazu ,Fumihiko Ikemoto Text & Edit:Asuka Ochi
Composition:林愛子