急成長する「フェムテック」の最先端商品をチェック!
フェムテックは「Femail」と「technology」を合わせた造語。テクノロジーの力を使って女性の健康に関する課題を解決していく製品やサービスを指します。そのフェムテック市場がここ数年、著しい成長を見せています。先日は、はじめての大規模なフェムテックイベント「Femtech Tokyo」が東京ビッグサイトで開催されました。175もの企業が参加し、トークセミナーの講演者は衆議院議員の野田聖子さん、元バドミントン選手の潮田玲子さん、実業家の辻愛沙子さんや堀江貴文さんなど豪華なメンバーが登場。勢いを感じさせたイベントの詳細をリポートします。
日本のフェムテックは遅れてる!?
10月20~22日に開催されたFemtech Tokyo。初日のトークセッションに登壇したのは、フェムテック振興議員連盟の会長でもある野田聖子さんだった。
フェムテックは、「生理」「妊娠・出産」「不妊」「更年期」といった女性の健康に関するグッズやサービスの総称。女性が働くこと、社会進出が当たり前となったいま、女性のパフォーマンスを最大限発揮できる環境は不可欠だ。ホルモンなど、さまざまな要因で体調が安定しにくいともいわれる女性ができる限り快適に過ごし、働けるような社会にしていこうという機運が高まっている。
だが、他の先進諸国に比べ、日本のフェムテック事情は遅れているといわれる。たとえば海外では当たり前となっている経血吸水ショーツ。日本では薬機法(正式名称は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の規定により、長らく生理用品とは認められなかった。
いまだに避妊法の主流が、低容量ピルではなくコンドームであること、不妊治療を受ける際の精神的・金銭的負担の大きさ、更年期に関する研究があまり進んでいないことなど、課題は山積みだ。
野田さんは「国会議員は、いままでなかったことをネタにしていくのが仕事。男性社会だった日本において、これまで女性の体に関することは未開の分野でした。フェムテックを通じて、これを日本が取り組むべき大きな仕事にしていきたい」と語った。
「膣」関連グッズの進化がスゴイ
それでは次に、イベントに出展された商品を見ていこう。
◆デリケートゾーンケア商品が豊富に
もっとも出展が多く、製品の種類やデザインも多様化していたのが「膣」の分野。なかでもデリケートゾーンケアの関連商品は、香り、パッケージのデザインなどの選択肢が広くなっており、自分の好みにピタリと合う一品が見つかりそうだ。
たとえば上写真の商品。ボディウォッシュからセラム、クリーム、オイルまで、デリケートゾーンもボディもケアできるラインナップが揃う。デリケートゾーンケアの商品は多いが、これはナチュラルな香りのよさが人気となっているそうだ。
◆バリエーション豊かな「膣トレ」グッズ
最近、よく目にするようになった「膣トレーニング」グッズ。骨盤底筋を鍛えることで、産後や加齢による尿漏れを防止する商品だ。たとえば下写真の「SatisFyer」は一見、振り子のような形。これを挿入して膣の筋肉を鍛えるのだという。膣トレグッズはまだまだ日本では認知度が低く、入手できるのは海外製品がほとんどだが、デザインはかわいいものが多い。アプリと連動して膣圧を測れる商品もあり、今後さらに進化していきそうだ。
◆「温膣ケア」に注目せよ!
体を温めることの大切さが唱えられるようになって久しい。それに伴いさまざまな温めグッズが登場してきたが、温膣グッズとして人気を博してきた「よもぎ温座パット」もそのひとつ。登場したのは15年も前になるが、ここ数年はフェムテック意識の高まりを受けて売り上げを伸ばしていた。そして今年8月、大きくリニューアル。肌に触れるトップ部分が100%オーガニックコットンになった。まもなく冬。なかなか有効な冷え症対策が見つからないという人は、膣から温めることを試してはいかがだろう。
◆「膣フローラ」を検査してみよう
いまや腸内フローラならぬ「膣フローラ」も検査できる時代になったようだ。医療機関での検査はもちろん、自宅で採取して検査機関に送るセルフキットも登場している。膣フローラが乱れるとかゆみや悪臭を引き起こしたり、さまざまな妊娠トラブルにつながるという。医療機関で受けると4〜5万円(編集部調べ)かかるなど気軽に受けられる価格ではないものの、膣トラブルに悩まされている人、妊娠を考えている人は、その状態を調べてみるのもいいかもしれない。
生理期間をさらに快適に
◆オシャレ「経血吸水ショーツ」が続々登場
生理用品といえばこれまでは生理ナプキンかタンポンが主流だった。しかし最近は、ナプキンをつけない経血吸水ショーツが人気となっている。それゆえ、ショーツのデザインも進化中だ。色や形だけでなく、ブラとセットになったものも登場。もはや「生理中だから」と下着のオシャレをあきらめる時代ではないのだ。
ブラとセットになったスタイリッシュな吸水ショーツは、「NonPlus.(ノンプリュ)」がクラウドファンディングで資金を集め、1年半かけて開発したアイテムで、間もなく発売予定とのことだ。
◆国産の「月経ディスク」は違和感なし!
「タンポンより蒸れにくい」と月経カップがジワジワ人気になっている。その月経カップの快適さをさらに高めたのが、「月経ディスク」だ。月経カップよりも膣の奥に装着するため、つけているときの違和感が少ないといわれる。これまでは海外製のものしかなかったが、MONA companyが国産メーカーとしてはじめて開発に乗り出した。2023年2月に発売予定というから、なかなかナプキンの交換ができない、量が多くて漏れやすいという人は検討してみて。
避妊、妊活、産後のフェムテック
◆「スマホでピル処方」の時代がやってきた
避妊対策として、またPMS(月経前症候群)や生理トラブルの改善薬としても有効な低用量ピル。しかし処方してもらうためには定期的に婦人科病院に通わねばならず、面倒なのが悩み。最近ようやく、オンラインで診察を受け、処方されたピルは宅配で受け取ることが可能になってきた。それに伴い、低用量ピルのオンライン処方システムを福利厚生として導入する企業も増えている。女性の働く環境改善は着実に進んでいるようだ。
◆おうち妊活=シリンジ法とは?
子どもは欲しいが忙しくてセックスのタイミングが合わない、パートナーがED、性交痛がある、不妊治療クリニックは高額すぎる……など、妊娠へのさまざまな困難を抱える人にオススメなのが「おうち妊活」とも呼ばれる「シリンジ法」。男性が射精した精液をシリンジ(注射器)で吸引し、それを膣内に注入するというもので、これまではクリニックでしかできなかった不妊治療が自宅でもできると、ジワジワ注目度が高まっている。
◆ママのための出産祝い
出産祝いといえば、これまでベビー服やオモチャなど赤ちゃんへのプレゼントが主流で、「産後ママへの贈り物」は少なかったのが実情。産後ケアが手厚いといわれる中華圏では、出産祝いに産後の母体の回復力を高める燕の巣を贈る文化があるそう。「ベビー服をいただきすぎて、全部着せることができなかった」なんて声は昔から多い。赤ちゃんではなくお母さんへのお祝いを贈るのもよいかもしれない。
上写真のツバメの巣エキス含有食品「ピースエキスゼリースティック」は、すぐれた滋養成分を含む天然アナツバメの巣を使用。「エムスタイルジャパン」は、化粧品とセットになった産後ギフトボックスを手がけている。
まだまだ市場に余地のある更年期ケア
◆東洋医学に基づいたサプリ
このところ、ようやく日本でも多くの女性が「更年期のツラさ」を堂々発信できるようになってきた。とはいえ、まだまだ更年期に特化した製品やサービスは少ない。そんななか気になったのが、東洋医学の概念をベースとしたサプリメントでのケア。もともと更年期ケアは東洋医学の分野ともいわれてきた。サプリメントならより手軽に取り入れられる。試してみる価値はありそうだ。
写真は、東洋医学「五行」概念から6つの不調パターンに合わせて生み出された「TUMUYUI」のサプリ。独自の診断ツールにより、それぞれの不調に合わせたサプリを提供している。
◆オシャレ潤滑ゼリー
うるおい不足による性交痛をやわらげるアイテムとして使用されてきた潤滑ゼリー。昨今は妊活中の女性から更年期、閉経後の人まで幅広く使用されるようになり、デザインも性能も一気に進化。オシャレなものや、肌にやさしいものがたくさん登場している。
たとえば、カラーバリエーション豊富な「hanamisui」の潤滑ゼリー(上写真)。とくに膣のうるおいが減ってくる更年期や閉経後の人たちに人気となっており、購入年齢は70代までと幅広いという。
以上、さまざまなフェムテック商品を紹介してきたが、これらはほんの一部にすぎない。他にもさまざまな商品があり、東京ビッグサイトは歩くのもひと苦労なほど人であふれていた。フェムテック市場は間違いなく今後さらに伸びてくる。そう感じさせてくれるイベントだった。
取材・文/山本奈緒子 撮影/嶋田礼奈 編集/大森奈奈