サブスク型ファッションレンタルはなぜ「自宅で手洗いOK」に踏み切ったのか
ファッションレンタルはクリーニング不要の場合が多いもの。つまりはクリーニング不可、ということなのですが、夏場限定で、取り扱いアイテムの一部を手洗い可能にしたサービスが開始されました。サブスクリプション型ファッションレンタル「AnotherAddress(アナザーアドレス)」が意図するところは、はたして?
「正しい洗濯のしかた」も学べて一石二鳥!
たいていのファッションレンタルサービスは、クリーニングしないまま返却できる。大丸松坂屋百貨店の「AnotherAddress」でも、1ヵ月間のレンタル後にクリーニングしないでそのまま返却、また次のアイテムがレンタルできる。ユーザーには、その利便性が受けているという。
「私たちのサービスでクリーニング不要にしているのは、もちろん、お客さまの利便性を考えているからですが、もうひとつ理由があります。通常、私たちがレンタル品のドライクリーニングをお断りしているのは、洋服を傷ませないためでもあります。私たちは、『服は使い捨てではない』という信念のもと、寿命を伸ばして、捨てられてしまう服をどれだけ減らしていけるか、ということに取り組んでいるのです」(AnotherAddress事業責任者・田端竜也さん、以下同)
ところが夏場になると、そうした取り組みにジレンマが生じてくる。洋服の品質を維持するために、「クリーニング不要」「ドライクリーニング不可」としているのに、そのことが、かえって品質の悪化を招いてしまうこともあるからだ。
「夏場はどうしても汗をかきます。汗のついた洋服を返却まで洗わないでおくと、汗で硬化して繊維自体が変質することがある。これでは本末転倒です。そこで、汗をかきやすい夏場に洋服を傷めない洗濯の方法を発信し、期間限定で取り扱いアイテムの一部を、ご自宅での手洗い可能にするサービス『ウォッシャブル特集』を開始しました」
「お客さまは本当に手洗いしてくださるのか、洗い方を間違えられて洋服がボロボロになってしまわないかなどと、正直心配でした。なので2021年は、対象アイテムをかなり絞り込んでチャレンジしたのです。しかしフタを開けてみると、傷んだ洋服が返ってくることは少なく、『洗えてよかった』というお客さまからの声も多かったので、今年はパワーアップしての開催となりました。汗をかいても洗えないから、夏場はレンタルを一時的にお休みする、という人がいますが、そのような方にも、安心して夏のファッションを楽しんでいただけます」
自宅で手洗い可能な対象アイテムは、昨年の10倍の2000着強になった。一方、手洗いと違って生地を傷めやすいドライクリーニングは、依然として禁じられている。
「お客さまに安心して洗濯をしていただくために、プロが教えるお洗濯術としてサイトで手洗いの方法をわかりやすく説明してもいます。われわれの洋服を傷ませないという目的もありますが、『お客さまのお手持ち洋服の寿命も延びたらいいよね』という願いもこめています。洗濯のやり方によって、洋服を長持ちさせられることを啓蒙していきたいという狙いもあるんです」
自宅で手洗いできることで、夏のファッションを思い切り楽しめる。おまけに洗濯の知識もつく「ウオッシャブル特集」は一挙両得のサステナブルなサービスといえるだろう。
text:佐藤美由紀
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