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ドイツのサステナブルをめぐる旅⑧ 首都ベルリンで見た「墓地の農園」「“食べられる庭”つきカフェ」「元水道施設のビオトープ」にビックリ!
ドイツのサステナブルをめぐる旅⑧ 首都ベルリンで見た「墓地の農園」「“食べられる庭”つきカフェ」「元水道施設のビオトープ」にビックリ!
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ドイツのサステナブルをめぐる旅⑧ 首都ベルリンで見た「墓地の農園」「“食べられる庭”つきカフェ」「元水道施設のビオトープ」にビックリ!

環境先進国であり、SDGs達成度ランキング2021でも世界6位にランクインしているドイツ。トラベルライターの鈴木博美さんが、そんなドイツのサステナブルを巡ってレポートします。今回訪れたのは、首都ベルリン。アイデアに富んだ、ユニークでサステナブルな取り組みをご紹介します。

巨大墓地が農園に変身

ドイツでは、コロナ禍におけるコミュニケーションのきっかけづくりとして盛り上がった園芸ブームが、いまも続いているという。ベルリン南部の人気地区ノイケルンにある「プリンツェシンネン・ガーデン」は、駅から徒歩数分とアクセスのよいコミュニティ農園。実はここ、1867年からある墓地の敷地を利用している。緑生い茂る美しい並木道が整備され、歩けば小鳥のさえずりに癒やされる。日本の墓地とはまったく異なる雰囲気だ。まるで庭園のような空間で、実際に犬や家族と散歩する市民の姿をよく見かける。

墓地の敷地面積は7.5ヘクタール(東京ドーム約1.6個分)。そのうち埋葬に使用されている部分は約4.2haだ。つかわれていない敷地の新しい墓地利用の形として、「ベルリン持続可能な開発プログラム」による資金提供と、福音派墓地協会ベルリン市立墓地の招待を受け、ここにコミュニティガーデンが置かれたという。農園は無料で開放され、誰でも参加でき、収穫した作物は参加者が持ち帰っている。

敷地内のカフェでは農園で収穫したハーブティーやベルリンや近郊の有機農場から届く季節ごとの野菜をつかったベジタリアン、ヴィーガンランチを提供している。公園に訪れるような感覚で、気軽に利用する市民が多いようだ。

こんな市民農園、日本にも導入できれば、高齢者の孤立を避けられるのではないだろうか。

都心のパーマカルチャーガーデン・レストラン

墓地農園と同じくノイケルンにある「カフェ・ボタニコ」は、裏庭に独自のパーマカルチャー菜園「食べられる庭」を備えたカフェレストラン。 パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を組み合わせた造語だ。こちらでは、人と自然がともに豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法「ガーデン・トゥ・テーブル」が実践されている。

パーマカルチャーの庭師で、カフェ・ボタニコのオーナー、マルティン・ヘフトさんの案内で裏庭を覗くと、広い敷地に野菜、果物、野生植物など200種類以上の植物が自然栽培されていた。香り豊かな野生のハーブや野菜は、収穫後すぐにキッチンで調理される。

「私たちにとって重要なのは、高価になりすぎず、誰にとっても手頃なメニューを提供し続けること。バランスの取れた妥協点を見つけて、可能な限り最高の品質を手頃な価格で提供しながら、持続可能な製品を多く組み込むことに努めています」(ヘフトさん、写真上)

おすすめはワイルドハーブサラダ。ベルリンで入手できる最も新鮮で、最もおいしく、最も多様性に富んだサラダだという。味が濃くてしっかりした食感をもつさまざまな野菜を、香り豊かなハーブとともに楽しめる贅沢な逸品だ。地中海料理をベースにしたヴィーガン料理や肉、魚介料理は、どれを食べても、ついつい「おいしい!」と叫んでしまう。ワインリストもイタリア、ドイツを中心に豊富に取り揃えている。ベルリンを訪れたら、ぜひ訪れたいレストランだ。

かつて水道施設だった多様な生物のホットスポット

ベルリンの中心部から西に10kmほどのところに位置するグルーネヴァルトの森にある 「オコヴェルク・ベルリン」は、ベルリンに現存する最古の水道施設だった産業施設。現在は、水をテーマにしたパネルやインタラクティブ、図書館、研究室を備え、さまざまな生物の生息地を提供する自然保護センターになっている。1871〜1968 年の約100年間にもわたって地下水が汲み上げられていたが、閉鎖後は徐々に自然を取り戻し、1985年に自然保護センターが設立された。

約 2.8ヘクタールの自然環境を保全しながら、いろいろな生き物が生きられる環境を整備。池、牧草地の果樹園、乾いた草原などのビオトープと、岩と花の庭、オーガニックガーデン、蜂の巣のある広い庭園エリアを備えている。そこに多数の昆虫や水生生物に加えて、スナトカゲやカエル、草ヘビなどの爬虫類、両生類が生息しているため、自然観察の場としても重宝されている。湖では大勢の人が水遊びを楽しんでおり、水着のまま施設内のカフェや木陰でひと休みしている人も見かけた。ベルリンの中心部から少し離れただけのところに、こんな自然豊かなスポットがあったなんて!

居心地のよいエコフレンドリーホテル

「ルル グルスメデンホテル」は、ポツダム広場やベルリン・フィルハーモニーや新ナショナルギャラリーなど、近代建築の傑作といわれる建物が並ぶティーアガルテン地区にある。北欧を中心に展開するホテルグループの経営で、環境への悪影響を最小限に抑えながら、アットホームな雰囲気でゲストに心地よい滞在を提供することを企業理念に掲げており、グリーン・グローブ、グリーンキー、エコサート、フェアトレードなど多くの国際的認証を取得している。

客室には天然素材が取り入れられ、ソファや家具はアップサイクルされたものを活用。バスアメニティ、リネン、タオルはオーガニック素材およびフェアトレード商品のみを使用するなど、エコをお洒落に取り入れている。客室から見渡せる中庭も、ゲストの静かな隠れ家といった雰囲気で居心地がいい。ビュッフェ形式の朝食では、焼きたてのパンと新鮮な季節の野菜と果物、温かい料理でパワーチャージ。「旅行もサステナブル」が新常識のいまだからこそ、滞在ホテルもこうした面からセレクトしたい。

text:鈴木博美 取材協力:ドイツ観光局

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