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カナダ・トロント発 「レンガ工場跡地を自然の渓谷に戻す」実験的コミュニティハブ【後編】
カナダ・トロント発 「レンガ工場跡地を自然の渓谷に戻す」実験的コミュニティハブ【後編】
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カナダ・トロント発 「レンガ工場跡地を自然の渓谷に戻す」実験的コミュニティハブ【後編】

厳格な「カナダ環境保護法」のもと、生物の多様性と生態系を維持している環境先進国・カナダ。自然環境や人にやさしい暮らしを求める動きは、近年さらに加速しています。その最前線を、トラベルライターの鈴木博美さんがレポート。後編では、トロントの工場跡につくられた、自然豊かなサステナブルスポットをご紹介します。

――前編はこちらーー

狙い目は毎週土曜のファーマーズ・マーケット

多民族が共存しながら繁栄する、カナダの経済と文化の中心都市・トロント。雄大なオンタリオ湖を眺めながら、金融街に林立する高層ビル群を歩いていると、ヒップな若者達が集うエリアに迷い込んだと思ったら、いつのまにか、レンガ造りの閑静な住宅街があらわれたりする。トロントは通りごとにいろんな表情を見せてくれる、実に味わい深い街なのだ。

近年は、19世紀から20世紀初頭の産業建築物を再生したカルチャースポットも多く存在する。なかでもとくに地元の人々に愛されているのが、ダウンタウンの東を流れるドン川沿いの公園にある「エバーグリーン・ブリックワークス」だ。

エバーグリーン・ブリックワークスは、1889年の創業から1980年代の閉鎖まで、約100年にわたってレンガを生産し続けた工場と採掘場の跡地を、もとの環境に戻そうという試みのなかでつくられた複合施設。運営は、カナダ全土で活動する環境保護団体「エバーグリーン」が行なっている。敷地内には、エコやオーガニック、地産地消のコンセプトを掲げたカフェや雑貨店が軒を連ね、さまざまなイベントも開催。持続可能な未来へ向けたアイコン的存在になっている。

毎週土曜日に開催されるファーマーズ・マーケットは、トロント近郊の産直農作物などが集合する、トロントニアンの楽しみのひとつ。採れたてのオーガニック野菜はもちろん、メープルシロップ、ハチミツ、パンやハム、チーズなど、ナチュラルで新鮮な食材を求めて、オープン時間から多くの市民が駆けつける。

売り場にはカラフルな旬の野菜や手づくりのピクルスなどが並び、見ているだけでワクワクする。地元の生産者による直売なので、買い物をしながら、食べ方などの”おいしい情報”が聞けたりもする。会場の奥には世界各国のローカルフードやスイーツが楽しめる屋台も出店され、ランチ時は大にぎわいとなる。

ドン川沿いの渓谷を自然に戻すことを目的とする広大な敷地は、どこを歩いても居心地がよい。池の畔に置かれたリゾート仕様の椅子「マスコーカチェア」に座って一息つけば、都会にいることを忘れてしまう。高層ビルが林立する街の中心地のすぐそばなのに、山奥まで来たかのように自然を満喫できる贅沢な環境だ。

自然を通してさまざまな体験が学習できるキッズパークや、先住民の講師によるガーデニングや農業のレクチャー、ハロウィーンや死者の日などに合わせたカルチャーイベントなども実施。ブロック工場の歴史や環境問題について学べる文化施設など、自然と文化とコミュニティを一体化させた、サステナブルなパブリックスペースが設けられている。

ネイチャートレイル沿いの草花を眺めながら、小高い山の頂上を目指す。20分ほど歩くと、緑の向こうにトロントのランドマークであるCNタワーとビル群を見渡す絶景スポットがあらわれた。

エバーグリーン・ブリックワークスは、トロントの中心部からわずか5㎞という立地にある。都市と自然の共生を肌で感じながら、おいしいものを探求し、素敵なお土産も調達できる観光スポットとしても十分に楽しめるスポットだ。せっかくなら、土曜日のファーマーズ・マーケットに合わせて訪れるのがおすすめ。街に戻ったら、かつてここで造られたレンガで建設された旧市庁舎やマッセイホール、カサロマ、ロイヤルオンタリオ博物館などの名所を巡ってみるのもおもしろそうだ。

――前編はこちらーー

取材協力:オンタリオ州観光局

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