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サステナブル先進国・ニュージーランド「マタカナ」で学んだ“自然とともに生きる術”【前編】
サステナブル先進国・ニュージーランド「マタカナ」で学んだ“自然とともに生きる術”【前編】
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サステナブル先進国・ニュージーランド「マタカナ」で学んだ“自然とともに生きる術”【前編】

自然環境保全と経済活動の両立に成功したサステナブル先進国・ニュージーランド。豊かな自然を資源ではなく「祖先」と捉える、この地に先住していたマオリの世界観がいまも生きています。たくさんの羊や牛、馬が放牧される酪農王国でもあり、ワインやシーフードのおいしさも魅力。「City of Sails(帆のまち)」と称される美しい海洋都市オークランドを拠点に、ニュージーランドの自然や美食を味わうウェルネストリップに出かけてきました。【前編】

ごみを、いっさい出さないファーマーズマーケット

南太平洋の美しい島国、ニュージーランド。国土の約3分の1が国立公園や保護区に指定されており、飛べない鳥キーウィ、カカポなど独自の進化を遂げた生きものたちがいる。南島、北島の2島からなるが、今回は首都ウェリントンと商業や経済の中心地であるオークランドがある北島を訪問した。オークランドは周囲を海に囲まれ、一人あたりのヨット所有数は世界一といわれる豊かな都市だ。

ハーバーブリッジからオークランドを望む。白いヨットが並ぶマリーナと、南半球でもっとも高い328mのスカイタワーが美しい

オークランドは国民の3分の1が暮らすポリネシア地域最大の都市だが、まちの中心部からノースショアに向かってハーバーブリッジを渡ると、やがて緑深い田園風景が広がる。なだらかな緑の丘のあちこちに羊や牛、馬がいて、のんびりと草を食(は)んでいた。

のどかな田園風景が広がるオークランド郊外。日差しが強くて雨が多いニュージーランドでは、グリーンがよく育つ。落葉樹が少ないため、一年じゅう緑の景色だそうだ

車を走らせること約50分、オークランドから70㎞ほど北にあるマカタナという、かわいらしい村に到着。ここでは毎週土曜日朝にマーケットが開かれ、新鮮な農産物や惣菜、スイーツなどが売られている。オシャレなショップやカフェが揃い、周辺にはキャンプ場&ゴルフ場もある、人気のデイトリップ先なのだ。

Matakana Farmers’s Market(マタカナ ファーマーズ マーケット)は、「地元の人が、地元で生産した食べ物を売る」という理念のもとに誕生。受賞歴のあるコーヒーからボリュームたっぷりのブランチメニューまで、その場で試して買える生産物が豊富だ。マーケット入り口には連れてきた犬を預かってくれるコーナーがあり、常時7〜8頭のワンちゃんが買い主たちのショッピングが終わるのをお行儀よく待っていた。

情熱的な出店者たちによる、新鮮で質の高い地元産の食材が揃う。店主はみな説明に熱心で、ひとつ質問をすると10も20も答えが返ってきた

マーケットの哲学の中心には、“食のトレーサビリティ”がある。食べものがどこから来たのかを重視しており、2017年にはゼロウェイスト(ごみゼロ)を達成。一角には、まだつかえる不用品を自由に置けるスポットがあり、置かれたものは誰でも自由に持ち帰れる。

フレッシュオレンジをしぼって提供。少年に手渡されたジュースはよく冷えていて甘酸っぱく、しみじみ身体にしみるおいしさ

マーケット内に置かれたごみ箱。「リサイクル」「コンポストできるごみ」「埋め立て地へいくごみ」の3つのバケツがあり、赤の埋め立て地行きのバケツには「それって、ホントにリサイクルやコンポストできないアイテムなの?」という問いかけが添えられていた

マタカナ村のスーパーに並んでいた、放牧豚のソーセージ。ニュージーランドでは、羊や牛はグラスフェッド(牧草肥育)が、豚や鶏は広々とした場所で育てるフリーレンジ(放し飼い)が一般的。この国では動物たちもストレスフリーなのだ

マーケットには舞台が設置されており、バンドが陽気な音楽を奏でていた。すぐ横には澄んだ水が流れる小川があり、鴨の親子が優雅に泳いでいる。地元で採れたマッシュルームに手づくりのハチミツ、ジャム、ニュージーランド名物のマヌカハニーに新鮮なハーブ類と、健康的な食材がいっぱい。自由に歩けないほどの混雑ぶりだが、出展者も来場者も、みなハッピーに笑っていたのが印象的だった。

海風と土、太陽が育んだワインを鴨レバーパテに合わせ

マタカナエリアで見逃せないのが、良質のニュージーランドワインが味わえるワイナリーだ。周辺にはいくつかワイナリーがあるが、なかでも人気なのがサステナブル認証を受けた4.5ヘクタールのブドウ畑が美しい「ブリック・ベイ」。敷地内にはレストラン、屋外テイスティングスペース、現代アートが楽しめる遊歩道が整備されており、ブドウ畑や湖を眺めながらのんびり散策できる。

緑に縁取られた美しい水面に、睡蓮が花開いていた。湖の左奥にブドウ畑、右側にガラス張りのレストランが見える。ワイナリーでは、生物多様性を高める植樹プロジェクトも推進中だ

かつてレンガの材料になっていた粘土質ローム土壌の上にあり、「Brick Bay」という名の由来となった。ブドウ畑では、ピノ・グリ、シャルドネをはじめ、カベルネ・フラン、メルロー、マルベックなど、テロワール(土地の特性)に適した品種を栽培。芽の選定から摘葉(てきよう)、房の間引きまで、一本一本を手作業で管理している。

緑のツルに覆われた、ブドウ畑を望むテイスティングカウンター。カワウ湾から吹き込む温暖で湿潤な海風が、ブドウの穏やかな成熟を促進するという

湖の上に張り出すように建つ「The Glass House」では、農場直送の食材をつかったメニューを提供。エレガントで瑞々(みずみず)しいワインとともに、最先端のニュージーランド料理が味わえる。ガラスの向こうに広がる緑とキラめく湖面、散策をする人々を眺めながらのランチは、最高に気持ちがいい。

ニュージーランド旬の味が満載の、見た目も美しいシェアプレート。もちろんワインとの相性はバッチリ

敷地内には果樹園や菜園、牧草地があり、果物やオイル、ナッツ、野菜のほか、放し飼いで羊まで飼育されている。それらはすべて、このレストランで活かされているのだ。シェアプレートには生ハムや燻製(くんせい)肉の盛り合わせ、鴨のレバーパテに野菜スティック&ピクルス、燻製ガーリックのフムスなどが載り、フェンネルシードと自家製オリーブオイルが香る温かいフォカッチャが添えられている。メインのイカのフライやラムのスパイスグリルなども、ハーブやナッツ、柑橘類が素材の味を底上げしており、どれもとてもおいしかった。

併設のブティックで、さわやかでエレガントな味わいのロゼワインを(自分への)お土産として買って大満足。エントランス付近のなだらかな丘で、羊がモグモグ草を食べながら見送ってくれた。

世界有数の巨大な木「カウリ」に圧倒されて

オークランドへの道中、パワースポットとして知られる「ペリー・カウリ・パーク」へ立ち寄る。カウリは北東北部でしか見られない、ニュージーランドを代表する樹木のひとつ。古(いにしえ)より存在する世界有数の巨大樹で、「森の王」とも呼ばれている。

樹齢800年のカウリの巨木。公園のかつての所有者にちなんで、シンプソンカウリと呼ばれている

公園内には2本の巨木を含むカウリやシルバーファーン(銀シダ)、マオリ建築につかわれていた神聖な木トタラなどの在来林がいまも残る。木道が整備されており、手軽に原生林を散策できると人気だ。外来種の侵入を防ぐために靴の底を消毒してから、遊歩道へ足を踏みいれる。

ニュージーランドの雄大な自然を感じられるパリー・カウリ・パーク。シダ植物の一種、シルバーファーンの葉っぱは、名門ラグビーチーム「オールブラックス」のエンブレムとしても有名だ

カウリは非常にゆっくり成長し、硬く密度の高い幹が特徴。19世紀には船材や建築材に重宝され、大量に伐採されてしまったそうだ。森や土地を守る精神「カイティアキタンガ(kaitiakitanga)」と深く結びつく聖なる木として、現在は手厚く保護されている。見上げれば、ニュージーランド航空のロゴにもなっているシダ植物のシルバーファーンが青々と茂っていた。その下には、抗酸化力で有名なハチミツ「マヌカハニー」が採れる低木マヌカが、可憐な白い花を咲かせている。木漏れ日を浴びながら清らかな小川が流れる深い森を散策し、心身ともにリフレッシュできた。

ニュージーランドには、私有地でも在来種や保護指定木は、許可なく切ってはいけない、という法律があるとか。ニュージーランドの美しい風景は、それを守り続けてきた人々の意識から成り立っているのだ。

Text & Photo:萩原はるな

──後編「オークランドのサステナブルホテルと美食」に続きます──

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