「ピュレグミ」のカンロから、果物残渣でつくった画期的なグミ登場!
1955年に発売された「カンロ飴」から2021年発売の「マロッシュ」まで、時代のニーズにあわせたキャンディやグミを提供してきたカンロ。2022年9月にはヒトツブから地球を考えるライン「ヒトツブ カンロearth」をリリース、サステナブルな取り組みを加速させています。そしてこのたび、果汁を搾ったあとに出る繊維質を生かした「リ ミカングミ」をリリース! 発売以来大人気となっているこの新商品の開発者に、完成までの舞台裏を伺いました。
果物そのものの味を活かした、地球コンシャスなグミ
「もともと素材を活かした商品づくりをすることは、機能性の追求と並んで当社の基本方針の2本柱でした。これを体現する専門部署として、4年ほど前に素材を掘り下げた製品をつくる素材加工チームが設けられたのです」
こう語るのは、カンロの先進研究部・素材加工チームの山崎圭太さんだ。キャンディやグミは、香料などで味をつくっていくのが基本。しかし山崎さんは、「そうではなく、素材そのもののおいしさを活かそう」と考えたという。
キャンディやグミのフレーバーは、フルーツまたは飲料の味が主流。山崎さんは、そこから材料を探していこうと考えた。つき合いのある原料メーカーや展示会を回り、可能性のありそうな原料を集めては研究所で評価することを繰り返したという。
「既存の材料をつかうと既存のものしかできないので、『ウチに出していないもので、何かありませんか』と聞いて回りました。そんななか出てきたのが、柑橘系のペースト。温州みかんの皮と実をつぶしたもので、『これならいけそうだ』と思いました。ただし甘みが主張しすぎていたので、『もう少し酸味のあるものがないか』と、そのメーカーの担当者に聞いたところ、『清見みかん』を扱っていることがわかったのです。果汁を搾ったあとに出る皮や繊維は廃棄しているというので、それらをつかったサンプルをつくってもらいました」(山崎さん)
清見みかんの繊維質「清見パルプ」をつかってみたところ、甘みと酸味のバランスが絶妙で、香りもとてもよかったと山崎さん。あとで聞いたところ、そのメーカーでは、清見パルプをずっと、お金を払って産業廃棄物処理業者に処分してもらっていたという。
「こうして素材は決定したものの、そこからは壁の連続でした。最初に直面したのが、工場で大量生産ができるところまでもっていくという難題。グミをつくる機械では、それまで液体原料しか扱ったことがなかったのです。繊維は水に溶けないので、液状にはなりません。むりやり工場で試作して機械を壊し、ラインが止まってしまったら、会社にもお客さまにも多大な迷惑をかけてしまいます。そこで研究所の試作エリアで工場の機構を再現し、何度も試作。繊維を工場の機械のラインに通せるよう、細かく粉砕することにしました。結局、実際に工場で試作できるまでに3年かかったんですよ」(山崎さん)
2つ目の壁は、賞味期限の問題。これまでに使用したことのない材料をつかったため、1週間でベタベタに溶けてしまうなど、想定外のできごとも起こる可能性があった。
「日々の経過とともに検証するんですが、『2週間経過したけど、ベタベタになって袋にくっついていないか?』『3ヵ月たったけど、まだまだセーフ!』など、毎回ドキドキしながら確認していました。そこをなんとかクリアしたら、最後の難関が待っていたんです」(山崎さん)
製品化にあたっての最後の壁は、ヒトツブ事業部長の金澤理恵さんが提案した新しい包材をつかっての品質保持だった。
「地球環境への配慮として、紙の包材を使用したかったんです。はじめての試みだったので、『この包材で、果たしてもつだろうか』と数ヵ月間検証。工場からあがってきた製品を新しい包材に入れては経過を待ち、大丈夫だと確信できてからやっとリリースにこぎつけました」(金澤さん)
地球環境や人にやさしい新商品の開発は続く
「リ ミカングミ」では、通常のグミで使用されるゼラチンではなくペクチンがつかわれている。ペクチンは柑橘の皮やリンゴ、バナナなど果物由来の成分。これを採用することで、動物の骨や皮に含まれるコラーゲンからつくられるゼラチンをつかわない「植物性の成分でできたグミ」が誕生した。
「ペクチンは清見みかんの風味ととても相性がよくて、口のなかに素材の風味が広がるグミができたと思います。パッケージを担当したデザイナーさんなどからも、『すごくおいしい』という声をもらったので、これまでの苦労が吹き飛ぶ思いでした」(山崎さん)
「はじめて試食したときは、『え、コレ本当に香料つかっていないの?』とみんなでびっくりしたんです。職業柄、私たちは日々いろいろなグミを食べているので、感動するのはけっこうレアなこと。通常のように香料でフルーツ風味を表現するのではなく、フルーツそのものの味がきちんと味わえるグミを食べたのははじめてでした。動物由来のゼラチンをつかわないことで、いままでグミを食べられなかった方にも楽しんでいただける。そういう意味でも、ヒトツブ カンロearthならではのグミができあがりました」(金澤さん)
その結果、ヒトツブ カンロの店頭に並ぶやいなや、すぐに売り切れてしまう事態に。さらに、「ウチの果物の残渣(残りかす)も利用できないか」という問い合わせが数件入っているという。
「私たち開発チームでは、次はどんなキャンディやグミをつくろうかと、すでにいろいろ試しています。さまざまな食品工場で、これまでのように残渣を廃棄することを前提にせず、それらを回収できるようなラインができるといいですよね。」(山崎さん)
ヒトツブ カンロearth公式HP
https://kanro.jp/pages/hitotubu_hitotubukanroearth
photo:横江淳、text:萩原はるな
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