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介護の現場は、まるでコント!? マシンガンズ滝沢×介護芸人「明るい認知症との向き合い方」
介護の現場は、まるでコント!? マシンガンズ滝沢×介護芸人「明るい認知症との向き合い方」
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介護の現場は、まるでコント!? マシンガンズ滝沢×介護芸人「明るい認知症との向き合い方」

月に一度開催されている、ごみ清掃芸人こと『マシンガンズ』滝沢秀一さん主催のイベント。第6回目は介護芸人として活動中の『マッハスピード豪速球』さかまき。さんをゲストに迎えておこなわれました。「介護」というと、なんとなく重苦しいイメージを抱きがちなもの。けれどもさかまき。さんによると、「じつは楽しくて明るい仕事」だというのです。

「介護芸人」誕生のキッカケは「ごみ清掃芸人」

「滝沢ごみクラブ」の定期イベント第6回目のゲストは、『マッハスピード豪速球』さかまき。さん(以下、さかまき)。芸人として活動しながら、デイサービスで10年以上介護職を務めているプロフェッショナルでもある。

滝沢 さかまきくんの介護歴は12年ということで。ボクはごみ清掃人を11年やっているから、ほぼ同じくらいにスタートしてるんだよね。

さかまき 芸人のかたわら、「宿泊できるデイサービス」というスタイルの介護施設で働いています。これまで200人以上の認知症の方々を介護してきました。勤務は基本的に、夜9時から朝9時までです。

滝沢 うわ〜、思いきり夜勤なんだ。けっこうハードなんじゃない?

さかまき 仕事内容は、介護対象者の安否確認、トイレや着替えの介助、朝食づくりと食事の際の介助、投薬、口腔ケア、バイタル測定、洗濯、掃除、書類作成と多彩です。ただし、トイレと着替えの介助以外は、ほぼほぼ朝の作業なんですよ。つまり夜間は待機時間が長くて、自分の時間も持てるんで、それほどハードとは思っていません。この仕事を選んだのは、そもそも、それが理由でしたし。

滝沢 なるほど。ボクは介護の世界をまったく知らないから、いろいろ教えてください! さかまきくんは、介護をユニークな視点で捉えてるんだよね。

さかまき じつは先日、電子書籍『介護なコントの世界』を出版したんです。守秘義務があって描けないことも多いんですが、主人公はまさにボクの分身。日々感じていることを綴らせてもらいました。

滝沢 読ませてもらって、介護のイメージが変わっちゃったんだよね。すごくよかった。芸人って、たとえ芸人としての仕事が少なくても、有能なんだなあとあらためて思ったよ。

お笑い芸人として活動を続けながら、「ごみ清掃」「介護」の世界で10年以上のキャリアを積んできたふたり。SNSや動画サイトで、その道のプロフェッショナルならではの発信を続けている

さかまき 「介護芸人」を名乗り始めたのは4年前くらいからなんですが、キッカケになったのは、何を隠そう、滝沢さんの存在です。「ごみ清掃芸人」として活動されている姿を見て、「あんなふうになれたらなあ」と、あこがれていたんです。

滝沢 そんなとき、あるイベントで一緒になって、「特技がないとテレビに出られない。ボクもそういうのがつくりたいんですけど、どうしたらいいですか」って相談してきたんだよね。

さかまき そう。そしたら滝沢さんに、「何のバイトをしているの?」って尋ねられて。「介護です」と答えたら、「それでいいじゃねえか!」と即答されたんです。「いま実際にやっていることを、芸人活動にもとり入れていくのが一番いいんだから」と言われて、「なるほど! そうなのか」と。そこに考えが至らなかった理由は、介護をお笑いに結びつけることが、世間からタブー視されているんじゃないかと思っていたからなんですよね。

滝沢 あ〜、それわかるわ。俺も前に、「ごみを笑いのネタにするな!」みたいなことを言われたことがあるよ。

お笑いコンビ『マシンガンズ』のメンバーとして活動しながら、ごみ収集会社に勤務。ごみ清掃員として働きながらごみと向き合うことで、さまざまな問題が見えてきたという

さかまき そもそも介護って、ネガティブな印象をもたれがちじゃないですか。ボクが思う「介護の三大イメージ」って、「暗い」「重い」「ツラい」、ですから。もっと言うと、親を介護施設に入れることは、「悪いこと」のようなイメージが世間にはある。昔ドラマで、「あんなところに行きたくない」と年老いた人が叫ぶシーンを見たことがあります。

滝沢 たしかに、それはあるかも。介護=認知症のイメージが強いしねえ。

さかまき そんなわけで、「介護施設で働いています」と言うと、「大変だねえ」と心配されたり、「えらいねえ」とほめられたりするわけです。ただしボクの実感としては、「そう? そんなに大変なの?」という感じ。介護施設も認知症も、決して暗いものじゃない。むしろ、明るいものだと思っているんです。

滝沢 ほ〜。そこのところを、詳しく話してもらいたいですねえ!

2010年に結成された「マッハスピード豪速球」の、さかまき。こと、逆巻裕哉さん。「介護芸人」としても知られ、本名で『介護芸人のコントな世界』(代官山ブックス)を発表。「笑える」介護のリアルを綴り、話題になっている

介護現場は、まさにボケとツッコミ

さかまき 認知症をネタにするのは、とくにタブー視されている感じがありますが、生前の志村けんさんは、ちゃんと笑いにされていたんですよね。おじいちゃんの扮装をして、『飯はまだ〜?』と言っては、若奥さんに扮した、いしのようこさんから、『さっき食べたばっかりでしょう』と叱られる。このやりとりを繰り返すというコントを演じられていました。

滝沢 あ〜。そういうコント、あったよなあ!

さかまき ボク、介護施設で働き始めた初日に、『ベルト事件』に遭遇したんです。施設の廊下で、教育係の先輩からいろいろ教えてもらっていたとき、施設を利用されているおじいさんが通りかかったんですが……。その方、なぜかパジャマの上にベルトをしてたんですよ。先輩職員が「あ、○○さん、ベルトは要らないですよ〜」と声をかけたら、おじいさん、「おお、そうか!」って、われわれの目の前でベルトを外して、そのままポーンとゴミ箱に捨てたんです! すかさず先輩が、「そこまで要らなくないです!」って口にしたのを見て、「なんて素晴らしいボケとツッコミ! これって、ショートコントじゃん」と思ったんですよね。

滝沢 あははは! なるほどなるほど。

さかまき 別の認知症のおじいさんで、ご飯を食べ終わると、3分も経たないうちに必ず「ご飯はまだか」と聞く方がいたんです。職員がその都度「もう食べましたよ」と言うんですが、「私を飢え死にさせる気か!」と暴れ始めちゃう。かといって、あまり食べさせるのも身体によくないですからね。職員会議で討議した結果、「半量にして、2回出す」という方法を試すことになったんです。

滝沢 うんうん、それで?

さかまき 残念ながら、2回目のご飯を食べ終えるとすぐ、「ご飯はまだか」と言われるという結果に終わりました。そこで再びみんなで知恵を絞り、食事が終わっても食器を下げないで置いておくという作戦に出たんです。おじいさんからしてみれば、ご飯はまだのはずなのに、目の前にカラの食器があるわけですよ。おじいさん、ものすごく悩んでいるようでしたが、それから1週間くらいは、「ご飯はまだか」と言わなくなりました。

滝沢 エ!? てことは、その1週間後にはまた……?

さかまき ハイ、そのおじいさんは、いい返しを思いついちゃうんですよね。目の前に置いてあるカラの食器を、「これ、私のじゃないですね」とキッパリ言い切ると、「ご飯はまだか」のループに戻ってしまったんです。そこでまた、職員会議ですよ。討議の結果、今度は食後に感想文を書いてもらうようにしたんです。「煮物がおいしかった」「味噌汁の味が濃かった」とか。認知症であっても自分の筆跡はけっこう覚えているものらしく、自分の手で書いた感想文だと皆さん、「これ、私のじゃないですね」とは言わないんです。そのおじいさんも、いまのところ「ご飯はまだか」のループをしなくなっています。

滝沢 おもしろいなあ。とんち比べみたい! そういう具体的な解決策を、いろんな介護施設と共有できたらいいよね。

さかまき 実際、「この作戦を介護学会で発表しませんか」と同僚に言われました。そうやってスタッフみんなで、いろんな課題に対する解決策を考えているのが介護施設。「ああでもない、こうでもない」とみんなで考えているときは、本当に楽しいんですよ。

滝沢 「みんなで」というのがポイントかもね。自宅でひとり、親の認知症に向き合っていると、きっとツライことも多いでしょう。

さかまき たしかに、そうかもしれませんね。みんなで考え、向き合っていると、何とか介護も明るくやっていけるもんなんですよね。

——後半ではさらに、「明るい介護」を考察していきます——

text:萩原はるな

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