小説家・大前粟生「ジェンダー問題を考える&学ぶ本」
社会問題に対して、さまざまな方法で姿勢を表明している小説家の大前粟生さんがジェンダー問題を考える、勉強する、身近に感じる本をご紹介。誰もが関係する大切な性別にまつわる問題について、多角的に読み解ける2冊です。
男性にも厳しい
“男性優位社会”を考える
現代社会でジェンダーの不均衡について不当なことがずっと続いてきて、この社会は本当に気味が悪い、と最近になってたくさんの人が気づきはじめてきたように思います。自著『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』では、男性社会が生きづらいと感じている男性を描きました。私自身も日々そう感じています。
漫画『男社会がしんどい』は、タイトルを見たときに「ほんま、せやで……」と思いながら購入しました。タイトルのとおり男社会のしんどさと、ここ数年で高まってきたそれをおかしいと思う世間のムード、そしてそれでも根強くある女性差別的な社会の理不尽さがよくわかります。
『私たちにはことばが必要だ』が扱うのは“ジェンダー”というよりも“フェミニズム”。差別をしてくる人への怒り方が書いてあり、自分を守る気持ちを高めてくれます。自分の怒りに戸惑ったりしなくていいし、間違ったことを言ってくる人たちのことや、怖い人たちのことは堂々と無視したらいい。理不尽を被っている側がなんで気をつかわなきゃいけないんだ、と読む人の気持ちを研磨してくれます。これからの世の中が、せめて自分より年下の人たちや、未来に生まれる子どもたちにとって少しでも生きやすいものになってほしいと願っています。
男社会がしんどい 痴漢だとか子育てだとか炎上だとか
田房永子
痴漢された被害者が悪いと責める現実や、働く女性に対する社会の声など、日常で感じる違和感に声をあげた作者。理不尽な男社会を考え直そうと提言する。竹書房刊。
私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない
イ・ミンギョン/著、すんみ、小山内園子/訳
フェミニズムムーブメントが盛り上がる韓国で、2016年に出版。日常にあふれる女性差別や暴言に対し、苦痛や我慢を避けられるように、どんな言葉や態度で返答すればいいのかをまとめたマニュアル本。タバブックス刊。
PROFILE
大前粟生 おおまえ・あお
小説家。2016年にデビュー。20年12月に100の小説と絵の本『岩とからあげをまちがえる』(ミシマ社)を刊行した。21年1月には、価値観の変化に揺れるお笑い芸人を描いた小説『おもろい以外いらんねん』を河出書房新社より刊行した。
●情報は、FRaU2021年1月号発売時点のものです。
Photo:Toru Oshima Illustration:Adrian Hogan Text & Edit:Saki Miyahara
Composition:林愛子
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