途上国のプラごみからつくられる「新しい脚、新しい人生」
海を守る、持続可能な社会への方法は、さまざまにあっていい——。各国のユニークな取り組みからは、文化の違いも見えてきます。今回は、スイスの義足プロジェクトをご紹介します。
環境問題を解決しつつ低コスト
工業デザイナー2人の革新的アイデア
もとはチューリッヒ芸術大学の学位プロジェクトだったという「Project Circleg」。発展途上国では、交通事故や医療不備、武力紛争などのために義足を必要とする人の数が多いが、機能や価格、入手方法の面で難しさがある。
そう考えたインダストリアル・デザイナーの2人は、同じく途上国のごみ問題にも関心があり、2つのトピックを組み合わせるアイディアを思いつく。
それは、現地のプラスチックごみをリサイクルし、低コストの義足を実現すること。環境問題を解決できるだけでなく、多くの人に機能的で低価格の義足を供給でき、またその地で生産を行うことで、雇用も生み出せる。
そして2018年、機能面もデザインも申し分ない義足が完成した。
実際に必要とする人々の意見を反映したこの義足の一番の売りは、しゃがめることだ。なぜなら途上国のトイレは日本の和式と同じスタイルで、従来の義足ではそれが難しかったのだという。「新しい脚は新しい人生でもある」と語る2人。立ち上げから1年で8つのアワードを受賞、今後の進化が楽しみなプロジェクトだ。
projectcircleg.com
●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
Coordination:Yumiko Nakanishi Text & Edit:Asuka Ochi
Composition:林愛子