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小林エリカが選ぶ3冊「海と戦いを描いた本」
小林エリカが選ぶ3冊「海と戦いを描いた本」
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小林エリカが選ぶ3冊「海と戦いを描いた本」

およそ700万年の人類の歴史のなかで、この数十年の間に、私たちは海のシステムや海洋生物、美しい自然の数々を破壊してしまいました。海の被害は私たちが考えている以上に深刻なもの。でもまだできることがあるはず。海を変えるために、自分が変わることからはじめてみませんか?

本を読んでみることもそのひとつ。本の世界も果てしなく広がる海のように、自然や生物、文化、歴史、哲学、冒険、あらゆる事象につながっていきます。深い深い「本の海」へ潜ってみましょう。今回は、海を愛する作家・漫画家の小林エリカさんに選んだ3冊を、小林さんの好きな海&海の思い出とともにご紹介します。

『影との戦い ゲド戦記1』
アーシュラ・K. ル=グウィン/著 清水真砂子/訳

架空の世界の話にもかかわらず、多島海のディテールが民俗学的調査の様相を秘めているのがすごい。主人公らが最果ての海へと漕ぎ出してゆくさまは、大航海時代、はじめて大海へ出てゆく人たちの気持ちを追体験するよう。海を舞台に光と闇の対峙する人間の心の葛藤が際立っています。(岩波書店)

『深海からの声 U ボート234 号と友永英夫海軍技術中佐』
富永孝子/著

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツから潜水艦「灰色の狼」Uボートに乗り、日本に向かった日本軍人を追ったノンフィクション。極秘の積み荷は日本の原子爆弾開発に必要なウラン235。敗戦色が強まるなか、それぞれの想いを胸に海を進むさまは手に汗握るし、日本人の家族、ドイツ人の乗組員、積み荷のゆくえなどを粘り強く追う作者の姿勢にも胸打たれます。(新評論)

『きみはうみ』
西加奈子/著 

深海の闇にはじまり、人生までを考えさせられる絵本。あとがきにある「日陰だって、真っ暗だって、それがその人にとって大切な場所であったなら、絶対に美しい。もちろん、光があたる場所も。とにかく誰かがそこで生きている、そのすべてが美しいのだ」が真理を宿していて、海は、人生は、いつもキラキラしているだけが美しいわけじゃないことに共感します。(スイッチパブリッシング)

小林さんの「最愛の海」

バルト海

小林さんの「海の思い出」

琥珀がとれるバルト海周辺の国々を船で回った。デンマークのコペンハーゲンからロシア、エストニア、ノルウェーなど周遊してみたら、海というものがこれまでも、そしていまでも貿易や戦争にどれほど重要なのかがわかり面白かった。地球の上ではどんな場所も海を介してつながっているという感覚を、肌身で感じられた。

PROFILE

小林エリカ こばやし・えりか
作家・漫画家。1978年東京都生まれ。『マダム・キュリーと朝食を』で芥川賞候補に。コミック『光の子ども3』(リトルモア)、小説『トリニティ、トリニティ、トリニティ』(集英社)が発売中。

●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

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