モデルKIKIが選ぶ3冊「こころと体が漂流する本」
およそ700万年の人類の歴史のなかで、この数十年の間に、私たちは海のシステムや海洋生物、美しい自然の数々を破壊してしまいました。海の被害は私たちが考えている以上に深刻なもの。でも、まだできることがあるはずです。海を変えるために、自分が変わることからはじめてみませんか。
本を読んでみるのもそのひとつ。本の世界も果てしなく広がる海のように、自然や生物、文化、歴史、哲学、冒険、あらゆる事象につながっていきます。深い深い「本の海」に潜ってみましょう。今回は、海を愛するモデルのKIKIさんが選んだ3冊を、KIKIさんの好きな海&海の思い出とともにご紹介します。
『漂流』
角幡唯介/著
37日間の漂流から奇跡の生還を果たした沖縄のマグロ漁師を追ったノンフィクション。救出から8年後、彼は再び漁に出て行方不明になる。何が彼を動かしたのか。漁師本人のことだけでなく、漁や漁師町の歴史なども紐解きつつ謎に迫るストーリーは、探検家でもある著者自身が冒険をしているようで読み応えがある。(新潮社)
『孤島の祈り』
イザベル・オティシエ/著 橘明美/訳
女性初の単独世界一周ヨットレース完走を果たした海洋冒険家による漂流小説。南極近くの無人島で遭難した夫婦。島での壮絶な生活がはじまると信頼の絆は綻んでいく。救助された主人公はこころと体の両方をさまよわせてしまうが、過酷な運命を突きつけるものの正体を知ると、さらに胸が締めつけられる。海でなくても「漂流」はする。これは身近で起こりうることなのかもしれない。(集英社)
『海の仙人』
絲山秋子/著
宝くじの当選をきっかけに仕事をやめ、ひとり敦賀の海で暮らす主人公。突然現れた神様と元同僚女性、恋人。彼らが過ごす時間は穏やかで、その心地よさに身をゆだねたくなる。しかし流れ着く先を知ったときには取り返しがつかない。心地よさの正体は「孤独」であったと主人公は知る。こころの漂流を書いた一冊。(新潮社)
KIKIさんの「最愛の海」
東京湾、マルセイユのカランク
KIKIさんの「海の思い出」
東京湾内で1級小型船舶免許を取るための講習を受けたこと。以前からヨットに乗る機会があり、もっと海や船の構造、気象などを知りたいと思い取得。生まれ育った東京の海で勉強できたらと芝浦のスクールを選びました。見慣れた運河を通ってレインボーブリッジをくぐり、海へ。海から見る東京の景色に、毎回感動していました。
PROFILE
KIKI きき
モデル。1978年東京都生まれ。雑誌や広告のモデルとして活躍しながら、エッセイの執筆、写真撮影など幅広い分野で才能を発揮。著書に『美しい山を旅して』(平凡社)、『山が大好きになる練習帖』(雷鳥社)など。
●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子