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星野概念が選ぶ3冊「観念的な海を感じさせてくれる本」
星野概念が選ぶ3冊「観念的な海を感じさせてくれる本」
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星野概念が選ぶ3冊「観念的な海を感じさせてくれる本」

およそ700万年の人類の歴史のなかで、この数十年の間に、私たちは海のシステムや海洋生物、美しい自然の数々を破壊してしまいました。海の被害は私たちが考えている以上に深刻なもの。でもまだできることがあるはず。海を変えるために、自分が変わることからはじめてみませんか?

本を読んでみることもそのひとつ。本の世界も果てしなく広がる海のように、自然や生物、文化、歴史、哲学、冒険、あらゆる事象につながっていきます。深い深い「本の海」に潜ってみましょう。今回は、海を愛する精神科医の星野概念さんが選んだ3冊を、星野さんの好きな海&海の思い出とともにご紹介します。

『海』
加古里子/著

海の生態系の多様さ、複雑さを精緻(せいち)に描き、歴史についても思いを馳せさせてくれる絵本。「うみを しらべて いつのまにか ちきゅうを ぐるりと まわって しまいました。そうです、うみを しらべることは ちきゅうを しらべることなんですね。」という一文は、海は広いな大きいな、そして未知だなと感じさせてくれます。(福音館書店)

『断片的なものの社会学』
岸政彦/著

人間界も海のように果てしない。社会学者である作者は前書きで「できごとの無意味さ」に惹かれると書いています。考えてみれば、人の日常は物語として抽出されるまでもないできごとがほとんどです。それはきっと海中の生物が誰にも知られずに生きているのと変わりありません。「ただそこにあるものを集めた作品」というのは稀有(けう)だし、海を感じます。(朝日出版社)

『もやしもん』
石川雅之/著

肉眼で微生物を見られる農業大学生が主人公のマンガ。微生物の生態を想像するとき、深い海のイメージが重なります。見聞きしたことのない生物が静かに漂っている。その営みは恐らく原始的で、忖度など人間が悩まされるまどろっこしさはありません。生きるために活動する、以上。なんて潔いのでしょう。海の生物も微生物も、自由だ!(講談社)

星野さんの「最愛の海」

江の島の西浜と、江の島まで渡って裏のほうにある海

星野さんの「海の思い出」

大学生のとき、江の島によく行っていました。ふさぎがちに過ごしていたこともあり、夏の海は楽しそうすぎて嫌いでした。寒い季節の夕方に海に行き、誰もいない波打ち際で波の音を聞きながらぼーっとしているのが好きでした。単調で深い波の音と、夕方が夜に飲まれていく空の感じ、広すぎる海に癒やされていたような気がします。

PROFILE

星野概念 ほしの・がいねん
精神科医。1978年東京都生まれ。総合病院の精神科医として勤務する傍ら音楽活動も行う。ウェブや雑誌などで連載を持つなど、文筆家としても活躍。いとうせいこうとの共著に『ラブという薬』(リトル・モア)。

●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

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