未来館で体験した「ソファみたいなクルマ」「巨大ロボ」がスゴすぎる!【中編】
あなたはもう、日本科学未来館(以下、未来館)を満喫しましたか? 私は……ハイ、しちゃいました!
東京・お台場(正確には江東区青海2丁目)にある未来館は、子どものみならず、大人が楽しめる体験型のアミューズメントパークなのだということ、前編ではサワリだけ紹介しました。あの記事を見て、すでに未来館に向かった読者が大多数だとは思うのですが……お待たせしました! 今回の中編では、「まだ行けてないよ〜」という方のために、未来館で開催中のイベント「空想⇔実装 ロボットと描く私たちの未来」や特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」(いずれも8月31日まで)で展示されている最新モビリティ&ロボットについて詳報します!(中編)
ゲーム慣れした子どものほうが
運転技術は上だった!
未来館に入ってすぐ、1階のシンボルゾーンでは、前述の「空想⇔実装」イベントが開催されている。その目玉のひとつが「ソファが乗り物になった移動ロボット」というフレコミの「poimo(ポイモ)」試乗会だ。取材日が夏休み期間中だったこともあって、会場前には長蛇の列。親子連れや少年少女グループが目を輝かせながら順番待ちしている。
この日、用意されていたpoimoは、座面奥行き長めのグレーのソファに、車輪が4つついただけのシンプルすぎるルックス。キャッチフレーズは「新しいパーソナルモビリティ」で、あくまでロボットの一種だそうだが、のんびりしたユーモラスな雰囲気は「動くソファ」のほうがピッタリくる感じだ。
長時間並んだ甲斐あって、筆者に試乗の番が回ってきた。poimoのボディに触れてみる。や、やわらかい。だが、グニャッという感触ではなく、少しザラついた表面にはしっかりハリがあって……そう、パンパンに空気が詰まったバルーン(風船)遊具って感じなのだ(実際、このボディは空気を入れて膨らませているそうだ)。低速なら、人体にぶつかったとしてもたいしたダメージは残らないだろう。
poimoに乗ってみる。きわめて快適。クルマや機械というより、やっぱりソファだ。案内してくれた未来館・広報の早川知範さんに教えられたとおり、スティックつきコントローラーで走らせてみる。アレッ? ユルユルと真っ直ぐは進めるものの、ぜんぜん曲がれないんですけど〜!
「落ち着いてください。poimoはふつうのクルマなどと違い、後輪の回転数を左右で変えることによって曲がる構造になっているのです。前輪はただ、それに伴って動くだけ。poimoに関しては、運転免許を持っている方、ふだんクルマを運転している人より、ゲーム慣れしている子どもたちのほうが操作技術が上だったりします」(早川さん)
なるほど。ボートを漕ぐとき、左に曲がりたいなら右のオールをたくさん動かすし、右に曲がるなら左を多くかく。その原理でpoimoも右後輪の回転数を上げたり、左をたくさん回したりなどして曲がっているのか……と、それは理解できてもぜんぜんうまくいかない。早々に後進に道を譲るべく、筆者の後ろで、いまかいまかと待っていた少年にバトンタッチする。すると──たしかに! マリオカート・シリーズ(任天堂)などでゲーム上の運転に慣れているこの子のほうが、はるかにpoimoをうまく操っている。連続カーブもお手のものだ。
私はやや落ち込みながら、ひっそりと展示されている他のpoimoを見る。ミニバイク、というよりメリーゴーランドの木馬を小さくしたような形のpoimoは、厚みが30cmほどしかない。
「これなら、ソファ型と違って、狭いところも、ゆうゆうスリ抜けられますよね。しかも、とっても軽いんです。ちょっと持ち上げてみてください」
早川さんに促され、バイク型poimoを持ち上げてみる。軽い! パイプイス1脚分ほどの重さで、これなら女性や子どもでも楽に動かせるだろう。しかも、poimoのボディは空気を抜けば小さく折りたためもする。ボディの形も、自由にカスタマイズできるらしい。
「将来的には、poimoを折りたたんで旅先に持って行ったり、使用者に負担の少ない軽量の車椅子にしたりと、いろいろな活用法が考えられます」(早川さん)
こんな、ゆるキャラみたいなクルマがあふれる世の中も、悪くない気がする。
かわいい顔して恐ろしい!?
感情がバレバレになるネコミミ
つづいて特別展「きみとロボット〜」に移る。会場入ってすぐのZone1「ロボットって、なんだ?」には、1973年につくられた世界初の人型知能ロボット「WABOT-1」をはじめ、1999年の家庭用エンターテインメントロボット「AIBO」、2000年開発の二足歩行ロボット「ASIMO」(展示は2011年発表モデル)、2014年の「感情をもつ」人型ロボット「Pepper」など、なつかしくもおなじみの顔ぶれが並ぶ。マジで1時間見ていても飽きない。
で、次のゾーンに設置されているのが「necomimi(ネコミミ)」だ(上写真)。夜の繁華街やアミューズメントパークなどで浮かれきったパリピが好んでつけそうな、ただのカチューシャに見えるが、そこは未来館の展示品。実は人間の脳波をセンサーで読み取り、装着者のそのときどきの「気持ち」を形で表すという、恐るべきマシーンなのだ(だってまわりの人に感情がバレますからね)。未来館の説明によれば、「ネコミミ型のカチューシャに内蔵されたセンサーで脳波を読み取り、装着者の気持ちを音とミミの動きで表現するウエアラブルデバイス」とのこと。
さっそく装着してみる。他人からどう見えているか(不気味かどうか)はこの際、気にしない。ネコミミはピンと立ったまま。つき添ってくれた未来館の広報、曽山明慶さんによれば、
「気持ちが集中しているときは、ミミが立って『ニャー』とネコの鳴き声がします。反対に、気持ちが落ち着いてリラックスできているときは、ミミがペコンと寝て、『ゴロゴロ』というネコのノド鳴らし音がします」
とのこと。こういうときもリラックスできて、平常心を保てる大人な自分でありたい。そう思えば思うほど、ミミはピンと立ってしまう。ダメだなあ、私……とネコミミを外そうとしたとき、ようやくミミがペコッと寝てくれた。ああ、まさにネコのように、人間の思いどおりにはならぬヤツよ。
誰もが「アニメの主人公」になれる
巨大ロボから地上を見下ろす!
そしてさらに会場奥に入ると、いかにも、という感じの巨大なロボットたちが見えてくる。なかでも目立つのが、上写真の汎用人型重機「零式人機 ver.1.2」だ。そもそもは高所での重作業を、操作する人の思いどおり直感的に、安全かつ緻密に行えるようにと開発されたロボット。未来館では、VRゴーグルを装着して、高〜いところにあるロボットの目から地上を見下ろす体験ができるらしい。といってもイマイチ、ピンとこない方(実際、私がそう)のために、未来館の副館長、高木啓伸さんの解説を聞こう。
「未来館は、最新技術の体験の場でもあります。たとえば、ロボットが進歩することで何が起きるのか、われわれの生活がどう変わるのかを体感していただける展示のひとつが、零式人機です。これは、まるでアニメに出てくる巨大ロボットの操縦席に乗り込んだかのように、そのロボット目線で、はるか下にいる人々などを見下ろし、周囲を見渡すなどできるもの。それだけでなく、操縦席からロボットの強力な腕を遠隔操作で動かすことができる特別イベントも開催しました。
たとえば、このロボットが災害現場で使われれば、もしかしたら災害復旧を早められるかもしれない。工事現場で使用すれば、効率よく安全に工事が進められるかもしれない。このロボット技術を応用すれば、介護だって遠隔で行えるようになるかもしれない。来館者の皆さんは、この零式人機を体験するだけで、きっとそうした想像ができるのではないでしょうか」
そ、それはスゴい! さっそく操縦席に乗り込み、VRゴーグルを装着してみる。そのまま顔を下に向けると……いるいる。かなり下のほうに人が立っていて、こちらに手を振ってくれている。「待ってろよ。いますぐ、みんなを助けてやるからな。美しい地球を守るのは私しかいない!」。たちまちロボットアニメの主人公になったかのように盛り上がってしまう。なんて気持ちがいいんだ!
と、ハシャいでいるうちに、もうこんな文字数。まだまだ紹介したい展示や催しが目白押しなので、続きは後編で。次回は、未来館などが開発にかかわる最新技術「AIスーツケース」など、アクセシブルな社会づくりのための取り組み等をお届けします!
Photo:佐藤弓美 Text:舩川輝樹