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漂着プラスチックをアートに変える、ある夫婦の物語
漂着プラスチックをアートに変える、ある夫婦の物語
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漂着プラスチックをアートに変える、ある夫婦の物語

海岸に漂着、あるいは砂浜に落ちているプラスチックごみを拾い集めて作品をつくる、サンフランシスコ郊外在住のアーティスト夫妻のプロジェクトOne Beach Plastic。2人が取り組む活動を見せてもらうために、キホービーチの海岸を一緒に歩きました。

創意工夫とアイデアで
漂着ごみを美しいものに

遠くから見るととても美しい海岸だが、ひとたび砂浜を歩くと10分も経たないうちに、ごみが集まった

海のごみをアートに変えよう、そんな取り組みを各国のアーティストがはじめているが、アメリカのリチャード・ラングとジュディス・セルビーのアーティスト夫妻はその先駆けといえる。

原形をとどめていないプラスチック破片も多い

1999年からOne Beach Plasticというユニークなアートプロジェクトを続けている2人。その活動は、マリン郡ポイントレイズ国定海岸内にあるキホービーチに打ち上げられたプラスチックごみのみを使い、アートをつくるというもの。20年以上にわたる活動のなかで生まれた作品の数々は、本当に捨てられたプラスチックからできているのかと目を疑うほどに、ユニークで斬新。心躍るものに昇華されている。

2人が暮らすのは、サンフランシスコ郊外の閑静な住宅街。ゆるやかな坂道を登った高台に住まいはあった。お邪魔すると、棚や壁一面に彼らの活動から生まれた数々のアートワークが飾られていて、さながらギャラリーのようでもある。

プラスチックごみを使った表現方法はさまざまで、色別に集めて構成したものを高感度レンズで撮影したり、博物館にある標本に見立てたり、同類のものをガラス瓶に入れてディスプレイしたりと、アイデアは目を見張るものばかり。「ちょっとこれ見て」とジュディスが自分のブレスレットを差し出す。

「海で黒い発泡スチロールのかたまりを見つけてね。細かく砕いてみたら小さな穴があったので、糸を通してつなげたの。よくできたから、もっとつなげて寝室の壁にディスプレイしてるのよ」

他にも、劣化したビーチサンダルやスーパーボールなどをネックレスに。カットしたり、編んだり、縫ったりと、裁縫の得意なジュディスが少し手を加えることで、ごみは一風変わった美しいアクセサリーに生まれ変わる。ちょっとの工夫とアイデアでリユースできるものがたくさんある、そして誰でもできることなのだと、それらの作品は教えてくれる。

1996年に出会った2人。美術書の出版などを手がけるリチャードと、教師だったジュディスは、以前からそれぞれプラスチックごみを集め、アートをつくっていたという。

「キホービーチを美しくするためのボランティアに行ったら、プラスチックごみが7袋分にもなった。捨てたらまたごみになるから、そのなかからきれいなものを探してアートにすることにしたんだ」とリチャード。

そんな彼に連れられ、初めてのデートでキホービーチを訪れ、美しさに魅了されたというジュディスは、「プラスチックごみを拾うような男性となら結婚しても大丈夫って思ったわ」と笑う。そんなふうにして、夫婦生活とともにOne Beach Plasticの活動もスタートした。ジュディスいわく「私たちがやっていることは『海岸のごみ拾い』だけではないの。大好きな海岸から、必要なアートピースを探しているのです」

プラスチックごみといえば、ペットボトルやそのキャップ、ストローなどに注目が集まるが、漂着物はそれだけではない。ストックしている倉庫を見せてもらうと、コーヒーチェーンのマドラー、食品のパッケージ、おもちゃの車や人形、おしゃぶり、漁網やブイ、ライター、お菓子の棒、ヘア用カーラー、歯ブラシ、リップバームの容器、タンポンのアプリケーターと、海はこんなにもプラスチックごみであふれているのかと愕然とする。アメリカで人気の駄菓子についているヘラは、650本も集めたという。そして日本、中国、韓国などアジアのラベルも多く目につく。すべてキホービーチに落ちていたものだ。

さらにリチャードが見せてくれたのは、ビーズサイズのプラスチック。劣化により細かくなったもので、このまま放置されれば、5㎜以下のマイクロプラスチックになっていくものだ。

自宅やアトリエ、倉庫には、20年以上にわたり海岸で拾ったプラスチックが蒐集されていた。海岸で拾ったあとは、洗って、種類別に。破片は、色、形、サイズごとに分けてストック。その後、何をつくるかを考えるという。夫妻の手によって、やがて美しいアートワークに変換される。「プラスチックは世界の環境を脅かすよくないものですが、現代の象徴として表現することで、世界の人たちの気づきになればいい」と2人

「いままではパッと目につく、比較的大きなものを拾っていたんだけど、最近足を悪くしてね。あまり動き回れないから、座って半径数メートルの範囲で探し始めたんだ。砂をすくってみたら、一見貝殻のようなものが、ビーズサイズのプラスチックだった。世界の他の砂浜も、いまそんな状態なんじゃないだろうか」

2人はそれらを、漂着プラスチックの有害物質を調べる日本の専門機関に定期的に郵送し、調査に役立ててもらっているという。

キホービーチには、海流の関係で冬の間にいろんなごみが流れつく。とくに1〜2月は1週間に1回、海岸に出かける。リチャードは続ける。「One Beach Plasticで一番大切にしているのは、ポイントレイズのキホービーチ、そして約1㎞の海岸線のみの活動と限定していること。プラスチックごみは、とても大きな問題です。だから、かえって自分のこととして捉えられない人も多いのでは? こんなに狭い範囲でこれだけのごみがあるという現状。僕らが1㎞以内に限定することで、人々はすぐにこの問題の大きさに気づくでしょう」

PROFILE

リチャード・ラング、ジュディス・セルビー・ラング
1999年からOne Beach Plastic プロジェクトをスタート。2人の作品は全米70以上の美術館やギャラリーで公開され、その活動はショートフィルムにもなり、注目を浴びた。「海のごみをアートに変える」ワークショップは、大人から子供まで大人気を博す。beachplastic.com

●情報は、FRaU SDGs MOOK OCEAN発売時点のものです(2019年10月)。
Photo:Norio Kidera Coordination:Akiko Fujino Edit & Text:Chizuru Atsuta

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