Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

都立高校では約8割が女子スラックスを導入! 学校制服の最前線
都立高校では約8割が女子スラックスを導入! 学校制服の最前線
TOPIC

都立高校では約8割が女子スラックスを導入! 学校制服の最前線

近年、スラックスの制服を着こなしている女子中高生を見かけるようになりました。東京都教育委員会の調査によると(※1)、都立高等学校での女子スラックスの導入校数は2016年度の93校(51.7%)から、2021年度は147校(80.8%)と大幅に増加。これは「学びの場のインクルーシブ」を実現する取り組みのひとつとして推進されていて、全体傾向を知るための指針になります。現代の制服事情について、学生服メーカーの菅公学生服(以下、カンコー学生服)の企画推進部部長の吉川淳稔さんとカンコー学生工学研究所の澤埜(さわの)友梨香さんに伺いました。

※1教育庁「都立高校における制服の自由選択制導入の推進について」2022年公開

ーーー後編はこちらーーー

女子スラックスは、なぜ2020年から大幅採用されたのか?

まずは下のグラフをご覧いただきたい。これはカンコー学生服の女子スラックス採用実績で、目を引くのは2020年以降の急激な増加ぶりだ。

時代の流れや2020年のコロナ禍を経て、「制服とは何か」「多様性とは何か」を見直した学校も多かったのだろう

そもそも女子制服のスラックスはこのグラフにある1997年以前より、寒冷地や女子スポーツが盛んな学校などで、防寒対策を理由に導入されていた。しかしアイテムとしては存在するものの、「はかない」選択をする生徒が多かったという。

2005年前後に一時期増えているのは、同年3月にODAによる「ジェンダーと開発」が策定・発表されたことが要因のようだ。

しかし、多くの学校が導入へと舵を切りはじめた大きな契機は、2016年に文部科学省から『性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について』という手引が発行されたことによる。

「手引が発行された2016年に、すぐに動いた学校と、事態を見守られた学校がありました。誤解を恐れずにいえば、その当時はまだ『スラックスを採用すること』自体が目的になっていた印象です。しかしこの2年ほどで、スラックスを導入される学校は目に見えて増えており、『ものをつくる』という観点からも生産体制を見直さなければいけないほど数が出ています。とはいえ、全体的にはまだまだスカートを採用している学校が圧倒的に多いです。

スラックスの導入数が増えたのは、気がねなくはくことができる環境が整ってきた、ということなのだと思います」(吉川さん)

「環境が整う」とはどういうことなのだろうか。「個人的な見解ですが」と前置きしたうえで、吉川さんは語る。

「いろいろな理由が考えられますが、ひとつにはメディアの影響が大きいのではないでしょうか。テレビに出られている方などが自身のセクシュアリティについて発言されたり、オープンにされる機会が増えたりするなど、当事者の方々の努力によって、一定の認知が進んだのだと思います」(吉川さん)

近年では、教育現場でも多様性や個別最適化が提唱されるようになり、「スカートをはきたくない」という女子生徒に対応するため、スラックスが導入されているという一面もある。

「女子スラックスを採用している学校の生徒たちからは、『自転車通学の際や寒いときには、スラックスがいい』という声が出ています。女子スラックスが導入された当初は、LGBTQへの配慮を目的に導入する、と発信される学校が多かったように思います。しかし最近では、機能面や防寒のため、と発信される学校がかなり増えてきました」(澤埜さん)

性的マイノリティへの配慮からはじまり、現在はダイバーシティ化により、女子スラックスの導入が一気に広がりはじめたのだ。

女子スラックスに対する意識の世代間格差は?

あなたは、女子制服として、スカートとスラックスのどちらも着用を選べる学校があることを知っていますか(単数回答)。
カンコーホームルーム調べ【Vol.198】「女子スラックス導入の状況」2022年
10〜60代の男女を対象に行われたリサーチ結果。年代別に当事者である10代の認知度の高さは当然ながら、孫がいるような世代での認知度が高いことにも注目だ

こうした世の中の流れがある一方で、実際の教育現場ではさまざまな年代の先生が教鞭をとっている。教職員の女子スラックスへの意識はどのようなものなのだろうか。

「先生方の捉え方は、個人によって多少違いはあると思います。しかし、多くの先生方はジェンダーギャップに悩んでいる生徒の姿を目の前で見ているので、理解するために寄り添っていると感じます」(吉川さん)

LGBT総合研究所が全国の20〜60代、約42万人に対して、2019年に実施した意識行動調査によると、LGBT・性的マイノリティに該当する人は10%となっている。多感な思春期に、自分自身の性について違和感や悩みを抱えている生徒が各学年に何人もいるのだ。

「導入が進んできた女子スラックスですが、当初は制服を変えるときに、『トランスジェンダーの生徒が入学するという理由からなのでは』などと邪推されたり、対象者探しが行われたりするのでは、と気を揉まれた先生方もいました」(吉川さん)

カンコー学生服では、トランスジェンダーをカミングアウトし活動している西原さつきさんと組んで、生徒向けと教員向けの講演会などを行なっている。澤埜さんは、この取り組みのメンバーのひとりだ。

「最近は教育委員会の方々が先生向けの講演会を企画し、みんなで子どもたちの多様な性のあり方について学んでいこうという動きもあります。企画内容も『当事者である生徒の保護者や他の生徒に、どう伝えたらいいのか』など、具体的なシーンを想定したアドバイスを含むものが増えている印象。当事者の方たちの声を、弊社を通じて届けていく場になっているようです」(澤埜さん)

生徒の多くが3年間着つづける制服。みんながストレスなく着られるには、こうした環境づくりがとても重要なのだ。

ーーー後編はこちらーーー

text:市村 幸妙、写真提供:菅公学生服株式会社

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!