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この夏、全国300ヵ所以上で開催! いまビーチクリーンが気になるワケを、体験しながら考えてみた【前編】
この夏、全国300ヵ所以上で開催! いまビーチクリーンが気になるワケを、体験しながら考えてみた【前編】
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この夏、全国300ヵ所以上で開催! いまビーチクリーンが気になるワケを、体験しながら考えてみた【前編】

いま、日本全国で『ごみ拾い』がちょっとしたブームになっています。SDGsとかサステナブルとか、そういう目的ももちろん大切だと思うけど、もっと単純に楽しくて気持ちいい日常の活動として、まるでラジオ体操のようにごみ拾いを楽しむ人も。そんな楽しさの秘密はどこにあるのか、実際にイベントに参加しながら考えてみました。

どこまでも続く青い空と、穏やかな波のすぐ下には広い珊瑚礁を抱くエメラルドグリーンの海。そして足元に目を向けると、真っ白な砂浜の上に、流れ着いた無数のごみ。

そんな残念な風景が、世界中のビーチで “よくある景色”になってしまっている。下の写真は、Do well by doing good.jp(FRaU)編集部のスタッフが、九州のある海岸で撮影したもの。これら、海洋に流出するごみの約8割は、実は海岸から遠く離れた都市部から風や川によって海に運ばれたものだという。

街から流れついた日用品から海外のものと思われる容器まで、リゾートなどでもさまざまなごみが海岸に打ち上げられている

海ごみの問題に対して、私たちには何ができるのか。

海にまつわる環境の問題は、地球温暖化の影響や乱獲など枚挙にいとまがないが、なかでも海に流出するごみ、そして海洋プラスチックについては重要な課題だ。世界では毎年800万トンものプラスチックが海洋に流出し、2050年には海洋プラスチック量が魚の量を超えると試算されている(2016年ダボス会議)。さらに海洋プラスチックは太陽の紫外線や波の影響などで粒子化し、5㎜より小さいものはマイクロプラスチック、1000分の1㎜より小さいものはナノプラスチックとなり、私たち人間を含む生物の体内に取り込まれている。そしてナノプラスチックは、細胞膜をも通り抜けることができるサイズであることから、細胞内、血管内にも蓄積されているという研究結果も出ている。

そのような事実から目を背けずに現実を理解することは大切だが、“自分たちに何ができるか”ということを考えてアクションを起こす(Doing good)ことができれば、きっと少しずつでも世の中がいい方向に変わっていく(Do well)はず。ごみ拾いやビーチクリーンのイベントが各地で開催されはじめ、年々その数が増えていることは、世界の海洋ごみの量から考えたら小さなことかもしれないが、私たちのアクションが世界を変えるきっかけになるという点ではとても大きな意味があるのだと思う。

7月18日の海の日を中心とする7月1日~31日の1ヵ月の間に、日本国内300ヵ所でビーチクリーンイベントなどが開催されるという。日本中の団体が、ごみ拾いや環境活動を探せるサイト「BLUE SHIP」などを通して情報交換を行い、ネットを介してだが手を取り合って同じタイミングで海に思いを馳せた。

編集部ではそれらイベントのうちのひとつ、7月18日に藤沢の片瀬東浜海水浴場で開催された「第177回海さくらゴミ拾い ブルーサンタ2022@江の島」に参加してきた。実は筆者自身、FRaUやDo well by doing good.jpを通してさまざまなイベントに接してきてはいたものの、実際にビーチクリーンのイベントに参加するのははじめて。“興味はあるものの、これまでなかなか一歩を踏み出せていなかった人・代表”として、以下、当日の模様をお届けします!

藤沢の片瀬東浜で開かれたごみ拾いには1917名もの参加者が(photo 上重 泰秀)

「海さくらゴミ拾い」は、“楽しみながら海をきれいにしていく”をコンセプトに2005年からビーチクリーン活動を続けてきた老舗イベント。7年前から海の日のビーチクリーンは「赤いサンタクロースは白い袋から子どもたちにプレゼントをわたす。青いサンタクロースは白い袋にゴミを入れて未来の子どもたちにピカピカの海をプレゼントする」というコンセプトのもとイベント名を「ブルーサンタ」とし、年々参加者を増やし続けている。当日は事前申し込み先着500名にブルーサンタ模様のTシャツと帽子がプレゼントされた。500名から漏れてしまった人も、めいめい青いアイテムを身に着けてイベントを楽しんでいた。ごみを拾うトング、破片になったプラスチックなどを選別するザル、ごみ袋は主催者側が準備してれるので熱中症対策さえしておけば、ほぼ手ぶらでの参加も可能だ。

参加者には申し込み先着500名にはブルーサンタのTシャツと青いサンタ帽子がプレゼントされた。分別用に2種類のごみ袋は支給、トングとザルは貸し出してもらえる

イベント当日の参加者はなんと1917人。親子連れから会社や学校の友人同士、ボランティア団体のメンバーなどさまざま。2005年から開催されている同イベントに参加するうちに仲間になった人たちもいるとか。全長560mの海岸を埋め尽くす青いサンタたちからはどんな小さなゴミも見逃されることはできないだろうという勢い。実際、1時間ちょっとの時間ゴミを求めて海岸を歩き回ったものの、2000人近いライバルに先を越されたのか、想像していたような(冒頭の写真にあったような立派?な)ごみを拾うことはできなかった。ある意味残念。

「ごみ拾いってカタいイメージがあるけれど、参加者はすごくカジュアルに楽しんでくれてます」

イベント中、ふじさわ観光親善大使でもあり、このイベントに数年来参加されているタレント・つるの剛士さんに話を伺うことができた。

「年を追うごとに参加される方が増えてきて、毎年来てくれる方のなかには、『あの子、去年もいたな、大きくなったな』なんて、“仲間”の成長を垣間見ることができるのも面白いですね。ただ、藤沢の海岸、年々きれいになってきているんです。藤沢の人みんなの意識が高いことも関係しているんでしょうね。参加者の方からは『ごみ探すの大変!』とか言われちゃったりします(笑)。まだ、河口のほうに行けば新しいごみが見つかるかもしれないですよ、なんてアドバイスしたりしています」

実は片瀬東浜海岸は海の家のスタッフ、周辺住民の高い意識もあり、海岸のごみはほぼ毎日拾われているとか。とはいえ、河川を経由して海岸に流れ着くごみが減っているわけでもなく、イベントでは砂浜深くにもぐりこんだ大きなビニールシートなどを発見して楽しそうに回収するブルーサンタの姿などもみられた。

ごみ拾い、最近話題になるし気になっているのだけど、なかなか参加するきっかけがつかめないという人も少なくない。つるのさんにそんな人の“背中を押す”コメントをお願いした。

「ごみ拾い、最初の一歩踏み出すのに、ちょっとした勇気というか、きっかけが必要だよ、なんて言われることもあります。たしかに、ごみ拾いとか清掃活動という言葉にはカタいイメージがありますよね。でも、実際に来られている参加者はすごくカジュアル。ゲーム感覚やイベントの感覚で来ていたり、海や海水浴を楽しみに来ていたり。そのついでにごみを拾って帰るぐらいの感覚で参加してもらえたらと思います。私自身、本当に毎回イベントそのものが楽しくて。子どもから年配の方までたくさんの方が集まってくれるんですよね。さらに今月は全国300ヵ所でごみ拾いイベントが開催されて数万人が参加すると聞きました。数万人が海に思いを寄せて海に向かって心の手をつなぐなんて、もうゾクゾクしてしまいます」

ご自身が藤沢在住のタレント、つるの剛士さんももう何年もこのイベントに参加している
この日も率先してゴミを拾っていた。(photo 上重 泰秀)

イベントの開始前、参加者全員で海岸線に一列に並び、海をきれいにしたいという思いをひとつにするセッションがあった。7月の1ヵ月間で開催される全国300ヵ所のイベントを通して日本の海岸線をぐるりとまわる海への気持ちの環がつながることになる。たしかに(いい意味で)背筋を何かが走る感覚があった。

当日回収されたゴミの一部。赤い袋にはビニールやたばこの吸い殻など。青い袋には瓶や缶、陶器のかけらなどが集められた

開会・閉会の舞台イベントを合わせて1時間半はあっという間に過ぎてしまった。イベント終了後、参加者はお気に入りの海の家で食事をしたり、ビールで乾杯したり、海水浴を満喫したり……思い思いに自分たちが清掃した海を満喫していた。なるほどカジュアルな雰囲気! 家族や仲間で海水浴を楽しむきっかけとしてビーチクリーン、いいかもしれない。

熱中症を避けるためには、ときどき波打ち際で足を冷やして! ごみ拾いしながら海の家で飲み物を買ってひと休みしたり、
楽しみ方は人それぞれ(photo 上重 泰秀)

最後につるのさんに、(イベント参加経験がない人にも向けて)ひと言お願いした。

「海に近いところに住んでいる人でなければ、海やビーチの美しさに対するこだわりはそれほど強くはないかもしれません。でも誰でも海は好きなんだと思います。その海や海岸に流れ出すごみのほとんどは内陸部から流れてくるんですよね。だから海岸でいくらごみ拾いしても街での生活の中で意識しないと減りません。最後に拾うのはイベントの参加者や海辺に住んでいる人たち。なので、イベントに参加したり記事を読んでくれた人には、『あ、このごみ、ちゃんと捨てないと海に流れちゃうんだな』って気にしていただけるとうれしいですね。そしてもし、ごみ拾いに参加してくれたら、海とごみのことを自分ごとに感じられるようになると思います。気軽な気持ちで遊びに来てください」

ビーチクリーンそのものが目的でなくても大丈夫。ついでにイベントに参加して、ついでにごみを拾って帰る。小さなきっかけが、きっと大きく自分の何かを変えてくれるかもしれない、いつか大きなムーブメントにつながる、そんな気持ちで参加者が増え続けているのだろうな、なんて思う一日だった。海さくらでは、全国のビーチクリーンイベントや団体を探す人とイベントを開催したい人をマッチングし、サポートするサイト「BLUE SHIP」も展開中。気になる方はぜひチェックして、可能ならば一歩踏み出していただきたい。ちなみに海さくらが主催する次回のイベント(第178回海さくらゴミ拾い)は、8月27日に開催されるそう。

~後編は、海さくらの古澤理事長に「海を次世代に引き継ぐこと」についてお話しいただきます。

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