世界遺産・奄美大島の最南端で最高のワーケーションを!(中編)
ワーク&バケーション=「ワーケーション」を満喫できるスポットとして、鹿児島県・奄美大島に誕生したコワーキング施設「すこやか福祉センター“HUB”」。島の人々と交流できる「ハブ」としての役割を担うだけでなく、島の最南端の町・瀬戸内町の魅力に触れられるアクティビティも提供しています。今回の中編では、アクティビティ体験ルポをお届けします!
双胴船でクルージング、島西端の“地産地消”古民家カフェへ
2021年7月、沖縄本島北部、西表島などとともに世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島。島の最南端にある瀬戸内町は、日本で唯一「市町村内に海峡がある」ことで知られている。その大島海峡を挟んで、加計呂麻島、請島、与路島など手つかずの自然が残る有人島を擁し、美しい海と山々に恵まれた環境が魅力の町だ。
2022年2月、この町にグランドオープンした「すこやか福祉センター“HUB”(以下、HUB)」は、体験型のコワーキング施設。高速インターネットなど快適な環境が整った仕事場でありながら、瀬戸内町ならではのアクティビティが体験できるのが特徴なのだ。
アクティビティは大島海峡クルージング、釣りやダイビング体験、マングローブの種植えや植樹体験、島の名産・黒糖焼酎のテイスティングなど。今後さらに、ローカルならではのアクティビティを充実させていく予定だという。
筆者が参加したのは、島料理カフェを訪れるランチクルーズ。大島海峡をクルージングして、瀬戸内町西端の集落・西古見へ移動し、地産地消レストラン「西古見カフェ」でランチをいただくというアクティビティだ。
さっそく古仁屋港からクルーズ船に乗り込み、大島海峡へと出発。奄美大島の南端と加計呂麻島に挟まれた穏やかな海を、快調に進んでいく。海は青く澄み、群れをなして泳ぐ魚の姿がハッキリ見える。1〜2月には、クジラも見られるという。
大島海峡は、知る人ぞ知る養殖のメッカ。そういえば古仁屋港には、「クロマグロ養殖日本一の町・瀬戸内町」と書かれたマグロの巨大オブジェがあった。大手食品会社のマルハニチロや近畿大学が、この海でクロマグロやタイ、カンパチの養殖をおこなっている。冬でも海水温が20℃と温かく、絶えず清澄な海水が流れ込むため、養殖に適しているらしい。
海峡全域が奄美群島国立公園内なだけあって、複雑に入り組んだリアス海岸や、加計呂麻島をはじめとする大小の有人、無人島の深い緑がとても美しい。この日は台風の直後で雲の流れが早く、目の覚めるような青空が広がったかと思うと、5分後にはどんより曇り空になるといった空の変化も楽しかった。
40分ほど船に乗り、目指す西古見の港に到着。小さな港の目の前に、古民家をリノベーションした「西古見カフェ」があった。
玄関を上がると、畳に襖、欄干という「昔ながらの民家」の世界が広がる。窓からは、庭の木々の緑を透かして、青く澄んだ海が見える。ゴロンと横になって、昼寝をしたくなるような広い縁側も魅力的だ。
食事メニューは「自家製けいはん(鶏飯)」「西古見うどん」「西古見カレー」の3つ。地産地消をテーマに、料理長の柳ひとみさんがつくる「地元の味」だ。
「ここいら(この地域)では、昼は毎日うどんを食べるんです。ダシは鰹節と昆布でとったり、鶏スープだったり。家では、油で炒めたジャコでダシをとって、それを具にも入れて食べています」と柳さん。鶏飯の具や、うどんに添えられている茶色のものは、パパイヤの漬物。「パパイヤは、そのへんにたくさんなってるから」とのこと。まさに地産地消だ!
戦跡から「神が降り立つ3つの小島」三連立神を望む
古民家カフェで心もお腹も満たされたところで、迎えにきてくれた車に乗る。向かうのは、集落から少し山を登ったところにある「観測所跡」。旧日本陸軍により、1940年(昭和15年)に建設された戦跡だ。戦時中、西古見には砲台が築かれ、海峡の西側入り口を守っていたという。
観測所跡からは、青い海に点々と浮かぶ3つの小島が見える。これらは「三連立神」と呼ばれるパワースポット。海の向こうにある理想郷「ネリヤカナヤ」から神様が降りてくる際に、最初に降り立つ場所だとの言い伝えがある。干潮時には3つの小島と本島が細い「道」でつながり、歩いて渡ることができるとか。なんだか厳かな気持ちにさせられる場所だ。
西古見集落を後にし、瀬戸内町の中心地・古仁屋に戻る。途中、マングローブ(メヒルギ、オヒルギなどのヒルギ類)が生い茂る小名瀬干潟に立ち寄り、HUBに戻るというスケジュールだ。
夕刻にHUBに帰って、マングローブの種植えを体験。まさにここでしかできない、瀬戸内町の自然と文化、歴史の一端に触れられる充実のアクティビティだった。
――後編では、瀬戸内町のサステナブルな取り組みについてレポートしますーー
photo:横江淳 text:萩原はるな