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日本のマチュピチュ!? 徳島の秘境「祖谷」で生き抜く人びとの“たくましすぎる”暮らし【中編】
日本のマチュピチュ!? 徳島の秘境「祖谷」で生き抜く人びとの“たくましすぎる”暮らし【中編】
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日本のマチュピチュ!? 徳島の秘境「祖谷」で生き抜く人びとの“たくましすぎる”暮らし【中編】

徳島市内から車を走らせること2時間半〜3時間。池田市を過ぎ、大歩危小歩危(おおぼけ・こぼけ)の大パノラマ渓谷を抜けると、日本三大秘境のひとつに数えられる地区、祖谷(いや)にたどり着きます。この地の人びとは山の急斜面に家を築き、傾斜地に畑をつくり、集落内の高低差がなんと390mというところも! まさに“天空の里”で生きる人たちの、美しくもたくましい暮らしを紹介します。

──前編はこちら──

阿波女たちは働き者

徳島県三好市のカフェ「ハレとケ珈琲」オーナー・植本修子さん。東京で広告系のクリエイティブディレクターをしていた。徳島の山あいに移住してきたことが、気管支が強くない息子にもよい方向に働いたという

世界農業遺産に選ばれた「にし阿波の傾斜地農耕システム」を昔から実践する美馬(みま)郡つるぎ町貞光の三木枋(みきとち)地区を離れ、取材班は祖谷に向かった。

ハレとケ珈琲は、祖谷地区入り口の、廃校になった小学校の教室をつかっている。黒板には、ありし日の「時間割り」や「学校目標」などが残されていて、地元の卒業生がやってきてはなつかしんでいくという

自家製のピザと、山水をつかったコーヒー。コーヒーはシングルオリジンにこだわる。廃校という環境を活かし、客が自らアルコールランプをつかってドリップできるという遊び心も/ハレとケ珈琲 三好市池田町大利大西15

途中、三好市池田町にある廃校を利用したカフェ「ハレとケ珈琲」に寄ってひと息つきつつ、しんしんと降り積もる雪景色のなか、車は祖谷渓を見下ろしながら静かに、慎重に進んだ。

まさに日本のマチュピチュ!? 国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている東祖谷(ひがしいや)の「落合集落」。急斜面にはりつくように茅葺(かやぶ)きの古民家が点在するこの地は、前日からの雪によって真っ白に。雪化粧すると、さらに世俗を離れた雰囲気になる

翌朝、東祖谷落合の「栗枝豆腐こんにゃく店」を訪ねた。豆腐店の朝は早い。7時ごろに着くと、すでに大きな豆腐が次々とでき上がっていた。

豆腐づくりには力仕事が多い。大きな樽に材料や製造中の豆腐を入れ、あちこちに移し替えていく。/栗枝豆腐こんにゃく店 三好市東祖谷落合651-16

この地域で長らく食べられてきた「岩豆腐」は、ふつうの豆腐よりもかなり固い。水分を抜くことで長期間の保存が可能になるからだ。かつてはハレの日の食べものとして、正月の雑煮に餅の代わりに入れたり、客人をもてなすために供していたという。いまでは地元の人びとの日常食だ。

左から長男の妻、栗枝美香さん、次女の有紀美さん、長女の澄代さん。長男は朝の配達中

木綿で包んだ15丁分の豆腐のかたまりに、重しを1時間程度のせる。そうしてできた豆腐はギュッとつまっていて見た目よりもはるかに重い。それらを軽々と持ち上げて型を抜き、手際よく切っていく女性たちの所作(しょさ)は実にすがすがしい。

豆腐には徳島県民が愛用する醤油代わりの総合調味料「味一」を少し垂らしていただく

「食べていきなよ」と三女の栗枝佳代さんができたての豆腐を出してくれた。モグモグと食べる豆腐は、大豆そのものの甘みがつまっている。たったひと皿でご飯一杯を食べたような腹持ちのよさだ。彼女たちのエネルギーの源に触れたような気がした。

──後編につづく──

●情報は、FRaU S-TRIP 2023年4月号発売時点のものです。

Photo:Kazumasa Harada Text:Kanami Fukuda(euphoria factory)

Composition:林愛子

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