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「日常生活で飲むコーヒーをサステナビリティにつなげる一歩に」-MCアグリアライアンス・コーヒー事業部
「日常生活で飲むコーヒーをサステナビリティにつなげる一歩に」-MCアグリアライアンス・コーヒー事業部
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「日常生活で飲むコーヒーをサステナビリティにつなげる一歩に」-MCアグリアライアンス・コーヒー事業部

未来に向けた独自の取り組みやユニークな視点を紹介するFEATURE。今回は世界でもっとも多くの国で飲まれている飲料であるコーヒーに注目。日本もコーヒー消費大国のひとつで、いまやコーヒーは多くの人たちの日常に欠かせないものになっている。そんなコーヒーの原料となるコーヒー豆の生産が行われているのは、ほとんどが発展途上国。生産者の貧困や労働問題、環境破壊や気候変動など社会的な問題も多く、コーヒー産業の大きな課題になっている。そこで食品原料の輸入卸販売会社・MCアグリアライアンスのコーヒー事業部の皆さんにサステナビリティに貢献する取り組みについて聞いた。

撮影/前田一樹 取材・文/橋富政彦

コーヒー豆がカップに注がれるまでのすべてに責任を。

MCアグリアライアンスは、2016年に設立された食品原料の輸入卸売販売会社。「大地の恵みを食卓へ」をテーマに掲げ、企業活動を通じて持続可能な社会の実現を目指しているという。同社のコーヒー事業部マネージャー、南保昌也さんはサステナブル原料の供給はコーヒー豆生産地での実体験に基づくものだと話す。

「株主の1社であるオラム社は世界トップクラスのシェアを誇る有数の食品トレーディング企業で、世界中に持つトレーサブルな供給基盤が強みです。コーヒー豆に関していえば、南米・中米・カリブ・アジア・アフリカといった主要生産国のそれぞれに農園や製造・加工工場を持ち、各地に技術者を派遣するなど、サステナブルなコーヒー豆を調達するために幅広い活動を展開しています。そうしたコーヒーが最終的にお客様ひとりひとりのカップに注がれるまで、しっかりとクオリティをチェックし、品質管理を行っていくことが私たちの業務です。

かつて問題になったコーヒー産業のひどく搾取的な構造はだいぶ改善されてきている状況です。フェアトレード認証も広がってきていますし、産地の人々もみんなスマートフォンを持つようになって情報化が進んだ影響もあるでしょう。その一方で実際にエチオピアやインドネシアの産地に行ってみると、現地の生活環境は決して良いとは言えません。

まだまだ必要な物が足りないことも多いので、ボールペンなどの文具を持っていくと子供たちがすごく喜ぶんですね。折り紙で鶴や紙飛行機を折ったり、下手な英語で絵本を読んであげたりもするのですが、そうしたときの子供たちの笑顔を見ていると産地の生活環境改善の重要性を改めて感じますし、事業を通じて少しずつでも産地に還元できる活動をやっていかなくてはと思います」

産地の子供たちのために橋を建設

同じくコーヒー事業部の岩﨑秀之さんは、産地での具体的な取り組みについて次のように語る。

「今、私たちが手掛けているのはオラム社独自のサステナブル農産品認証システム「AtSource(アットソース)」で認証されたコーヒー豆です。これはしっかりトレーサビリティを担保し、不当な搾取や環境破壊、児童労働や不適切な労働環境のない原料の調達を保証するものです。

それに加えて、コーヒー豆の買い付けをすることで産地の生活環境が向上するようなプロジェクトをいくつも展開してきました。実際に私が関わった事例として、コロンビアのトリマ地区での架橋プロジェクトがあります。これは生活環境整備として、農家の子供たちが通学するために使っていたボロボロで危険な橋を新しくしようという取り組みです。橋は今年9月に完成し、子供たちはより安全に学校に通えるようになりました。この橋は安定した物資の往来にも役立つはずですし、ひいてはコーヒー生産の担い手を次世代へ継承していくことにも貢献すると期待しています。また、コロンビアでもコロナ禍が深刻な状況であることから、コーヒー農家へ検査キットなどの提供も行いました。ただ原料を買い付けるだけではなく、生活もしっかり支えることで、産地の皆さんとより良い関係性を築いていくことも大切なことだと考えています。

もちろん、コーヒー豆の品質向上も重要な課題です。そこで、高度な技術を持ったオラム社の農業技師を各産地に派遣し、有効な肥料の使い方から剪定に至るまで技術指導を行っています。その効果でコーヒーの品質が良くなり、より高い値段がつくことで生産者の生活環境改善にも貢献します。また、オーガニック認証の獲得も視野に入れており、より付加価値の高いコーヒー豆生産ができるようになっていくはずです」

コーヒー事業部で品質管理を担当する高橋碧さんは、女性コーヒー豆生産者を支援するプログラムについて紹介してくれた。「実は私も知らなかったのですが、コーヒー豆の生産には女性が重要な役割を担っているにも関わらず、労働条件が男性と対等でなかったり、生産品を正当に評価してもらえなかったりする不平等な問題を抱えている地域が多くあります。“カフェデラス”プロジェクトは、そうした女性が主体で経営するコーヒー農園をサポートするプログラムです。現在、ブラジルのセラード、モジアナ、パラナの各地で取り組みを行っており、コーヒー生産技術指導、人材育成などをしながら品質向上をはかり、その生産収入がしっかり彼女たちへ支払われるようにも徹底しています」

サステナブル・コーヒー“グランレイナ”シリーズを展開

11月17〜19日、東京ビッグサイトにてコーヒーに特化したアジア最大級のイベント「SCAJワールドスペシャルティコーヒーカンファレンスアンドエキシビション2021」が開催される。本年度のテーマは「CONNECTINGTOASUSTAINABLEFUTURE」。MCアグリアライアンスも同イベントに本記事で紹介した取り組みから生まれた商品を出展する予定だ。

「私たちはサステナブル・コーヒーとして、“偉大なる女王”を意味するグランレイナシリーズを展開しています。先ほど紹介したインドネシアを始め、ブラジル、グアテマラ、コロンビア、エチオピアといった生産国で、インフラ整備や技術指導、子供の教育環境の改善など、サステナビリティにつながる取り組みを行いつつ、それぞれの特色を活かしたコーヒーに仕上げているシリーズです。

もちろん、品質にも自信があります。各地域のQグレーダーと綿密なコミュニケーションを取り、現地で独自ブレンドを行うなどして、日本人の嗜好にあったSCAスコア80〜82点という高品質なコーヒーを安定的に供給。多くのお得意先から好評を得ています。また、今回のSCAJ展では、オラム社の強みであるアフリカとの深いつながりを生かしたザンビア共和国のスペシャルティコーヒーを紹介する予定です。コーヒーは経済を支える重要な産業のひとつであり、こちらにも注目してほしいですね」(岩﨑さん)

「私たちはコロンビアコーヒーに対し“フォレストレンジャーファミリープロジェクト”という取り組みを通して、品質向上だけでなく、産地の収益向上、環境保護、小農家支援を行ってきました。今回は“コロンビアコーヒーの宝石”といわれるエメラルド・マウンテンをサステナブルな観点からご紹介いたします。環境:最新鋭のウェットミルの導入によりコーヒーの果肉を取り除く際の水の使用量を大幅に削減、経済:病虫害に強い品種の開発により効率的なコーヒー栽培をサポート、社会:食育や家庭菜園の推進等により農家の安定した食料調達をサポート、の3つの側面に配慮して栽培を行っています。これはFNCコロンビア生産者連合会の協力を得て進めているもので、あらためて日本のコーヒー愛好家の皆さんとコロンビアのコーヒー生産者がつながるコーヒーになってほしいですね」(南保さん)

コーヒーを通じて地球全体の環境を考える

コーヒー産業のサステナビリティを実現するために、サプライチェーン全体を通した取り組みが重要であることは間違いない。南保さんは「きっと、これから“ゲームチェンジ”が起こると思います」と話す。
「最近は日本でも“SDGs”という言葉をよく聞くようになりました。ただ、正直にいうとある種のファッションとしてSDGsバッジをつけているだけという人も多い印象です。欧米に比べると、まだ意識は低いのかもしれません。しかし、コーヒー産業を見ていても、気候変動によって将来的に生産地が50%以下にまで減少するという“コーヒー2050年問題”など、サステナビリティの実現は差し迫った問題です。

従来は売り手と買い手の両者ともに利益がある関係をWin-Winとしていました。私たちの業界でいえば、それは輸入者と消費者になるでしょう。しかし、これからは両者に加えて、生産者、そして“地球”も含めた四者すべてがWin-Winになるビジネスを展開していく必要があります。今の若い世代は環境問題などについて非常に意識が高いと言われており、これから日本も少しずつ変わってくるでしょう。私たちも2030年までにすべての取扱商品をアットソース認証のトレーサブル原料にするという目標を掲げています。まずはその実現に向けて自分たちのゲームチェンジをしていくつもりです」

岩﨑さんは、仕事を通じて、少しずつ変化を感じているという。
「私が担当している得意先は規模の大きくない喫茶店やロースターと呼ばれる卸業者なのですが、最近はサステナビリティを意識したり、興味を持つようになった方が増えてきていると感じています。グランレイナシリーズのような商品がどんどん広がって、それを一般消費者の皆さんが楽しんでもらうことで、サステナビリティの実現に貢献していることになります。日常生活の中でコーヒーを飲むことが、地球の環境に還元につながる。そんな理想的なかたちにもっていきたいですね」

日常的にコーヒーを楽しんでいる私たちにも少しだけ意識してほしいことがあると高橋さんは話す。
「普段、何気なく飲んでいるコーヒーも、もとをたどればどれも産地の農家の皆さんが一生懸命、栽培してきたものです。そこに思いを馳せたら、コーヒーの味も少し変わってくるのではないでしょうか。まずはそんな些細なことでも、コーヒーのサステナビリティにつながる第一歩になると思います」
サステナブルなコーヒーライフを実現し、これからも美味しいコーヒーを楽しむために、私たち消費者も少し意識を変えてみることが大切なのかもしれない。

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