「クレカ利用で森林再生」のプロジェクトが始動!
ふだんの買い物などでクレジットカードをつかうと、利用金額の一部が、自動的に森林再生のための植樹費用に充てられる。そんなプロジェクトがスタートしました。「社会貢献に興味はあるけど、ちょっと敷居が高い」などと感じている人も、日常生活のなかで気負わず社会活動に貢献してほしい──このプロジェクトには、そうした思いが込められています。
キャッシュレス決済で、気負わず社会貢献
2022年8月初旬、「広島Nudge(ナッジ)の森」クラブなるプロジェクトが始動した。
「Nudge」は、自分の「好き」を応援するクレジットカード。普段の買い物でつかうと、利用金額の一部がスポーツチーム、スポーツ選手、アーティストなどの応援につながるというものだが、広島Nudgeの森は、その仕組みを使って、広島のアカマツ林を再生するプロジェクトだ。
「広島県は、日本有数のアカマツの生息地です。マツは土木資材として優れているばかりか、マツタケの苗床として地域に多くの恩恵をもたらしてきたんです。昔から広島県は松茸の産地として有名ですが、それは豊かなアカマツ林があったからこそで、人々は、マツタケを収穫して副次的な収入を得ることができていました。しかし、平成に入ってからはマツクイムシなどの寄生虫を原因とする「マツ枯れ」によって森林の機能が低下。かつて豊かだった森林は、だんだんと枯れてきています。
今回の植樹の舞台となる東広島市のマツ林でも、マツ枯れが進んでいます。しかし、公的な支援が入りにくい。スギやヒノキのように木材として利用する樹木の場合、木材生産を前提とした植樹になりますから、国からの補助金が出やすいそうですが、東広島のマツ林は木材生産を前提としないため、補助金の交付が難しいらしいのです。
そういったことも含めて地元の森林組合などとしっかり議論し、広島が抱えている問題に一緒に取り組もうではないかということになりました。そして、東広島市や地域の企業、スポーツチームとも連携し、Nudgeの仕組みをつかった森林再生プロジェクトを立ち上げることになったのです」(ナッジ代表取締役・沖田貴史さん、以下同)
3ヘクタールの土地で長期的な植樹活動を行い、豊かなマツ林の再生を狙う広島Nudgeの森プロジェクト。Nudgeカードの利用で、このプロジェクトに参加するということは、森林再生に貢献するだけではない。かつてアカマツ林が地域にもたらしていた恩恵(マツタケの収穫など)を考えると、アカマツ林の再生・復活は、地域の活性化にもつながるため、カードの利用者は、その点でも社会貢献することになる。
「広島Nudgeの森は、ユーザーが普段通りクレジットカード支払いをするだけで、弊社からの寄付を通じて、広島のアカマツの森での植樹活動を支援できる仕組みです。通常、カードをつかうと、利用金額に応じてポイントが貯まっていきますよね。このポイントが森林再生という社会貢献につかわれるというイメージです。
いま、世の中では社会貢献への意識が高まっています。その一方で、「寄付をするのは少しハードルが高い」と考える人たちも多い。Nudgeカードを利用すれば、利用金額の一部が自動的に寄付に回されますから、日常、意識することなく、気負わず、気楽に社会貢献できます」
ユーザー会員による貢献は、相当する苗木の本数に換算され、アプリ上でリアルタイムで確認できる。ユーザーにとって、うれしい「オマケ」もある。支援の返礼として、広島県にゆかりのある協賛企業やスポーツチームからの、さまざまな特典も受け取れるのだ。2022年11月には、プロジェクト関係者のほか、地域の子どもたち、協賛スポーツチームのメンバーが集まり、実際にNudgeの森に苗木を植える会員限定の植樹イベントも予定されている。
「地域の課題を解決するには、自治体だけ、あるいは企業だけではなく、官民共同で多くのステークホルダー(利害関係者)が協働することが重要です。これまでに弊社は石川県小松市とも連携を進めてきました。東広島市は、自治体との連携としては2例目になります。今後も、自治体や地域の企業などと連携し、キャッシュレスを通した地方活性化や社会課題の解決を支援するプロジェクトを拡大したいと考えています」
取材・文/佐藤美由紀